どたばた突入
ブルノームアジト東・門前
「着いた、ここが俺達の任されたアジトだ。」
「作戦開始はもうすぐだな、気合い入れろよ、ルーシュ」
アジトの門の前に立って作戦の開始を待っているルーシュとアベルは、自分の状態を確認しつつ、心を落ち着かせていた。
「アベルはこういうの初めてなの?ほら・・・人とか殺すのって。」
ルーシュは遠慮がちに話しながらも、確認するようにアベルを見る
「いや、初めてじゃないな、以前、盗賊を殺したことがある。姉を攫われて、あのころの俺はまだまだ未熟で、姉を助け出す力なんて無かったが、・・・まあ、話すと長くなるが、その時手に入れたのがこの炎の腕だ。」
ルーシュはそれを聞いて安心したように笑った
「ふう、よかった、作戦中に殺せないとか言い出されたらたまらないからね」
「お前こそビビるなよ?」
「はは、ビビらないよ、何度も人を殺したことはあるし。」
その時、建物の隙間から、がさがさという音が聞こえる、
二人はとっさに喋るのをやめると、耳を澄ませる
すると、タッタッタと複数人の足音が聞こえているのに気付いた
「おい!急げ!どっかの誰かが向こうのアジトにのりこんできたらしいぞ」
「くっそ、軍の奴らが強引に乗り込んできやがったのか?」
「分からねえが急ぐぞ!」
裏路地から、何人かの下っ端が出ていくのを見たルーシュ達は、顔を見合わせた
「・・・あれ?もしかして作戦始まっちゃってる?」
「そ、そのようだ、まずいな、何人か向こうに行ってしまったぞ、追いかけるか?」
「いや、あっちは仮面の騎士さんの方だし、大丈夫だと思うよ、それより、なんで作戦開始の合図が来ないんだろう?」
二人は、うーん、と考え込むが答えが見つからない
ふとアベルが、
「そうだな、連絡石に合図が送られていないとなると、向こうでトラブルでも発生したのかもな」
アベルがそう言ってルーシュの方を見ると、ルーシュは焦るように汗をかいていた
「どうしたんだ?」
「・・・連絡石って、アベルが持ってるよね?」
「は?お前に渡されただろう作戦開始はその連絡石から行うからって。」
そして、急にキョロキョとしだしたルーシュは、ハッと何かを見つけると、申し訳なさそうにその方向を指さした、アベルがそっちを見ると、かなり離れたところに、キラキラと光ながら震えている連絡石を発見した。
「・・・お前、落としたな?」
「ごめん!!戦闘に行くときって、いつもは剣以外持って行かないから!」
「取りあえず、連絡は来ているようだし、突入するぞ、いけるか?」
「もちろんだよ!」
「あれは落としてないよな?」
「大丈夫!」
アベルとルーシュは正体を隠すために別々の仮面を付けると、同時に扉を勢いよく開けた
「だれだ!?」
アジトの中の誰かが叫ぶ、
「「お前たちを殲滅しに来たものだ!!」」
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アジトの中に入ると、そこにはかなりの人数がいた、
「思っていたよりも多いな、幹部の中でも弱い奴のアジトって聞いてたから、もう少し少ないと思っていたんだけどなあ」
「そうだな、まあ、やることは変わらんだろう!」
「うん、一気に突破しよう!」
【サプレッションフレイムハンド!!】
【顕現:プリトウェン・フルメイル】
二人は同時にエクストラスキルを発動する
「顕現系とそれになんだあのやべえ腕は!」
「くっ、能力で負けていても数で押せ!ここに入ったことを後悔させて殺してやるぞ!」
それぞれが得意のエクストラスキルによる攻撃をするが、ルーシュの鎧には傷一つ付けられず、アベルにはすべて炎の腕によりかき消されていた
「で、でたらめだ」
下っ端の一人は、力の違いに驚き尻餅をつく、
「ルーシュ、真ん中に分け目を作るから、分かれた左を頼む」
「ああ、魔力量も考えて、俺の方を多めにしていいよ」
「く、・・そうだな。」
すると、アベルは炎の巨大な右腕を掲げ、さらに巨大化させる、そして、そのまま、下に叩き下ろした
何人かを下敷きにすると、アベルの腕により、右と左に散らばっていた、みたところ、左の方が多いようだ
「それじゃ、アベル、死なないでね」
「ふん、こっちのセリフだ」
二人はそれぞれ分かれると、戦闘を開始した
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「はあ、はあ、はあ」
「ふう、思ったよりもきつかったなあ」
二人は戦闘を終えると、扉の前で状態を確認し合う
「魔力量はどう?」
「はあ、正直かなりきついな、少し休んだらいけるが」
「そうか、それなら少し休もう、急ぎすぎる必要はないからね」
横たわるアベルの隣にルーシュも腰を掛ける
「悪いな。」
「いいよ、俺も結構きつかったし」
しかし、その時
不意に扉が開くと
「あーあ、だらしねえな俺の下っ端どもは、仕方ねえが、俺が殺すしかねえかあ?」
二人は気配を感じると、直ぐに起き上がり、出てきた人物を見る
「・・・お前が幹部か?」
「確かに俺がここの幹部だが?」
幹部と言った男は、首をこきこきと鳴らすと、ルーシュ達を見据えた
「うーん、。お前らは仮面の騎士じゃねえな、は、しかしお前らも残念だったなあ、まさか、幹部最強の俺の所に来ちゃうとは。」
「「!?」」
二人は聞こえないように距離を縮めると、こそこそと話し出す
「仮面の騎士さんは確かにここが幹部の中でも弱いと言っていたよな?」
「ああ、でも気になるのは、仮面の騎士さんが言っていた情報と見た目がかなり違う。」
「あー、もしかして俺を調べに来たときって、フログの奴のアジトに遊びに行った時にみたのか?」
聞こえないように話していたはずが、幹部には聞こえていたことに驚くが、それよりも・・・
「確かにあいつは幹部の中で一番雑魚だ、俺の名はジャニー、正真正銘最強の幹部だぜ。」
ジャニーが一瞬見せた殺気に二人は気圧される
「・・・アベル、連絡石に連絡をするよ、どうやら、あの人が来るまで俺達だけで耐えるしかないみたいだね」
「ふ、どうやら、そのようだなあ!」
そして二人は、格上の相手との命がけを勝負を始めた。