ルミア先生
次はルーシュの班か、やる気が出てきたって言ってたけど、そもそもあれだけの剣技を使えるんだし
強いのは確実だな。
ハルは、リンを俺の元にまで連れてきて男子生徒に囲まれないように守って!と言ってきた、
俺も男子生徒なんだがな、
「じゃあ、タツヤ、リン、頑張ってくるよ!」
「頑張れよー」
「頑張ってね、ハル」
ハルが中央に走っていくのを見送り、リンとともに座る、
横を見ると、いつの間にかアベルが復活してルーシュを見ている
「そういえば、アベルってルーシュに戦い挑んで負けたんだよな?」
「うぐ!そ、そうだ、あの歳で騎士団に入ったと聞いて挑んだことがある、ってそれがどうした!?からかってるのか!?」
「怒るなって、からかってるわけじゃないよ、俺だってあいつに負けたしな」
「そうなのか?」
「昨日剣だけだが勝負したんだよ」
「そ、そうなのか」
おい、何ちょっと嬉しそうにしてんだよ、この野郎。
ルーシュを筆頭に、最後の班の四人が揃うと、なんとまたゴーレムが変形しだした、
おいおい、まだ形態があるのか?あのバリエーションだけでも、もし複数作れるとしたら脅威だな
本当にただの教師か?
一般的な人型だったゴーレムは腕が徐々に無くなり、体部分の大きな丸い岩の弱点を隠すようにして
岩が大きく強固になった、真ん中に少し穴が開いているが、どうやって攻撃するつもりだ?
最後の班のメンバーは、ルーシュ、リン、それと学食の子、それともう一人だ
「このゴーレムは先ほどのような魔法攻撃では傷一つつかない、しっかり考えてやれ」
「「はい」」
「それでは、始め!」
ルミア先生の掛け声でゴーレムが動き出す、少し近づいたゴーレムは、唐突に止まると、体の中心にある穴が光りだし、目の前に魔法陣が形成される、
「あ!あれ炎魔法だよ!気を付けて!」
リンの言葉で班全員は散開し、ゴーレムより放たれたレーザーのような炎魔法を回避する
魔法が当たった地面は高密度の炎によりシューッと煙を立てる
「す、すごい威力ですね、私の魔法じゃ防げそうにないです・・・」
「リンは防御魔法も使えるのか、すごいな」
「い、いえ、回復魔法を使うので少しはと思いまして」
確かになかなかの威力、でもまあ魔法陣が形成されてから発動までがかなり遅い分避けることは可能だろうがな、まあ、何発も同時に撃てるなら話は別だがな
「私がやるよ、・・・『ロックバレット』」
リンの手から詠唱省略され発動した土魔法、向けられた手のひらから顔と同じ大きさくらいの岩が発射されるが直撃したゴーレムに傷はつかない。
「か、固いよ~」
「ふーん、面白い魔法だね、複数作られたら面倒かもだけど、もういいや」
ルーシュはそういうと、片手に持っていた剣を目の前に持っていき、目を閉じる
それは前に言ったぞってなんだありゃ・・・
ルーシュの体の周りはいつの間にか光りだしており、その光にルーシュは包まれ、光が消えると
身体には銀に、所々金色の入った鎧を付けていて、腕や足も同じ装備を身に着けている
そして剣を持っていない左手には大きな盾。
その姿は神の騎士と言われてもいいほどの風貌をしていた
「顕現プリトウェン・フルメイル」
(シス、あれってもしかして、俺のデュランダルと同じようなもの?)
(はい、マスターのとは違いあれは盾ですがね、プリトウェンという盾は、魔法の船ともいわれる伝説の盾です、顕現系のエクストラスキルの中でもかなり強力な部類でしょう、そして、盾の顕現能力は鍛えれば鎧も出現するようになるのが特徴です)
あー、鎧を出してると思ったら盾だったのか、・・って鎧も出せるのか!?
剣よりも性能がいい気がするんだが・・・
(そんなことはありませんよ、あの装備は補助のようなものです、盾は装備してもその防御力以外にこれといった能力を持ちませんが、剣にはそれぞれに特殊な能力を使用者に与えます)
(え?それって俺のデュランダルにも?)
(もちろんです)
待ってくれ、じゃあ俺は今までデュランダルを切れ味のいい剣としてしか使ってなかっただけで、
こいつには他の能力もあるってことか、
(どんな能力なんだ?)
(それは、、)
鎧を身に着けたルーシュは、ゴーレムに向かって突進、直ぐに魔法陣を形成し攻撃するが、
盾によってその攻撃は防がれルーシュの突進は止まらない、
「はあ!」
振り下ろされたルーシュの剣は、強固なゴーレムを真っ二つに切り裂くことに成功、そのまま魔石も
両断されており、ゴーレムの動きは止まった
「ふ、見事だ」
しーんとなった演習場だったが、徐々に話すものが現れ始める、全員ルーシュの強さに驚いていたのだろう
「ま、まじかよ、一人であれを倒すとか、Aクラスの一位ってあんなにすごいのかよ」
「まあ、天才と言われるのも分かるわ」
横にいるリンも驚いた様子で
「すごかったですね、・・私のエクストラスキルは補助系のものばかりで、あんなことは絶対に出来ません・・・」
苦笑いしながら顔を下に落とす、
「補助のエクストラスキルも重要に決まってるだろ、攻撃する奴が安心して攻撃できるのは回復や補助をしてくれる奴がいるからなんだよ、補助魔法使いのMPはアタッカーのHPと同じくらい重要なんだ」
「HP・・ってなんですか?」
「いや、なんでもないよ」
ルミア先生が全員集まれと指示を出したので、立ち上がる
「まあ、エクストラスキルはどんな能力でも必要だってことだよ、ほら早く行こうぜ」
「・・・はい!ありがとうございます」
「アベルもこいよ」
「あ、ああ、・・あいつ、俺と戦った時よりも強くなってないか?」
「なんか言った?」
「な、なんでもない」
中央に集まり、俺達は座らせられる、
も、もしかして説教でもされるのか?
「うう、私なんにも出来なかったから怒られちゃうのかな?」
リンは自分がゴーレムにダメージを与えられなかったのを叱られると思っているらしいが、
うーん、まだ一度も習ってないのに叱ることは無いと思うけど
ルミア先生は少し二ヤリと笑うと
「正直驚かされたよ、三年前も同じようにAクラスの奴らに同じゴーレムを戦わせたんだが、そいつらは
変形もさせてないのに、一つの班もゴーレムを倒すことが出来なかったからな」
「「え?」」
生徒たちは驚き顔を見合わせている、
「お前たちは、私が知る限り最も優秀だな」
「おおー!」
生徒たちはこの言葉に大喜び、こうしてレクリエーションは終わった。
てか、一度やって倒せなかったものをまたやってんじゃねえ!!
その後、俺達は学食を手に入れたメンバー+「し、仕方ないから俺もついて行ってやろう」と言い出した
アベルとともに食堂に向かった
*
校長室
私は、レクリエーションの後その報告をしに校長室の前まで来ている
「失礼します」
校長室に入ると、校長が椅子に座り手にカップを持っている
「おおルミア君か、お疲れ様、悪いねえまた教師として呼び戻してしまって」
「いえ、問題ありません」
「まあまあ、立ち話もなんだし座ってくれ」
「はい、失礼します」
校長もソファーに座り替え、顔を合わせて座る
「それで、今回の生徒たちはどうだい?」
「かなり優秀だと思います、私のゴーレムを二体も壊されました」
校長は驚いたようにして、あごにあるひげを触る
「ほお、元第一部隊の君のゴーレムを?」
「はい」
私は以前、騎士団の第一防衛部隊に所属していた、しかしある日、ある出来事をきっかけに引退し、
学園に呼ばれ教師をやってみたが、騎士団と同じような訓練をしたため、生徒が全員登校拒否になってしまい、向いていないと思いすぐにやめた。
今では街の役所で働いていたのだが、また学園に呼び戻されてしまったため、今こうして教師をやることになった
「それはそれは、じゃあまた全員登校拒否になることは無いかな?」
校長は笑いながら言う
「や、やめてださい」
目の前に用意された飲み物を一気に飲んで落ち着く、
「でもどうして、また私を呼んだんです?」
正直私にはまた教師として呼び戻されるとは全く思っていなかった、それほど全員が登校拒否になったのはショックだったし、自分が教師に向いているとも思えなかった
「それはねえ、わしの勘だよ」
「え、か、勘ですか」
「ははは、でも君がそういうのなら今回の生徒はかなり期待できそうだね」
「はい、今度こそ私が責任をもって育てて見せます」
「君がそこまで言うなんてねえ、どんな生徒か気になってきたよ、教えてくれるかい?」
校長がそういうので、私は目についた生徒の特長を話すことにした
「やはりルーシュでしょうか、あれは天才と言われるのもうなずけますね、確かに第一部隊に入るだけの実力はあるようです」
「ほうほう」
「アベルも少ししか見れませんでしたが中々ですね、鍛えればルーシュにも劣らないかと」
「アベル君か、貴族会議でも話が上がってたなあ」
「それと、・・・」
タツヤと言う生徒のことを話そうとしたがやめた、正直本当の実力が分からない。
魔法攻撃を剣で切り裂いていたのは分かった、しかしその剣技がほとんど素人、なのに剣を振るたびに成長していくのが目に見えて分かった、剣を主に使うと言っていたのに、あそこまで目に見えて成長するだろうか、私には何かを隠すために剣を使っているとも思えたが、流石にありえないか
「ん?どうしたんだい?」
「いえ、なんでもありません」
キーンコーンカーンコーン
気付くとまあまあの時間が経っていた
「すみません、仕事があるのでこれで」
「いやいや、止めてしまって悪かったね、これからもよろしく頼むよ」
「はい、失礼します」
立ち上がり、一礼して校長室から出る、
ふう、やっぱり校長と話すと長くなるな・・・・
それにしても今年度のAクラスの生徒、私が第一部隊の訓練に使ていたゴーレムを二体も倒すとはな、
ふふふ、これならもっとやっても大丈夫か?
私は今後の訓練(授業)を考えながら仕事に戻るのであった。