スキルはすべて使い方
二回戦の予想できない結果に会場も騒然としている。
「ま、まさかの結果になってしまいました
リングではキャシーが観客に向けて投げキッスを送っていたので、もう一度売店に行くことにした
いやー、それにしてもキャシーのスキル、何か対策を考えないとやばいよなー
デュランダルで切ろうとしても消される、おまけに魔法まで効かない、
ステータスによるパワーは俺の方があったとしても、殴り合いであいつに勝てる気はしない。
うーんどうしたもんか
頭を悩ませながら外に出る、
あの、オーラの外から魔法を撃ったところで、オーラに入った瞬間消されるだろう、
あいつが認識できない速度の魔法を撃つっていう手もあるが、、あの魔法は威力が弱くてキャシーを倒しきれない、その隙に接近戦に持ち込まれたら最悪だ
でも、ここまで考えて戦うのって久ぶりだよな、チート級のモンスターなんて、
ゲーマーの血が騒ぐ
(マスター)
(ん?なんだシス?)
ゲームで培った考え方のおかげで、いくつか方法を考えてはシュミレーションしていると
シスが、話しかけてくる
(マスターそこまで悩む必要はないかと)
え?
(彼、、、いえ、彼女のスキルには決定的な穴があります)
その頃、控室では、、、
「うひ、うひひひひひ」
ひえええ!
紫音は控え室で、三回戦に呼ばれるのを待っていた。
質素な椅子にテーブルしかない個室、その中には、紫音ともう一人、紫音の対戦相手の
モーデルという男が立っている、
クルクルと天然パーマのような髪で身長は並、不健康そうな眼は大きなクマが出来ている。
いや、普通に立っているわけでは無い。
ジーと紫音を観察するように眺めているのだ。
そしてたまに、何かを確認できたような顔をして、
「うひひひひ」
と、笑っている
(怖い、怖いですよお!)
紫音はあまりにも不気味な行動に膝をカタカタさせて震えていた、
(早く始まれ、早く始まれ、早く始まれ!!)
その時、
バン!と扉を開けて兵士らしき人が僕たちを呼びに来たようだ
(ふう、やっとか)
紫音は心を落ち着かせて、リングへと向かう、
*
ふう、何とか戻ってこれたな、
俺は売店に行き、財布を出した途端、不良のような奴に裏に連れ込まれたので、
格闘戦闘の練習としてボコボコにさせてもらった後、急いで観客席に戻って来ていた
「さあ!まもなく始まる三回戦!!まず最初に入場してきたのは!シオン選手だあ!!
【王の卵】という珍しいエクストラスキルを持って、一時期有名になった方ですねえ」
観客の反応は、
「おー、王の卵かあ、俺の知り合いも持ってる奴いたなあ」
「うーん、確かに珍しいけど、あのスキルって、勇者とかに比べるとそこまで強くないんだよなあ」
「俺の知り合いも、戦闘よりも武器生成を使って大儲けしてたよ」
ふーん、王の卵ってスキルを持っているのか、
観客の反応を見る限り、そこまで強いスキルじゃなさそうだが、
(いえ、そんなことはありません)
(というと?)
(はい、【王の卵】の効果は格下のものへの強制命令、ステータスの上昇:中、危険察知、武器生成
となっています、もちろん、この恩恵を普通に使えば、並みのスキル保持者よりは強くなれます、
それでも、勇者や他の自身を強化するいスキル保持者には、劣ってしまいます)
なるほど、うーん、でもそのスキルって、、
シスは続けて、、
(しかし、このスキルを持ったものには、二種類の者が生まれます、強制命令や武器生成を使い、それなりに成果をあげるもの、そして、、
スキルの恩恵を駆使し、英雄としてたたえられる者です、同じスキル保持者でも、使う人が違えばスキルは大きく姿を変える、つまり、スキルを活かすも殺すも、保持者の力量次第と言えるでしょう)
スキルは使い方か、まさにその通りだろう、
例えば手から火をだすスキルを持っているとする、そのスキルを持ったものは、単純に手から炎を出して
攻撃するだけのものもいれば、スキルの本質に気付き、それを活用した戦い方をするものもいるだろう
ただ炎を出すだけの能力でも使い方次第で強さは大きく変わるんだ、
【王の卵】・・こんなに多くの能力を持つスキルなら、使い方によってとんでもない効果を生むはずだ
さて、彼はどっちかな?
シオンと呼ばれた少年は少しおどおどした様子でリングに立っている
それにしても、シオンって、いや、まさかな
「対戦相手の入場です!えーと、データによると、モーデルさんは冒険者としてそれなりの成果を残しているようですねえ、さあ、それでは始めましょう!」
観客たちも、俺やキャシーの試合の時と比べると、期待している様子はなく、なんとなくリングを眺めている感じだ
「始め!!」
実況の声で、三回戦が始まる、
「フヒヒ、ようやく俺の新の力を見せる時が来たぜ・・フヒ、俺は王族になってこの俺をいじめやがった
奴らを死刑にしてやる・・・」
羽織っていた黒いマントを脱ぎ棄てる
「フヒヒヒヒ!!見ろ!これが俺の力だああ!」
モーデルは会場全体に聞こえる声で、
「エクストラスキル!狂戦士化!!」
そう叫ぶと、モーデルの体はみるみるうちに大きくなって、筋肉がつき、爪は鋭く伸び、肌の色はところどころが黒くなっていった、ブオオオオ!と叫ぶ声には理性が吹き飛んでいることを明確にしていた
しかし、
それを見る紫音の目は、ただただ獲物の力量を観察する者の目になっている
しばらく観察した後、
「うん、いけるかな」
そういうと、紫音は手を横に出し、何かを掴む体制に入る
「エクストラスキル【武器生成】」
何も無かったはずの紫音の手には一瞬の輝くエフェクトの後、一メートルほどの剣が握られていた
紫音は疾走する、それに気づいたモーデルも接近し、両者による接近戦が始まった、
先手はモーデル、鋭く生えた爪のブンブンと振り回す
だが、
「おおっと!シオン選手!変身したモーデル選手の攻撃を華麗に躱しているう!」
紫音は攻撃を見切って右、左に少しも掠ることなく避けている、
そして、隙をつくかのように剣をふるう
しかし、ガっという鈍い音は紫音の剣が、モーデルにダメージが無いことを示していた
「うーん、やっぱり普通の剣じゃ無理だよね」
紫音は一旦距離を取り、今持っている剣を投げ捨て、新たな剣を作り出した
そして、再びモーデルとの距離を詰める
紫音によって振るわれた剣はまた、モーデルの強化された肌に防がれる、誰もがそう思ったその時
ザシュ!
紫音の剣はモーデルの肌を切り裂いた、ブオオオオ!!モーデルが痛みによって大きくよろける
そして、その一撃で紫音の剣は壊れてしまっていた
「さあ、どんどんいくよ」
シオンは再び新たな武器を一瞬で作り出す、そしてそれをモーデルに切り付けて、壊れては生成して
を繰り返している
「なんということだああ!モーデル選手には通らないと思われたシオン選手の剣が通っている!!
それに、武器を作っては壊している!綺麗なで神秘的なエフェクトも相まってすごいラッシュだ!!」
(あれって、どうなってんの?)
不思議に思いシスに聞いてみる
(【王の卵】の武器生成がそこまで大した能力と言われていない理由は、作れる剣が、標準程度のものしか作ることが出来ないからです、、私も、驚きましたが、恐らく、彼がやっているのは武器の耐久性をたった一撃のものにし、その分、威力を底上げているのでしょう、、こんなことが出来るとは、、
正直驚かされました)
シオンのラッシュは止まらない、
モーデルが剣の攻撃を防ぐために動いたかと思えば、すでに槍を作り、別の攻撃に移っている
そして、ついにモーデルは膝をつくほどにダメージを受けてしまっていた
「こんなもんかな?それじゃ・・・」
シオンは膝をついたモーデルに近づき、
「変身の解いて降参しろ」
その瞬間、モーデルの変身は解け、目がうつろなモーデルが現れた
そして、
「俺は、俺はこの試合を降参する」
シオンの圧倒的な展開で幕を閉じたのだ