作戦会議
もう暗くなり始めている空のなか、城下町を抜け、貴族たちの領土が基盤のように配置されている所に出る。少し歩くと、目的の屋敷が見えてくる
「ついたっと」
その屋敷とは、貴族の中でも位の高いものが住むような、俺の家よりもはるかに大きな屋敷だ。
屋敷の前の大きな標識には(ボルド家)と書かれている。
俺は矢文を見て、ボルドに会うためにきていた、
実は、組織について調べてもらっている男と言うのは、ボルドのことだ。
ティアの大会の時にエリスの魅了の魔法により、何かと手伝ってもらったんだが、魅了の魔法は解けているというのに、まだエリスのことを女神のように思っており、その主である俺の言うことを聞いてくれるのだ。
本当におかしな奴だが、貴族としての位は高く、こんな言い方をしちゃなんだがかなり役に立つのだ。
とはいったものの、あの時の俺は仮面の騎士で、その時の都合上、エリスの主としての俺は仮面の騎士ということになっている、つまり、いまの俺、タツヤのままでは誰だと入れてもらえないのだ。
という訳で、久々に仮面装着。
俺が門の前に立っていると、それに気づいた庭を掃除していたメイドが門を開けてくれた
メイドさんに連れられ、屋敷に入り、「こちらの部屋です」と言われた部屋に入る
「おお、仮面の騎士さん、お待ちしておりましたぞ!」
大きなおなかにピンと跳ねたひげ、いかにもなおじさん、ボルドだ。
「悪いな、今回も手伝ってもらって」
「ハハハ、何を言っておられるか、あの仮面の騎士様とかかわりが持てて、個人的にも立場的にも嬉しいのはこちらですぞ」
そういいながら、ボルドは大きな紙を机に広げる、紙には、この街の城の場所やお店の場所以外に、
丸いしるしで囲まれた場所がいくつか書いてある、この街の地図だ
「言われた通りに調べた結果、この街にあるブルノームのアジトです」
俺がボルドに頼んだ調べ物はいくつかあるが、その一つが組織の拠点の場所だ、地図を見ると、恐らく丸く囲まれている所が拠点の場所だろう、
「・・・5つか、思っていたよりも多いな」
「ブルノームと言えば、貴族の中でも問題として毎度名前のあがる組織ですからな、人数は詳しくは分かりませんが、幹部が4人いて、その一人一人が拠点のリーダーとして立ち上がっているみたいですな、もう一つはボスであるスカラーのいる拠点です、幹部はまず人斬りと呼ばれている剣使いが有名ですが、
最近では『影斬』と呼ばれている暗殺者、あなた様のお友達は、かなりの利益を及ぼしているみたいですな、強さはあまり詳しいことは分かりませんが、幹部クラスなのは間違いないでしょう」
「ほう」
授業では本気じゃなかったと考えるのがいいのかもしれないな
拠点は、まるで国全体を囲むかのように立っており、何かタイミングを狙っているかのようにも思える
「それで、もしかしてですが、ブルノームをどうしようとお考えで?」
ボルドがやや腰を下げ、答えを確認するかのように聞いてくる
「ああ、ぶっ潰そうと思う」
「なんと!!」
ボルドとしても、この街に影響を及ぼす存在がいなくなることは喜ばしいことだろう、
とはいえ、これだけの規模だ、潰すと言っても簡単なことじゃない
「しかし、ブルノームの戦力は本物ですぞ、あなた様は何人いようが勝てるでしょうが、それでは他の区域で混乱が発生してしまいます」
そう、問題はそれだ、俺が一つの拠点に向かい暴れまわるとする、すると、それを聞きつけた他の拠点の幹部が動き出してしまい、街中全体のパニックを巻き起こすことになる。
つまり、組織を潰すには、拠点すべてを同時に攻撃する必要があるのだ。
「あれこれ考えても仕方がないな、取りあえず幹部と戦うものを決めないと」
「そうですな、幹部の強さは恐らく部隊の団長クラス、並みの戦力では負けてしまいますでしょう」
その時、扉の音とともに、エリスが部屋に入ってくる、すると、先ほどまで地図を見ながら話していたボルドが急に地面に頭をこすりつけ始めた
「いらっしゃいませえええ、エリス様!!」
「あ、はい、こんにちは、あ!タツヤ様お久しぶりでございます!!」
「あ、ああ、久しぶり」
急変したボルドに多少戸惑ったが、ナイスタイミングだ
「話は聞いてるよな?、これからその組織の幹部と戦うものを決めようと思っていたとこなんだ」
幹部は三人、エリスに聞いたところ、幹部クラスと戦えるエルフは、エリスを含めて二人ほどらしい、
「俺はスカラーの拠点に行くとして、もう一つはエルフ達の人数を増やすのはどうだ?」
「それが・・・」
エリスは申し訳なさそうい下を向くと
「この場所はかなり森から離れてしまうため、力がかなり弱まってしまうのです、幹部以外ならどうとでもなると思うのですが・・・、お力になれず申し訳ありません!」
「いやいや、こっちからお願いして協力してもらってるんだ、そこは俺が考えるよ」
とは言ったものの、どうしたものか、ラウスに頼んで騎士団を動かしてもらうのも考えたが、
こんなにこの街に拠点を張り巡らせた組織が、騎士団の不自然な動きに気付かない訳が無い、
もし、そのような作戦を考えていることが知られれば、あいつらは何をするか分からない。
どこかに、幹部と戦えるほどの力を持っていて、協力してくれそうな奴は居ないもんか・・・
「あ」
「?どうなされました、タツヤ様?」
「一人、いや、二人候補を思いついてな、そいつらなら何とかしてくれそうだ」
「そうですか、それよかったです」
メイドが持ってきてくれた紅茶を飲み、一旦作戦会議に一区切りをつける、
「ボルドも、もちろんエリス達にも報酬は払うからな」
「タツヤ様・・・またそのようなことを」
エリスは俺がこういうと、いつもいらないと拒否してくるが、そういう訳にもいかない、これは俺が主だからとかそういう問題ではなく、お礼がしたいと言う気持ちなんだ
友達を救うのを手伝ってくれるお礼が
「そういえば、タツヤ様のお友達様という方も、組織側につくことになるのでは?」
エリス達には、ミラのことをすでに話している
「ま、そうだろうな、大丈夫、作戦が終わるまで時間を稼いでくれる奴はもう決めているよ」
「・・・あ!」
「そうそう」
エリスは俺がだれのことを言っているのか分かったようだ、まあ、あいつとは意外と会う、一緒に位していたのもあるし今でも、俺の屋敷によく遊びに来る、騎士団の寮に入ってからは、エリス達の洞窟にはあまりいっていないらしいが
窓から外の見ると、すでに暗くなっており、時間もなかなかすぎている
俺が今日の所はそろそろ帰ろうと言って立ち上がった時、ふと、大切なことを思い出した
「ボルド、俺の友達が今まで殺した奴らの懸賞金は調べてくれたか?」
「ああ、そうでしたな、もちろん調べておりますぞ、えーと、こちらです」
俺はボルドから受け取った紙を見てにやりと笑った。