仮面の店主
会場は、息も聞こえそうなほどに静まっていた、砂煙が消え去ると、先ほどまで息巻いていた出場者たちは
地面に伏したまま動かない。
さてさて、どんな奴が生き残ったかな、
ちょうど全員がこっちを驚愕の表情で見てくれているので見やすい。
まずは、一番近い金髪の男、確か名前はフリルだ
こいつは城に行った時絡んできた貴族か、自分ももちろん参加するって言ってたけど、
なるほど、腕には自信があるって事か、でも・・・
貴族の周りには、半透明な膜が出来ていて、それが金髪の貴族を丸く囲んでいる、
おそらく防御系のエクストラスキルだろう、
本人は、口を開けて動かなくなっていたが、俺が見ていることに気付き、ハッとわれに返り、直ぐに膜を消した
そして、恨めしそうにこっちを睨んでくる
まあ、トーナメント前に能力は知られたくなかっただろうな
そして、黒髪の大男
なんか見たことがあると思ってシスに聞いてみると、どうやら、あの夜に俺と一緒にミノタウロスと戦ってくれていた人らしい、
男は、少し痺れたのか、片目を閉じて苦しそうな表情をして片膝をついている
しかし、その眼は確かに俺を警戒して先を見据えていた
わざとスキルを使わなかったな、
俺への警戒からだろうか、それともこの攻撃を完全に耐えきれると確信していたのだうか
どちらにせよ、あいつは強いな
そいえば勇者は・・・
寝てました。
たまにピクピクしてるから完全に意識を失ったわけでは無いはずだ
勇者のエクストラスキルがあれば耐えきれない攻撃ではないはずだが、
まさかここまで本人自は弱いとは・・・
そして俺は見つけてしまったのである・・・
あのバケモノ(仮面ショップの店主)を
ぎゃあああああ!!!
なんで、なんで、なぜ!?ティアの結婚相手だぞ!?あいつはえっと、あ、一応男か
じゃなくて!!あいつっておかまだろ!?男にしか興味ないはずだろ!?
しかもあいつ全然魔法効いてねえし!!
それに・・・
まずい、奴は俺の仮面を外した時の姿を見ている。
もし、ここであいつに喋られたら、この作戦はすべて失敗になる、
俺は焦る心を落ち着かせるために、両手を広げて大きく深呼吸する
それを見て何人かが「ひ!!」と警戒していた、あ、なんかごめん
落ち着け、あいつは仮面屋の店主、なにも仮面を売ったのは俺だけじゃないはずだ
あの日だって、俺以外にもあの仮面を買った奴がいるかもしれない
そう考えると、だんだん落ち着いてきた
よし!こういう時は知らん顔するに限るな!
俺は右を見たり左を見たり口笛を吹きながら、小石を蹴ったりする、
様子が気になってふと店主を見る
店主はニコニコしながらこっちを見いて、俺の視線に気が付くと、熱烈なウインクを送ってく来た、
ひえええええええ!!!!
絶対に覚えていらっしゃるうううう!!
恐怖にやられ、固まっていると、ようやくラウスが出てきた
「よもやこんな展開になろうとはな」
ラウスがそういった途端、観客も我に返ったかのように騒ぎ出すし、会場が歓声の嵐に包まれる
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
「なんだよいまのおおおお!!!」
「すげえ!一体何がおきたか分かんねえけどとにかくすげえ!!」
「やったのって仮面の騎士だよな!?」
「まじかよ・・強い強いとは思っていたけどここまでかよ」
「反則だろ・・・」
あまりの出来事に観客は興奮を隠しきれないようだ、飛び上がって立つ者もいれば、はしゃぎすぎて
リングに落ちそうになっている者もいる
あ、つまみだされた
他の参加者も、ようやく状況を把握したのか、警戒態勢に入っていた
店主は相変わらずこっちをガン見しているが
ラウスは少し顔をしかめて悩んだ後、
「トーナメントの予選をいろいろと用意していたんだがな・・・まあいいだろう、これをもって、
予選を終了とする!トーナメントは明日に行う、残ったものはこのカードを受け取り、明日同じ時間に来ること、・・・それでは、解散!!」
会場は最後にワアーー!!という歓声に包まれ、予選の日は終了した。
:
その日の夜の酒場にて
店の中は今日の予選のことで大盛り上がりだ、見知らぬ人でも片手に酒をもち今日のことについて
語り合っている
「いやー俺は確信してたね、仮面の騎士はとんでもねえ奴だって」
男が自慢に言うと、横に座っていた男が
「うそつけ!お前この前まで、「仮面の騎士なんて信じねえぞ!」とか抜かしてたじゃねえか!!」
「「「わはははははは!!」」」
店の客全員せ笑っている、店員の人も忙しそうだ、
そんなこんなで、この酒場で俺はある男と待ち合わせをしている、
すると、坊主に筋肉マッチョの厚化粧をした大男が入ってきた、
「あら、早いわねえもしかして私と会うのが待ち遠しかったのかしらあん?」
そう、待っていたというのはこの男、
仮面ショップの店主である。
俺はバトルロイヤルが終わった後、会場から出てきたこいつに近寄り声をかけた
気配を感じとったのか、いつの間にか背後に周り俺の首をロックされたが、なんとか事情を説明し
今日会ってくれることになった、もちろん、俺の正体に関することの話をするためだ
「ただでさえ、目立つんだから早く座れよ」
「あら、いけずねえ」
店主は、椅子を引き、どっしりと椅子に座る
「それで?なにかしら、もしかして夜のお誘い?うふふ、それなら大歓迎だけど」
「ちげえよ!!」
何を言い出すんだ、それもマジ顔で・・・
俺は、はあ、とため息をつく
「俺の正体には気づいてるんだよな?」
店主はにんまりと笑うと、
「あの時仮面を買っていった子ね、あの時から不思議な感じがビンビンだったけど、うふふ、今では有名人さんねえ」
くそ、やっぱり覚えてたかー・・・
俺は手をテーブルに乗せ頭を下げる
「頼む、このことは言わないでくれ!」
なにを要求されるか分からないがこれを言われたら、俺が騎士団員十いうことがばれて、すべての作戦が終わる、覚悟を決めて言い放つ
「別に言わないわよ」
「え?」
驚いて顔を上げる
「別に言わなくても、私に利益はあるもの、うふふ、あなたが目立って以来、あの仮面に似たものが飛ぶように売れるのよ~」
どうやら、店主は俺の正体を言わないでくれるようだ
俺はもう一度頭を下げて
「ありがとう!」
「いいのよ、うふふ、あなたと私だけのヒ・ミ・ツね♡」
ゾワアアア・・・
その後、俺はこの店主と酒を飲んだりしてしばらく喋っていた
この店主・・・名前をキャシーというらしいが、話すとなかなか面白かった、
こっちが話すと、その話をちゃんと聞きしっかりと意見を述べてくれるのだ、
こういうのを、話上手っていうんだろうな
「てか、キャシーさん、なんでティアの結婚を決める大会にあんたがでてるんだ?まさか女にも興味
あるとか・・・」
キャシーはぷんぷんと頬を膨らませる
おええー・・・
「そんなんじゃないわよ、ラウス・・・つまり王様に頼まれたのよ、今回の大会に出て、優勝して、
結婚の話を断ってくれってね」
なるほど、ラウスのほうも布石をうってたってことか・・・
「お金もかなりもらえるしね、それに、お姫様とお友達になれるってそうそうないことじゃない?」
よし、今度ティアに気を付けるように言っておこう
「なるほどな、いろいろ教えてくれてありがとなキャシーさん」
「キャシーって呼ばないと掘るわよ?」
「・・・」
「掘るわよ?」
「キャシー・・・」
その夜は吐き気がひどかったので直ぐに寝ました