第5部~属性について語り、新しい仲間を加えました。~
遅れてしまい申し訳ございませんでした!
次からはこのような事がないようにします!
それでは、僕の作品に最後までお付き合いくださいませ !!
真っ暗な一本道。周りには街灯があるが、全て捻じ曲がっており、周りを照らすのは上弦の月のみ。
その暗闇に、一人の人影が座り込んでいる。
「グルルル…………アグ、ングッ…………ゴクッ…………」
どうやら、何かを食べているらしい。両手一杯に掴んでいるのは、赤い袋のような物。
それを丸呑みし、次に掴んだのは、人間の右腕。そう、人影が食べていたのは、人間。月明かりに照らされた右腕は、肌白く、細い指がついている。元は女性だったのだろうか。
「アグ…………ググッ……ングゥッ !」
しかし、その人影は、指から最初に食いちぎる。
光に照らされたのは、白い髪を垂らし、両目の瞳を赤く輝かせたーーーーーーーーーーー
「ねぇねぇ、このゲームに属性あるの知ってた ?」
とある日、ソファーでゴロゴロしていた零の一言に、皆が頭を捻る。属性があるとは、誰も気が付かなかった。
あの出来事の後からリリスは、昨日から猫妖精に種族を変更し、暇な時に零に構ってもらっているようだ。
零の言葉に、戦術書を読んでいたカムルが顔を上げる。
「そう…………なのか ?今まで全然気付かなかったが。」
「うん。なんかね、昨日僕達が寝てる間に、いわゆるアップデートみたいなのがあったらしくてね、そこで追加されたみたいだよ。主に、“力”、“速”、“魔”の3つ。属性関係は、“力”が“魔”に強くて、“魔”が“速”に強くて、“速”が“力”に強い…………ってなってる。まぁ、ありきたりなやつだね。ちなみに、有利属性だとダメージ1.5倍。不利属性だとダメージ半減だって。」
「そうやって属性を分ける基準は ?」
セレーネが聞くと、零が、立て板に水のようにスラスラと答える。
「装備している武器によるそうだよ。だから、僕とリリス、セレーネは“力”主に、刀とか、中、近距離武器系が“力”になるんだね。カムルの槍とか、銃系は、“速”…………ん ?という事は、僕の{デュアルバレット}って、“力”と“速”二つ持ちって事か…………所々にそんな武器があるよー。って、サイトに書いてあったし…………なーるほどなるほど…………あ、ちなみに、“魔”は、あのー、魔法の杖とか、戦闘には不向きな物を指すんだって。」
「ふーん…………あんがと。助かった。」
「いいってことよ、カムル。じゃ、クエスト行こうか !今日はバハムート討伐、行ってみよう !」
「了解。リリス、セレーネー。支度しろー。」
意気揚々と出かけていく零達だが、属性は敵モンスターにもある事を零が言い忘れ、思いっきり苦戦してしまった。
ワイバーンやオークは“力”。
ゴブリンは、持っている武器によって属性が変わる。例えば、棍棒持ちなら“力”、弓持ちならば“速”。
バハムートは、“速”となっているが、それぞれのモンスターによって違うらしかった。
「ハァ、ハァ…………っキッツ…………ダメージ半減されると、クリティカル出さないとダメだね…………ダメージ通らないや………………。」
「てか…………モンスターにも属性あるなら…………最初に、言いな…………さいよ……バカ。」
「な、なんとか倒せた~。皆~、お疲れ様~。」
「うぇぇぇぇ…………ゲホッ、ゲホッ…………も、もう2度とバハムート討伐なんて、やらねぇかんな !」
ゼイゼイ喘ぎながら報酬を受け取るカムル達に、零はスポーツドリンクを手渡す。一口飲むと、冷たい味が火照った喉を通り、体の隅々までを冷やしていく。
「ハァー…………おいしー。」
「うめぇー。やっぱスポドリっつたらアクアスだろ。」
「え、私ポカロなんだけど…………」
「どっちでも良くない ?僕はアクアス派だけど。」
「ちなみに、私はどっちでもいいわよ ?」
「じゃあ、セレーネにはコーンポタージュで。」
「ちょっと !確かになんでもいいとは言ったけど、暖かいにしろとは言ってないじゃない !」
ムキになるセレーネに、零は口角を上げ、スポーツドリンクを手渡す。
「冗談だよ、はい。」
「…………あ、ありがと…………。」
思ったよりあっさりと手渡され、セレーネは戸惑いの表情を浮かべる。それを見て、零がニヤーっと笑う。
「さて、帰ろうか。リリス、今日の晩ご飯は何 ?」
「最近冷えてきてるから、シチューにしようかなぁ~。セレーネ、人参とかあったっけ ?」
「ええっと…………人参じゃなくて、ジャガイモが無かったと思う。このまま“零のお金”で買いましょ。」
「……………………なん ?」
「あ、八百屋さんあったよ !買っていこ !」
「待って、僕のお金 ?嘘でしょ ?」
戸惑いの表情を浮かべる零に、リリスとセレーネはニヤーっと笑い、ジャガイモを購入した。無論、零の所持金で。
「待って…………もう200コインしかないんですけれども…………」
一番星が輝いている夜空の下、自身のがま口の中身を確認する零の横で、女子2人は夕飯の事でぺちゃくちゃ喋っており、とても聞いてもらえそうにない。
「ハァ………………」
「おい、お前、口座にいくらあるんだ ?まさか、それで全部か !?」
励ましのつもりで話しかけてきたカムルの頭をバシンと殴る。さすがにそんなことは無い。
[へーエルピス]では、現在の銀行のシステムがほぼそのまんま再現されており、IDと指紋認証でコインを引き出したり、貯金したりできる。
「口座には、多分2千万コインくらいあると思う。大丈夫。」
「そ、そうか…………」
「ホントはあのお金で{デュアルバレット}の替えの刃買おうと思ってたんだけど…………是非もないか。」
「時代が違うぞ時代が。お前は戦国武将か何かか ?」
「やぁやぁ我こそは…………あいたっ !?」
「そこまでやれとは言ってねぇからな !?」
カムルと、短いコント的なものを繰り広げた後、拠点に帰るべく、森の中に入っていく。日が沈んでも、照っていても薄暗いこの森は、“シュバルツバルト(黒い森)”と呼ばれ、滅多に人は立ち入らない。
「ん ?………………ん~~。」
「どうしたの ?リリス。何かある ?」
突然道に座り込んだリリスの視線の先には、灰色の球体がぼん。と鎮座していた。おおよそ、ダチョウの卵よりは小さいが、鶏の卵よりは大きい。身の周りにある物で例えれば、バスケットボールの5号球くらいの大きさである。
「零、これ何 ?」
「多分、これガーゴイルの卵じゃないかな。すごい、初めて見た !」
「ほぇ~、これがガーゴイルの卵かー。話によれば、これ目玉焼きにすると超うまいらしいぞ。」
カムルの言葉に、リリスは涙目で卵を庇う。その直後、零がフォローを入れる。
「食べちゃダメェ !!ヤダァ !!」
「リ、リリス。大丈夫、食べないから、カムルは、そういう話があるよ。みたいな感覚で言っただけだから、ね ?」
「あ、あぁ……すまねぇ。リリス。」
カムルが謝ると、リリスは卵に向き直り、ニコニコと見ている。
「零、ガーゴイルって、何日くらいで生まれんだ ?」
「約2週間。生まれた時から小さい虫とか食べるらしいよ。それで、成長して、大型犬くらいの大きさになると、子牛とか、子羊とか食べるんだって。」
「あ !生まれそう !」
「「何ィ !!」」
リリスの言葉に反応し、卵を見てみると、ピシピシと亀裂が入り、ゴロンと動いている。
「感動するわね、この瞬間に立ち会えるなんて。」
「そうだね。滅多に見られないらしいからね。」
「腕が出てきた、あ !出たぁ !」
皆が見守る中、割れた卵から出てきたのは、真っ黒の毛で覆われ、白い目をパチクリさせるガーゴイルの幼体であった。その背中には、ガーゴイル特有の、先端が三角形の尻尾と翼。翼はまだまだ小さく、パタパタと動かして乾かしているようだった。
「…………キュウ。」
「「「「 !!!!!!」」」」
(か、かわいい………………)
(ひゃああああああかぁわいいーーーー !!)
(キュンときたぁーーーーーーーーーーー !!!!!!)
(嘘……こんなかわいい声なのね…………)
ガーゴイルの幼体が発した声は、とてもかわいらしい。その後、幼体は地面に座り込んで手を舐めて手入れを始めた。
「か、かわいいいいいい~。」
「ヤベぇな…………」
幼体を怖がらせないよう、ヒソヒソと話していると、何を思ったのか、幼体はピョンと飛び上がり、零の顔にピトッと張り付く。
「むっ…………んあ、よしよし。怖くないからね。」
「キュ、キュウ~。」
零の手の上に乗せられ、頭を撫でられると、幼体は嬉しそうに声を上げる。そして、零の手に体をスリスリと擦り付ける。
どうやら、零に懐いたらしい。親と勘違いしたのだろうか。
「ほら、森におかえり。」
「キュウ。」
地面に降ろされた幼体は、首をフンフンと横に振り、零の袴にしがみついて離れない。
「どうしよう。僕に懐いちゃったみたい。」
「いいじゃん !ある程度の大きさになるまで私達が面倒見れば !ね、セレーネ !!」
「そうね !かわいいし !カムルもいいでしょ !?」
「俺全面協力するぜ !」
(これは反対とは言えないなぁ…………まぁ、いっか。)
「じゃあ、皆行こうか。この子の名前どうする ?」
再び歩き出した一行。途中で名前を決めようという話になり、拠点に着いたあとも3時間講義した結果、幼体の名前は、“ケダマ”に決定した。
これにより、《黒羽の騎士団》に、新しい仲間が加わった。




