ミラの秘密1
「みんなちゃんとお弁当持ってきた?」
教室の中で、俺達はいつものメンバーで集まっていた、
「持ってきたぞ」
「ふん、俺の完璧な弁当を見るがいい!」
「俺がいつも食べてるものを持ってきたよー」
俺、アベル、ルーシュはそれぞれが持ってきた弁当を机に広げる、
今日はハルが言い出した提案で、全員自分で作った弁当を持参して食べ比べしようという話になっていた
そのため俺は前日にわざわざ弁当箱を買いに行ったわけだが、まあそれはいいとしよう
「お、みんなちゃんと持って来たんだね、それじゃあ私も、ほら、リンも早く出しなって」
「う、うん・・・」
リンは少し恥ずかしがりながらも、机の上に持参した弁当箱を置いた
まてよ、そういえば・・・
「そういえばミラはどうしたんだ?」
俺がそう尋ねると、ハルが暗い表情を浮かべる
「それが、・・今日もお昼は用事があるんだって」
ミラとは、最初のレクリエーションの時はなんて呼んでたかな・・・あー、そうそう、学食の子だ。
俺達が食堂で絡まれたときに、いつも一緒にいるもう一人と言うのが彼女で、
長い緑の髪を、三つ編みにして身長が低めなのが特徴だ、
少し地味な印象を持たれるのに、顔が童顔でかなり可愛いため、このたった三週間でかなり人気になっているらしい、子供っぽい見た目なのに少しミステリアスなのがいいんだとか。
学校の授業の時は、俺達といつも一緒に行動してくれるのだが、昼休みと放課後になると何故か直ぐに帰ってしまうので、まだ一度も一緒に食事をとったことがない。
流石に少し気になるな・・・
「仕方ない、なんか用事があるんだろ」
そういうと、ハルはもっと落ち込んでしまう
まあ、ハルがこんなことを言いだしたのは、ミラと一緒に食事をするためだからな。
いつもどこかに行ってしまうミラでも、弁当をみんなで持ってきて食べると言えば、
一緒に食べてくれると思って企画したのだろうな。
ハルの落ち込んでいる顔を見ると、何故だと問いただしたくなるが、それをやっちゃいけないのは俺が一番知っている、向こうが言い出してくれるまで黙っているしかないだろう。
「うん、そうだよね・・うん!それじゃ皆お弁当食べよっか」
ハルはそういって、自分で持ってきた弁当箱を机に置くと、リンも慌てて置き
全員同時に弁当箱を開ける
「うわー、大きいお肉がどっしりと」
「うん、俺が好きな物を持って来たんだよ」
「そ、その、タツヤさんのお弁当はオムライスですよね・・とても上手です」
「ありがとう、リンのもいろいろ入ってておいしそうだな」
全員の弁当の中身を見ると、ルーシュも弁当は大きな弁当箱にドスンと焼いた肉を置いだけだった
本人曰く、「俺が好きな物を持ってきた」らしい、なるほど、ルーシュの食生活が心配なのは
置いておこう。俺のは弁当箱にオムレツ詰めたものだ・・・うん、俺もルーシュと変わらないな。
ハルとリンのはいろいろの食材が使われていて色とりどりで健康的で綺麗だった、
リンは納得だけど、ハルは意外だ。
そして・・・
「ハッハッハ!こんな所でも差が出てしまったか、ま、仕方のないことということかな」
パサリと髪を揺らして腕を組んで威張っているアベルの弁当箱は、無駄にキラキラした装飾が施された弁当箱に、肉、魚、エビなど、様々な高級そうな食材が敷き詰められていた、肉は少し赤みがかっていて、弁当なのに肉汁がこぼれているのは
魔法の力だろうな、
そういえば、こいつ貴族だったな・・・くそ、マジでうまそうなのが腹立つ
「おい、ちゃんと自分で作ったのか?」
「当たり前だ、幼いころからすべてにおいて完璧だった俺をなめるなよ!!」
どうやらアベルは幼いころからあらゆる方面の教育を受けてきたらしい
っく、オムレツしか作れない俺とは大違いだ・・・
「ハルは意外だったな、結構料理とかするのか?」
俺がそう言った途端、リンは下を向いて顔を隠し、ハルは俺と目を合わせないようにして返事をしてきた
「・・・ああ、もちろんそうだよ~、この歳にもなって料理出来な訳ないじゃないか~あは、あははは」
完全に目が泳いでいる、よく見ると、野菜の切り方までリンの弁当に似ている、こいつもしかして・・・
「おーい、リン、ハルの弁当お前のと似てるの思わないか?」
「ふえ!?そ、そそ、そんなことないと思うな~」
「・・・ハルお前リンに作ってもらっただろ」
「・・・はい。」
話を聞くと、ハルは料理が出来ないらしく、今回も作っては見たものの持ってこれるような見た目じゃなかったらしく、泣く泣くリンに作ってもらったそうだ
「ちょ、ちょっとは手伝ったんだよ!?ほら!このニンジンとか、私が皮剥いたし!!」
「あーなるほど、だから身が無くなってこんなに小さいのか」
ガーンと言う顔をして膝をつくハル、ルールを破ったんだから仕方ない
その後、俺達は全員の弁当を食べ比べながら、楽しく食事をした
アベルの弁当が真っ先になくなったのは、悔しいが、仕方ないな。
*
弁当を食べ終え、みんなと別れ、暇つぶしに外をぶらついていた俺は、
学校から出ていく、ミラの後ろ姿を見かけた
あいつ、用事があるって言ってたけど、学校の中じゃないのか?
走って出ていくのを見ると、急いでいるのだろう、それに、手にはレクリエーションでもらった学食券
でもらえる、大きなパンを手に持っている
ミラとは友達だし、流石に気になるよなー
悪いことだとは分かってるけど・・・何か困っているなら助けたいし
そう思い、俺はミラを追いかけるのだった。