魔法の授業
夜のシスとの剣の訓練を終え、どっさりとベッドに腰掛ける。
最近シスさんの訓練がきつくなってる気がするんですが・・・
俺の体力が限界になり、「そろそろ終わろう」と言っても、(いえ、マスターならまだまだやれます!)と
言ってきて無理やり訓練を続けられるのだ、そういえば日本もそんなことを言って歌を出している人がいた気がするがそれはいいとして、確実にシスは俺を訓練することを楽しんでいる。
それと言うのも、訓練が終わった時ぼそっと(ふふ、まさかここまで成長が早いとは・・・腕がなります)
と言っていたのを聞いてしまったのだ、本当にほどほどにしてほしい限りである。
明日も速いし、早く寝よう。
服を着替えて、いつものだぼだぼした寝間着姿に着替えてベッドにダイブ、そのまま就寝した
*
レクリエーションと言う名のしごきがあってから三週間がたった、
Aクラスの授業は、その分野によって担当の教師に教えてもらうのだが、何故か俺達の代だけ、すべてルミア先生が行うことになった、それだけならいいのだが、そのルミア先生の授業がハードすぎるのだ。
まず、授業の前には必ず走りこみがある、教室で行う授業でもだ。
そして、魔法学の授業では魔力がそこを尽きるまで魔法を訓練させられるのだ、
ルミア先生いわく、「お前たちの今の時期に体力や魔法を使ってないと大人になっても伸びないぞ!」
とのことだ。
そうそう、授業で習う新しい魔法は、生徒も俺も始めて見る魔法でしっかりとイメージの仕方を教えてもらうことが出来るため俺も発動することが出来た、うーんでもかなり微妙なんだよなあ
無駄に長い詠唱の上に、目を閉じてまでイメージを強くする必要があり、戦闘では後衛でしか使えなさそうな魔法ばかりだった。
聞いた話によると、魔法を作ったのは学者や研究者の人がほとんどらしく、環境を使って詠唱を組み込むことや、体内の魔力の循環を意識して作られているらしい。この世界の魔法の威力が低いと感じるのもそういうことが関係しているんだろうな、だって・・・
ゲームの魔法がそんなことを考えると思うか?
話を戻そう、ルミア先生の授業だがもっともきついのが、不定期に行われるゴーレムとの一対一だ。
授業の途中や、少し空いた時間があると、演習場に集められあのゴーレムと戦わされる、
俺やルーシュや戦闘が得意な上位の生徒はいいだろうが、補助魔法が得意な生徒や戦闘がまだ苦手な生徒にとってはかなりきついだろう。
正直脱落する生徒が出てもおかしくないと思った。
しかし、Aクラスの生徒たちの反応は俺が思っていたのとは違っていた。
ある日、同じように何回目かのゴーレム授業(ゴーレムと戦わされる授業)の時、
俺の番が最初に終わり、生徒たちが待っている場所に入っていった時のことだ、
目の前ではルーシュやアベルがゴーレムと戦っている、それを見た生徒たちは
「く、ルーシュやアベルみたいな同年代の奴、それにタツヤみたいな平凡そうな奴でもあそこまでやれるんだ、俺だってやってやる!」
「うん、私も頑張らないと・・・!」
実感させられる才能の差、ほとんどの人はそれに嫉妬してやる気を失ったり、諦めたりするだろう、
しかし、Aクラスの生徒たちはそれを糧にして前に進んでいたのだ、
ルーシュやアベルがこの生徒たちのと同じ年に入学してきたのも運が良かったのだろうが、
俺が平凡そうと言ったことはこの際許そう、このクラスは本当にすごいと思う。
もしかして、ルミア先生はこうなることを考えてあんな授業をしたのか?いや、考えすぎかな
そんなこんなで、Aクラスの生徒たちの成長は本当にすごいものになっているのだ、
俺も負けられないよな。
あ、もちろんゲームの魔法は封印してるぞ、
そして現在、
いつものように、四時間目の授業が終わり俺、ルーシュ、ハル、リン、アベルで食堂に向かっている、
最初の学校の日以来、この五人、それとたまにもう一人でよく集まるようになった、
「あー!ルミア先生の授業きつすぎるよー!」
「わ、私ももう体動かないかも・・・昼からの授業どうしよう」
「ふん、まあ俺にとっては造作もないことだったがな」
「はいはい、そのガクガクしてる足を止めてから言ってくれ」
アベルは腕を組んで変な汗を流している、そのプライドの高さだけは尊敬してもいい・・・のか?
教室から出るときにちらっと見たが、ほとんどの生徒が机にまるで掛けられた洗濯物のようにダラーンとしていた、いや、本当にお疲れ様、頑張ってたよ、まじで。
「そうかな?俺はもうちょっとゴーレムを強化してほしいけど」
「ルーシュ、ぜっったいルミア先生の前でそんなこと言わないでね!」
ハルがルーシュの方をがしっと掴みながら訴えるように言う、
「ルミア先生ならやりそうですもんね」
「ああ、あんな人は貴族でも見たことないな」
リンとアベルが話している後ろで、食堂の前にある本日のメニューと書かれた紙を見ていると、
後ろを振り向いたリンが、
「タツヤ君は今日も日替わりメニューですか?」
「ああ、今日は何かと思ってな」
「ふふ、本当にここの日替わり定食ばかり食べますね」
リンからさんから君と呼ばれ始めて素直に嬉しいな
俺はこの三週間ひたすら食堂の日替わり定食を食べていた、なんだろうな、別にそこまでおいしくはないんだが今日は一体どんなのが出るんだろうとか考えてしまっていつも頼んでしまうのだ、
他の四人も俺がメニューを見ているのを待ってくれているようだ、
待たせて悪いし今日も日替わり定食でいいや、と思い五人で食堂の中に入る、
すると周りから、
「おお、Aクラスの生徒だ、今年のAクラスってやばいんだろ?」
「確か去年の成績の平均を倍くらい越したんだろ」
「まじかよ、、俺もAクラス入りたかったなあ」
「きっと、すごい効率的で頭よさそうな授業してるんだろうなあ」
そう、今年のAクラスはルミア先生の超ハード授業とルーシュやアベルにより、ここ最近の年では異質な
好成績を出しているらしい、効率的かは知らないが頭よさそうではないと思う、どちらかと言うなら
頭悪そうだ。
それでも男子生徒と話していると、
「ルミア先生の鬼授業のあと勉強してたらなんか安らぎを感じるんだよ」
「おい、お前もか」
「いや、お前らどうした。」
とこんな感じで、学習面での成績もかなりの好成績だ
でもまあ、これをよく思わない奴もいるみたいだけどな
五人で席に座り、各々別の食べ物を運んでくる、今日の日替わり定食は魔物の鶏肉に大根スープ、ご飯の炊く前のような少し硬いお米にデザートの謎の果実だ、
うん、今日もどんな味か楽しみです。
だってそうだろう?魔物の肉ってゲームとかしてて一度は食べてみたいとか思ったことがあるはずだ。
全員が席に座り、食べ始める。
食べている途中に、俺の横に座るリンが
「そうだ、この間、私が苦手な炎魔法を教えてくれて、その、ありがとうございました・・タツヤ君」
もじもじしながらお礼をする、
「あーあれね、いいよいいよー」
そういうと、ハルが食べているものをごっくんと飲み込んで
「でもタツヤすごいよねー、剣も使えるのに、習った魔法はすぐ使えるようになっちゃうんだもん」
「いや、魔法は魔法でもゲー、・・イメージするの簡単だろ?」
「難しいよ!!」
危ない危ない、ゲームの魔法に比べて簡単だって言うところだった。
正直この世界の魔法は、ゲームのように言ってしまえば手抜きだ、属性付けて攻撃できればいいやー的な
単純な形の魔法が多いため、ゲームのようにデザインまで考えられた魔法に比べてイメージがしやすい。
悔しそうにぷくっとほっぺたを吹く膨らませて俺を指さす
「むー、今度私にも教えること!」
「はいはい」
その時、横に座っていた一つ上の年のAクラスの生徒が立ち上がって、こっちを睨みつけてきた
「おいおい、ちょっと成績がいいからって調子に乗りやがって、お前たちのせいで俺ら前年度のAクラスが才能ないみてえじゃねえか!!」
急にそうどなってきた茶髪のとげとげした髪の生徒は、俺達を睨んでいる、その隣にも、同じ学年であろうAクラスの生徒が何人かいた。
「なんの話ですか?別に調子に乗ってなんかいませんけど?」
俺がそういうと、男は椅子を蹴り飛ばす、
「うるせえな!お前らの成績がいいせいでな、こっちは馬鹿にされんだよ、ふん!どーせ大したこともしてないくせによ」
その言葉にリンとアベルのまゆピクリと動く、
今の言葉には俺もちょっとイラッときた、あいつらを頑張ってないみたいに言いやがって、教室に行ってみれば分かるぞ、人間型の洗濯物がいっぱい干されてるから。
すると、男の横にいたもう一人の生徒が、こそこそと耳打ちをして、急になに!?と大声を出したと思えば
「お、おい、今からお前たちの中から決闘をしてもらう、そ、そうだなー、今一番俺に近い奴はビビっちまってるだろうから、一番遠い男にしようかなー」
ほう、決闘ねー、それはいいんだがこいつ完全にルーシュとアベルを避けてやがるな、
こいつら有名らしいから、さっきの生徒に教えてもらって一番弱そうな俺を選んだのかこの野郎。
「タツヤ、どうするの?」
心配そうに見てくるハルだったが、その眼には、嫌なら私がやるよ?という目をしていた
一方ルーシュはと言うと、ズズズズと麺状のものを食べるのに必死だった
いや、それはそれでちょっとくらい見てやれよ、
まあいいや、Aクラスの生徒たちを馬鹿にしたことと俺を弱そうと見たことを後悔させてやろう。