炎の龍
(マスター、魔力の吸引の確認しました)
リングに上がって、準備をしていると、唐突にシスがそんなことを言ってきた
(魔力の吸収?それって俺の?)
(はい、現在、吸収の魔石を使った魔力吸収をリングの端の二か所で行われています)
視力を上げる魔法を使いリングの端の陰を見ると、
あ、いた
そこには、輝く魔石を必死に隠しながら、陰に身を隠している男がいた、リングの反対を見ても、おんなじような奴がいる
(吸収の魔石を使った魔法吸収には、かなりの準備が必要です、少なくとも半日はかかり、魔石を起動する二人が必要になります)
えー、昨日から準備してて、対戦相手でもない二人が俺に危害を加えるって、、完全に反則じゃねえか
フリルの方を見ると、時間稼ぎをしているのか、準備体操をしたり観客に手を振ったりしていた
いや、ごまかすのへたか!!
子供でももっと上手くやるぞ・・・
まあ、いくら時間稼いでも俺の魔力は減らないんだけど
そう思うと、がんばって俺の魔力が減るのを待っているフリルが健気に見えてきた
長い準備運動が終わりようやくフリルは位置につく、それに合わせて実況が声を上げ始める
そして
「バトル~スタート!!」
一回戦が始まった途端、フリルはこれまた長い詠唱を頑張って俺に光の玉を撃ってくる
(マスター、ここは任せてください)
遅い魔法だったので避けようと思ったが、シスがそういうので任せることにした
(マジックバリア)
シスがそう唱えると、俺の体に薄い膜ができる、やがて、光の玉が俺に衝突する
しかし、俺には全くダメージは無かった
あれ?マジックバリアってもっと大きかったような・・・
俺がよく使っていたマジックバリアは、俺三人分を覆うほどの大きさをしていたはずだが
(はい、相手にどんな魔法を使ったのか極力知られたくありませんので、大きさを小さくし、体に巻き付け、代わりに強度を高くして発動しました)
・・は?シスってそんなことも出来んの?あれ?だとしたら俺の立場って
(・・本当にシスが相棒でよかったよ)
(あ、相棒・・・ですか?)
シスは少し驚いたように言う
(ああ、ごめんごめん、シスって人間みたいに話すし、いつも俺のこと助けてくれるからさ、相棒みたいだなあって思ってたんだ、いやだったら謝るよ)
シスは少し黙った後、
(す、すいません、マスター・・・嬉しすぎて何を言えばいいのか分かりません)
(はは、そりゃよかったよ、これからもよろしくな、相棒)
(はい!!)
シスとの距離が縮まった気がした
おっと、そういえば今は対戦中だったな
フリルの方を見ると、嬉しそうに大笑いしながらあっけないだの仮面の騎士を倒しただの言って騒いでいた
なんだあいつ、せっかく健気に頑張る奴だと思ってたのに(反則だけど)
さすがにちょっとイラッとしたので、少し教育してやることにした
砂煙が消え、俺の姿がフリルに見え始めた時
「あのー騒いでるとこ悪いんだが」
フリルはこの世のものではないものを見るような目で俺を見ている
「俺の魔力奪っても無駄だぞ?俺、魔力無限だから」
俺の全身が完全に現れると、
「なんとおおお!あれだけの攻撃を受けても仮面の騎士、全くダメージがないいいい!!」
一瞬、本当にやられたと思った者もいるのか、実況の言葉で会場はかなり盛り上がる、
いや、あれだけの攻撃って・・・あんなのファイアインパクトより弱いんだが・・・
「な、、、なぜ、確かに魔力は、、、」
フリルは隠す気が無いのかってほど、リングの端を見る
いや、分かりやすすぎだろ
「魔力を奪ったのになんで、あの攻撃を防げたかって?」
「な!?」
フリルはなんでばれたんだ!?という顔をしている
確かにこの魔力吸収には俺に気付かれないような偽装がされているようだ、それも、半日はかかるやつがな、
「こっちにも、そういうのにめちゃくちゃ詳しい奴がいるからな」
そもそも、お前の態度でバレバレだ、
さて、教えてやろう、仮面の騎士にはそんな小細工通用しないことを。
『フレイムドラゴン』
俺の五メートルあたりが、地面からメラメラとでる炎に包まれる、その炎は大きさを増し、渦を描くように頭上に集まっていく、一瞬で俺の大きさの三倍ほどになると、その炎の塊から音をたてながら、真上に
柱のように一本の炎が伸び、やがて、それはある形の作る
それは龍だ
グオオオオオオ!!!
燃え盛る炎が、龍の叫びのように音を立てている、龍はゆらゆらとした炎のひげをもち、大空をうごめいている、日本風の龍で、大きさは会場を覆うほどだ
「なんだこの魔法はああああ!!!!?????それに、あの魔法の熱で会場の温度がかなら上がってしまいましたあ!とても暑いです!!」
おっと、ちょっとやりすぎたかな
俺は気持ち龍の大きさを小さくする
「は、、、なんで、、魔法が使える?、、、それになんだこの魔法は、、、しかも無詠唱で、、」
フリルは尻餅をつき、体全体のガクガク震わせている
「だから言ったろ?俺の魔力は無限だって、それに、この魔法はお前じゃ絶対知らないし、なんで無詠唱なのかもわからねえよ」
「魔力がむ、無限?何を馬鹿なことを・・・」
本当のこと言ったんだけどなあ、まあ信じないならそれでいいや
俺は、龍を操作して、リングの陰に隠れた二人のもとに突っ込ませる
(死んじゃうからあいつらをマジックバリアで守ってくれ)
(了解しました。)
「なにい!!??」
「なんじゃこりゃあああ!?」
という感じで二人を龍でくわえてこっちに持ってくる
そして、そいつらをフリルのもので離す、それを見たフリルは
「き、貴様らばれるなと言ったろ!?」
「「いや、あんなの無理でしょう!?」」
二人の声が一致した
「じゃあそろそろ終わらせるぞ?十分反省しやがれ」
龍を天空から一気に落とす
ズガアアアアアン!!という音がして、圧倒的な熱の塊がフリルたちに落下する
バリアもはったし、手加減もしたから上手くいくといいんだが
砂煙がおさまり、倒れてフリル達の姿があらわになる
「おっとおおおお!これはフリル選手!生まれたままの姿だあああ!!それに、あの二人はいったい何ものなんだああ!?」
作戦成功、見事、フリルを気絶させ服だけを消し飛ばせたみたいだ
ふふふ、反則をした報いだ
そして、
「フリル選手!気絶を確認!よって勝者、仮面の騎士いい!!」
ウオー!!!会場は大盛り上がりだ
こうして一回戦は終了した。
*
その後、フリルの不正が発覚、フリルの貴族としての立場は底辺になったらしい
まあ、自業自得だな
俺は着替えをすませて、外に出る、
ようし、今日はイカ焼きでも買って、祭りをたのしむぞお!
その時、ふと、対戦ボードが目に入った
キャシーvsグンダ
・・・一応見るか、
俺はイカ焼きを買って会場に向かった。