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努力と才能

「演習場でやるぞ!ついてきやがれ!」

「はいはい」


前年度のAクラスの先輩五人ほどに連れられて、演習場に行くことになった、


演習場に着くと、昼休みということもあり、人は全くおらず貸し切り状態だ。


「先輩たちがどのくらいの実力なのかは知らないけど、後輩にこんなことしてくるなんて、よっぽど暇なんだねー」

ハルは前を歩く先輩にわざと聞こえるように少し怒っているかのように言う、


聞こえたのだろう、後ろを振り向き、キッと睨んでくる。


「まあ、先輩たちもイライラしてるんだろうな」


俺がそういうと、ハルはむうーっと口をとんがらせる、


「だって!せっかく皆で楽しくご飯食べてたのに、あの先輩たちのせいで台無しだよ!」

「ハ、ハルちゃんそこまでにしとこ、ね?」

「う~、まあ、リンが言うなら」


ハルがようやく落ち着く、今俺の他には、ハルとリンしかついてきていない。

アベルとルーシュは、俺がその決闘を行うと聞くと、

「結果は分かってるから行かない」

と言い出しやがった。


演習場の中央に着くと、先輩たちの一人が、腰に着いたレイピアを取り出してこっちに向けてくる、


「剣を出せ!始めるぞ!」

目を大きくして、今にも手が出そうな先輩に、俺は


「あー、えっと、先輩たち全員でかかって来てもいいですよ?もちろんこっちは俺一人ですけど」


すると、先輩たちは口をポカーンと開けていたが、直ぐに我に返ると、頭から血が噴き出しそうなほどに

顔を紅くしていた。


「き、貴様!!俺達を馬鹿にしやがって!」


他の全員も、攻撃の姿勢をとり、俺を囲むようにして広がる


「二度とそんなこと言えねえようにしてやる・・!!!」


う、うわー、怒ってらっしゃるよ。


俺は別に馬鹿にしている訳じゃない、剣の腕もそれなりに上がってきた俺は、一体多数戦闘を意識して

の戦いで、試してみたいことがあったのだ。


見たところ、先輩たち五人のうち、三人が剣を持っている、残り二人は短い杖と木でできた縦長い杖を持っているから、多分魔法使いだろうな


「いくぞ!!!!」


戦いを始めた途端、レイピアを持った先輩Aが俺の体を突き刺そうとしてくる、


おいおい、まだルールも何も決めてないのにいきなりか、

それにしても、単純すぎる攻撃だな、そんなんじゃシス師匠に特訓を倍にされるぞ


一直線の攻撃を身をひねって躱す、

(マスター、背後から剣での振り下ろしの攻撃が近づいています)


その言葉を聞いて、右回りで振り返りそのままの勢いで振り下ろしてくる剣を腰に着いたブロードソード

を抜きながらはじく。


「んあ!?」


背後からの攻撃を防がれた先輩Bは、よろけて驚愕している、そこに空いている左手で腰につけているさやでお腹を叩く、

「ふぐっ!」

すると先輩Bはお腹を押さえてその場に倒れこんだ。


うん、連携はばっちりだな!


俺が一体多数戦闘でやりたかったのはこれだ、シスにソナーの魔法を使ってもらい、俺が見えない背後からの攻撃を感知してもらう、大したことないように聞こえるかもしれないが、これがかなり強い。

不意打ちやその他の攻撃を防ぐのがかなり楽になるのだ、一体多数戦闘ではやっぱりとんでもない力だな


(マスター、右方向から氷属性の魔法の詠唱をしています、注意を)


横を振り向くと、先輩Cは短い杖を持って目を閉じたまま長い詠唱を行っている、


ようやく詠唱が終わったのか、つえをこっちに向けて

「アイスピラー!」


氷の矢ほどの大きさの塊が飛んでくる、


『エンチャント:炎』


一瞬で剣に炎の力を与える、飛んでくる氷に向かって剣を振ると、氷は瞬く間に消えてなくなった


てか、こんな魔法に時間かけすぎだろ。


「・・・アイスピラー」


俺は手を先輩Cに向け、同じ魔法を放つ

「え?」


先輩Cは急なことに驚いていたのか、飛んでくる氷をそのまま受けて、気絶した。


「ど、どういうことだ!?俺達でも最近習った魔法を、ほとんど無詠唱で発動しやがった!?」


驚きすぎだ、氷を作り出して飛ばすだけの魔法なんて、ちょっと教われば出来るだろう、、

いや、でも俺と同じクラスの生徒も苦戦してたかも・・・

というか、先輩たちが最近習ったって、ルミア先生教えるの早すぎだろ


「くっそおおお!!」


二人がやられて焦ったのか、先輩Aと、もう一人の剣を持つ先輩Dが同時に斬りかかってくる、


二人の剣を、しばらくさばいていると、所々危なくなるところが出てきたので、一人の足元がおろそかに

なっている所を狙い、足を払いよろけたところにさやで叩く、もう一人も直ぐに仕留めると、

残りは大きな杖を持つ先輩Eのみになった


「な、なんなんだよ、ってお前まさか、今年のAクラスの三位の・・!?」


って知らなかったのかよ、てっきり俺が三位だから挑んできたのかと思っていたんだがな

ルーシュやアベルは強いってことが分かってるから、俺は大したことないと踏んでのことだと思ったが、

なんだ、ただ俺が本当に弱そうと思っただけかよ!!


腹いせに他の先輩よりも少し強めにお腹をさやで叩く、

「ふぐう!」


先輩Eも倒れ、この勝負は俺の完全勝利となった。



レイピアを持った先輩Aに近づくと、まだ意識があるようだった

「先輩、俺の勝ちでいいですよね?」


「・・・ああ!」


先輩は何か言いたそうにしながら目に涙を浮かべていた


「どうかしました?」


すると、俺を睨みながら

「話聞いてたよ、、お前今年のAクラスの三位なんだろ?、どうせ・・どうせ俺達みたいな才能がない奴がお前みたいなやつに才能を持ったやつに勝負を挑もうとしたのが馬鹿だったんだ・・!いくら頑張ってもお前らみたいにはなれねえんだよ!俺達は!」


「へえ・・・」


先輩の服装を見る、俺と戦って汚れたところ以外は破けたところも全くなく、初めて地に伏せたような

綺麗さだ


その時、演習場の入り口から声がしてくる


「さーて、今日もやりますかー」

「ああー、なんで俺達昼休みを削ってまでこんなことしてんだろな」


そうしてぞろぞろと何人かの生徒が演習場に入ってくる、そしてそのまま、

訓練用のゴーレムが置かれている場所まで行くと、そのゴーレムを起動させ、戦闘始めた。


「あいつらは・・・っ!」


演習場に入ってきて訓練用ゴーレムと戦闘を始めたのは全員が俺と同じ学年のAクラスの生徒だった


「・・・先輩はあんな風に休み時間まで削って訓練したことありますか?」

先輩Aは、顔を下におろして何も言わない、


俺だって夜に死ぬほど訓練を受けている、自分のエクストラスキルに、自分で言ってておかしくなりそうだけど


訓練用ゴーレムと戦っているAクラスの生徒は、「ぐはー!」とか言いながら吹き飛ばされたりしていた

それを見て、ふらふらと立ち上がった先輩Aは、戦っているAクラスの生徒の所まで近づいていく

俺もついていこーっと


「ハル、リン、他の先輩たちの救助よろしく」

「おっけー」


俺も先輩の後を追っていく。

先輩が近づいてきているのに気付いたのか、一度ゴーレムを停止させる


「あれ?そのマーク、Aクラスの先輩ですよね、どうかしました?ってか、なんで先輩とタツヤが一緒にいるんだよ?」


そういった生徒の一人の制服は、ボロボロになっていて、何度も転がされたような傷が出来ていた


「なぜだ、なぜ大した才能もないのにそこまで頑張れるんだ・・・?」


Aクラスの生徒たちはそれぞれ顔を合わせると、

「うーん、タツヤがいるとこで言いたくないんですけど、やっぱり悔しいからですかね、今年のAクラスって、本当に強い奴らばっかで、最初は挫折しそうになったけど、やっぱりそいつらを見ると、かっこいいって思っちゃうんすよ」


俺がふふーんとそう言った生徒を見ると、中指を立ててきやがった。


「それだけの理由でお前たちはここまで頑張ってるのか!?」

「えっと、まあそうですね、でもやってるとなんか楽しくなってくるんですよ、ちょっとずつ近づけてるのが分かるっていうか、手ごたえがあるって言うんですかね?」


先輩Aは口を開けて驚いていたが、直ぐに目を閉じると、何かをかみしめるように下を向いていた


「・・・俺が悪かった、大した努力もしてないと言って本当にすまない、大した努力もしていないのは

俺達の方だったみたいだ」


少し頭を下げてそういう先輩に、

「ちょ、ちょっと先輩!何のことか分かりませんけど、別にいいですよ!そう言われても仕方ないですよ

、それくらい今年のAクラスの上位はとんでもないですから」


先輩たちは、そこにいた全員に頭を下げると、仲間のもとに帰っていく、


ハルとリンの治療を受けた先輩たちを連れて、演習場を出ようとした時、

「・・・悪かったな」


という言葉を聞けて安心した、これで一件落着か、


ついてこなかったルーシュとアベルには後で覚悟してもらおう


と心に決めて、俺達もAクラスの生徒たちと訓練を始めた。



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