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第12部~《炎龍会》、潰れました。~

どうも、おはこんにちばんわ。栗餡でしっ。

今回久しぶりの前書き登場でしよ。

さて、次回の第13部で、この『黒羽の騎士団編』は終わりとさせていただきます。読んでくれた方、誠にありがとうございました !!

しかし、『へーエルピス』じたいが終わると、いつから錯覚していた ?今度からは、新章的な感じで、『修行の旅~編』を連載していきマース。“~”の所には、零とか、ユラとかの人物名入れていきますよ。

それでは、第12部、最後までお付き合いくださいませ !

朝から、《黒羽の騎士団》は騒がしかった。

「《炎龍会えんりゅうかい》のアジト、メンバー全員が消えていただと !?」

驚きの声を上げるユラに、カムルは頷く。その眼は真剣な光をたたえ、その光はなんでも貫きそうなほど鋭い。

「あぁ、これの話でニュースやらあらゆる掲示板は大騒ぎだ。それに、《炎龍会》の麻薬取引とかの件も匿名希望の奴に暴露されて、“元老院”の奴らが始末に当たってるってよ。」

「そうか…………感謝する。カムル。」

「おけおけ、大丈夫だってんよ。」

(その匿名希望の奴…………ホントは零なんだけんな。)

“元老院”とは、現在の東京、国会議事堂を本部とする[へーエルピス]内の最高機関。刑事部門、金融部門、政策部門、司法部門などの部門で分かれていて、それぞれの部門に“主君”と呼ばれるリーダーがいる。その上には、[へーエルピス]日本サーバー最高長、クーベルリック・デルムンドが控えている。


「…………フラム、《炎龍会》は終わった、もう、私達は狙われることは無い…………バベルとカノンは、零が紹介してくれた店に入るそうだ。私とケイマは、《黒羽の騎士団》に入る………もう…………誰も死なせないように……………すまない、タイガ、フラム…………生き残ってしまって………………」

《黒羽の騎士団》の拠点から少し離れた、小高い丘に、白い十字架がポツンと刺さっている。それは、亡くなってしまったフラムとタイガのものだった。ユラ達の意思で、二人は同じ棺に収められている。

ユラは、1人十字架に水をかけながら、朝のニュースを伝える。その時、背後から誰かの気配を感じ振り返る。

「やっほー。ユラー。」

声の方向を見ると、花束を持ち、紺のリュックをしょった零が白い髪を揺らしながら歩いてくる姿が見えた。零は、十字架に花束を添えると、投影魔術でレジャーシートを投影し、座り込んでリュックから水筒を取り出す。その水筒から暖かいお茶を注ぎ、ユラに差し出す。彼につられて座り込み、湯気が昇るお茶をすする。渋すぎない苦みが口の中に広がり、その後から来る甘みがユラの心を癒した。

「………………毎日、来てるんだね。」

「………………あぁ。」

「………………二人、喜んでるかな。」

「………………あぁ。」

「………………そっか。」

何も無い時間。ただ、肌を突き刺す冷たい風が吹き、零とユラの髪を揺らす。その時、零のリュックのポケットの一つからケダマがピョコンと顔を出す。

「キュ~。」

「あ、ケダマ。待ってね、出してあげるから。」

体をつまんで引っ張りあげ、零の頭の上に乗せる。その後、ケダマは頭の上で零のアホ毛をチロチロと弄り始める。その様子は、まるで猫じゃらしにじゃれる子猫のようだ。

「ケダマは、どうしてお前に懐いたのだ ?」

アホ毛を弄るケダマを見ながら尋ねる。零はお茶を啜りながら首を横に振る。どうやら分からないらしい。

「何でだろうね。親と勘違いしたのかな ?と考えたけど、ガーゴイルなんて卵生んだら死んじゃうし…………つまり、ケダマの親はいないことになるし………………あ、ゴメン…………フラムさん達の前で、こんな話しちゃって…………」

顔を暗くする零に、大丈夫だと一言入れて、零の胸ぐらを強くつかむ。

「うぇ !?な、ななななな何 !?」

「零 !あの稽古の時、お前の部屋で話を聞くはずだったのだが、タイミングが分からずここまで来てしまったことを思い出したのだ。話せ !お前はなぜそこまでの強さを手にした !」

ユラの気迫に押されながら記憶を探ると、あぁ確かにそんなこと言ってたなぁと思い出す。

「OK。話を聞かせてあげる。ケダマ、寝ててね。」

零がケダマの喉をくすぐってやると、嬉しそうに体をよじらせ、そのままリュックの中に潜り込み、スピー、スピーと寝てしまう。そんなに寝て大丈夫なのだろうか。

「大丈夫大丈夫、寝る子は育つ。だからさ。」

「使う場面が違う気がするがな。」

「う~~………………いいや、初めよっか。」

どこか懐かしむように、零は灰色の空を見上げながら話し始めた。

ここからは、零視点で話が進行するので、ご理解頂けると嬉しい。


僕が[へーエルピス]を始めたばっかりの頃、僕はスナイパーライフルをメイン武器にしてたんだ。今みたいに、剣なんて握ったことなかったし、近接武器と言ったらサブに設定してたアーミーナイフくらいだったからさ。それで、ボスモンスターを撃ち抜いてはスピードと攻撃力を上げまくってたなぁ。その時のレベル上限は120で、僕のレベルは20くらいだったけど、攻撃力とスピードはレベル120の人達に引けを取らなかった。スキルも、厳選に厳選を重ねて選んだし、弾も知り合いの武器屋…………まぁ、ミトさんだけど。その人に特注で作ってもらってた。当時ではほぼチートレベルの威力200のレベル3貫通弾。それまでは最高威力160が限度だったし、それ買おうと思っても馬鹿みたいに高いし…………箱一個で30万だよ ?信じられる ?その代わりに、すっごい威力高かったよ。リロード遅いし、あと撃った時のブレが凄かったけどね。その弾なら防御態勢取ってても防御破壊ガードブレイクできたし、ヘッドショットなんてやったらレベル120で体力ゲージ満タンでもワンパンできた。

「ソロプレイでやってたのか ?」

うん。基本ソロプレイしかやってなかったから。ギルドの募集もあったけど、基本ほっといてたし。

「なるほどな。」

それで、一人ブラブラとしていた頃に、《アナザーヘヴン》っていう、アットホームなギルドに入ったんだよね。曜日クエストでボスに襲われているところを助けたら、神様みたいな扱い受けちゃって。仕方なしに入ったんだよ。そしたらそこが思ったより心地よくてさ。2、3ヶ月いたかな。

「どういうギルドだったのだ ?その…………《アナザーヘヴン》というのは。」

あれ ?ユラ知らない ?ゲーム史上初めて、“覇王の道”を突破したギルド。って事で有名だったはずだけど。

「まっ…………待て、今のは私の聞き間違いか ?“覇王の道”って、全ステージノーコンテニュー、回復アイテム使用回数制限あり、属性効果3倍の超高難易度クエストの事か !?確か、100ステージあるとは聞いたことがあったが…………」

なんだ、知ってんじゃん。そ。そこを初めて突破したの。僕達アナザーヘヴンは。ちなみに、《黒羽の騎士団》もクリアしたよ。あ、僕の今の強さは、その“覇王の道”が要因かな。うん。その時はレベル40くらいだったから。

「フム…………そこまでの実力があるギルドを、なぜ離れたのだ ?居心地は良かったのだろう ?」

うん…………ある日ね、ギルドリーダーが死んじゃったんだ。なんということでしょう、そのギルドリーダー、“大地の民”だったんだよ。


突然だがここで、“大地の民”の補足を行わせて頂く。

“大地の民”とは、この[へーエルピス]に元々プログラムされているキャラの事。彼らにもプレイヤーと同じくHPゲージとレベルがある。しかし、ここで決定的な違いがある。

それは、“死んだら蘇生できない”ということ。

その当時は、プレイヤーはHPゲージが全損してしまうと、街に必ず一つある神殿にて3日後に復活できる。しかし、“大地の民”は、HPゲージを全損されてしまうと、死んでしまう。蘇生魔法も効果なし。その為、死んでしまうと葬式が行われる。

以上、補足講座でした。


「…………………………」

自然の流れで、解散しましょう。ってなってさ。そっからはずっとソロプレイを貫いて、カムルを[へーエルピス]に誘って、《黒羽の騎士団》を作って、今に至る訳ですよ。

零視点、終了。


「なるほどな…………」

「恥ずかしい話だけどね。カムルにも話したことないんだよ。この話。」

冷めたお茶を飲み干し、零はレジャーシートに寝転ぶ。

「ふぁ、あぁ…………眠くなってきちゃったなぁ…………」

「こんな寒い空気の中でよく言えるな。私は寒くて逆に眠くなってきたが……お前もそれか。」

「じゃあ…………それっ。」

そう言って、投影したのは大きなテントだった。限界というものを知らないのかと思うくらい、大きいオレンジのテント。テントは風にフワリと巻き上げられた後、レジャーシートの左隣にドスンと落ちる。入り口のチャックを開けながら潜り込んだ零はオレンジの寝袋と白の毛布を投影し、寝袋にモゾモゾと潜り込む。

「お前、投影の限界はあるのか ?」

「えーっとね…………現時点で ?それなら、このテントくらいまでかな。これ以上大きくするのは無理。」

「そこまでできるようになったんだな…………流石だ。」

「うん…………ふぁ、あぁ…………おやすみ~…………」

そのままあくびをして寝てしまう零を見て、ユラは毛布を被ると顔を緩め、零に顔をそっと近づける。

「………………無理はするな、お前に死なれたら、私は悲しい…………だから、頼む、零…………死なないでくれ………………」

(りょーかいです。ユラさん。フフ…………カワイイところあるじゃん。)

「ふ…………んん…………」

寝たのを装い、寝返りをうってユラの手を握る。女子の手を握った事は、これで初めてだった。スベスベしていて、暖かい。

「零……………… ??」

「ん…………フゥ……………………ユラ………………。」

(何だ ?寝言か ?しかし、零の寝顔、カワイイな…………凜雄リオに似ている…………凛雄…………)

ユラの頭に、3年前に突然行方不明になってしまった弟、凛雄の顔が浮かぶ。大きく、クリっとした眼。少し長めの黒髪。男にしては、少し高めの声。

『姉ちゃん !早く早く !』

「……………………凛雄、なのか………………零………………。」

零の手を握るユラの頬を、一筋の光が流れ落ちた。

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