怒っているんだ。
~ブルノームアジト北~
アジトの中にある酒場では、いつものようにワイワイと酒を飲み、いつもどうり喧嘩が行われている、そんな中、二人の下っ端の二人は、店の隅で酒を飲んでいた。
「ここの所、国からの圧力も減って来たよな」
「ボスや組織全体の成果だろうな、今や騎士団は俺達に対して身動きが取れなくなっているはずだ」
「仕事がやりやすくて助かるじゃないか」
「しかし、最近の仕事は危険すぎやしないか?騎士団の奴らがうかつに手を出せないからって、表に出すぎだと思う、前は元貴族の娘まで連れてきたって言うし、これじゃあいつやばい奴に目を付けられるかわかったもんじゃないよ。」
はあー、とため息交じりに言う
暗い気持ちを晴そうと、酒の入ったコップを持つ・・・「ぎぃあああああ!!!」
先ほどまで騒音であふれていたアジトの中は一瞬で静まり返る
アジトの入り口、門の方から、いつも門番をしているやつの叫び声が響く。
扉はまだ空いておらず、門番は外で何かが起こったらしい、その叫び声で、他のことをしていた仲間たちも扉の前に集まる
「おいおい、まさか騎士団が攻めてきたんじゃねえだろうな・・・」
「まさか、それが出来ないから俺達は生きてこれたんだ。」
ごくりと息をのむ・・
ギギ・・・とゆっくりと扉が開くと、逆光で人型の影が映る
(・・・一人・・!?)
全員が大勢の軍隊が攻めてきたことを危惧していたが、その影は一つだった。
影は動き出す。アジトに入ってくる人影は確かに一人だった。
っぷ!
っぷはははははははああああ!!
全員が腹を抱えて笑い出す、しかし、扉の横からその人物を見ていた二人の反応は他とは全く違っていた
「ま・・・まさか・・」
「嘘だろ・・・」
笑っていた内の一人が、アジトに入ってきた影に声をかける
「おいおい、場所でも間違えたか?一人で何か用ですか??笑」
影は周りを見渡すと、ゆっくりと口を開く
「用?・・ああ、そうだな、用があってきた、向こうもそろそろ始めるだろうし、俺も始めるか」
「あ?何を始めるって?」
「大殺戮だ」
「は?この人数相手に何を・・・」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
その時街の各地に戦闘音が響き渡る、
「っく、おいお前!何者・・・あ、ああ、ああ!」
薄っすらと見えてくる顔は、銀色の仮面で隠されていた、この街に住むものなら誰でも知っているであろう、組織での警戒度はもちろんトップレベル、見かけたら必ず報告しろと言われるほどの存在がそこには立っていた。
「仮面の騎士・・・」
「おい!他のアジトも何人かから襲撃を受けているって連絡が来てるぞ!!」
「くっそどうなってんだ!!!」
「悪いが俺は珍しく本気で怒っている、容赦するつもりは無いぞ」
その瞬間、一瞬だけの殺戮ショーが始まった。
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~ブルノームアジト北・幹部室~
他のアジトからの連絡が来てから直ぐに部屋を出ようとしたが、どうやらこのアジトにも何者かが
襲撃を行っているらしい、部下からの報告が無い所を見ると、相手はかなりの規模の集団出来ているんだろう。
「っち、あいつら、どうせ襲ってきているのは騎士団な訳がねえってのに、何を時間かかってやがる」
いらだって、様子を見に行こうと立ち上がった、
すると、
バン!と勢いよく扉を開け
ぜえ、ぜえ、と息を切らしながら部下が入ってきた
「おい、てめえ何があった?」
「に、逃げて・・・あいつは、に、逃げてえ」
「あ?」
部下の顔を見ると、頭から血が出ている、さらに、右腕は血がだらだらと流れ出している、
「お前、腕は・・・!?」
「あいつはああ、に、人間じゃあねえ・・」
血を出しすぎたのか、どさりとその場に倒れる
あいつ?、あいつら、じゃなくてか・・?
トコトコ
部屋の入口から聞こえてくる足音は、実にゆっくりで、部下の様子とは似ても似つかない
やがて姿が見える
「っ、お前は!!」
「お前がここの幹部だな?悪いが急いでいる、死んでもらうぞ」
なんてことだ、ボスに最も警戒しておけと言われていた人物がそこには悠々と立っていたのだ
「他の部下は?」
「気になるなら、様子を見てくるといい」
「っは、その必要はなさそうだ・・・最悪なことにな」
ボスから、こいつに出会った時の対処をいくつか聞いているが、もうそんなのはどうだっていい、部下の恨みを晴らすため、俺はこいつを殺すぜ。
と、能力を発動させようと考えてしまったその時、俺の命が終わることは決まっていたのかもしれない。
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「さて、一つ目のアジトは終了っと、アベル達の様子も見たいとこだが、先を急ぐとするか」
そうして、殺戮の夜はまだ終わらない。