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一日につき一揉みでいかがすか?

体の節々が痛い。

ここはどこだろうか?

見上げる天井は白を基調としてロココ調。普段あまりお目にかかるようなものではないが、どこか懐かしさを感じていた。

「どれだけ寝れば気が済むんじゃお主は」

ぴょんと俺の腹に乗り、黒猫が言った。


ああ、そういえばそうだった。俺の体がめり込んでいる時に満面の笑みを浮かべていた猫だ。

「お前はなんなんだよ。喋る猫とかあざといんだよ」

「ぬ、相変わらず失礼な奴じゃな」

相変わらず? どうも聞き覚えのある喋り方のような。

「その顔はわしのことを忘れておるな?」

「そ、そんなこと……ないよ」

誰だよてめぇ。

「馬鹿もんが」

左の甲から紋章が浮かびあがる。ああ、この無礼な喋り方は、

「シギル・イリュージョン」

「ファンディー教授」

「遅いんじゃ馬鹿者」

猫が、茶髪がかったミディアムヘアでナイスバディなお姉さんに変化した。

やばい、男のあれが反応してしまっている。

ナイスバディなお姉さんが馬乗りとか何のご褒美……

いや、騙されるな俺!

こいつは

「くそばばぁ」

ごきゅ

首から聞こえてはいけない音がした。

「誰がばばぁじゃ! こんなにも美しい女性になにを言うのじゃ!」

ぬけぬけと言いやがる。

「シギルで自分を偽るのはやめましょうよ。噂では教授の年齢は腕はその方向には曲がりません!!」

「偽っているのではないぞ!? これは化粧みたいなもんじゃ!」

「もはや別人じゃないので頸動脈潰すのやめて!」


閑話休題


「はぁはぁ、落ち着きましょう」

「あ、ああ。そうじゃな」

本に囲まれた部屋の真ん中に、机を挟んで座る。


「で、お前のあのシギルはなんじゃ?」

「知らん」

「パンイチの妖精とはなんのことじゃ?」

「し、しらないね」

「仕事やめてから何してた?」

「……知りたくない」

ぶすっ

「目がぁぁぁ!」

「いい加減に目を覚まさんか馬鹿者!」

覚ますべき両目が燃えるように熱い。


床に両膝をつき俺は説明する。

家から追い出され銀行に向かっていたこと、偶然強盗に遭遇し小さな女の子を救おうとしたら、タイムリープみたいな状態であったこと。

「ふむ、時間が巻き戻るシギルなど聞いたことはないんじゃが」

顎に手を当てファンディー教授が言う。

「小さな女の子を守りたい気持ちが新たなシギルを作り出したんですよ」

「妖精さんはそんなに小さな女の子が好きなのか?」

そんな目でみないで!

「確かに、シギルの力は思いの力に比例して強くなるものじゃし、強い思いが新たなシギルを与えるという話も聞いたことがあるのぅ」

「正義の思いが暴走しちゃいましたかね?」

「単にロリコンじゃろ」

「違います! 僕はロリコンじゃないです。ロリコンもいけるだけで、巨乳のお姉さんの方が好きです!」

「ほう、それなら、わしの胸を揉んでいいから、お前のシギルを研究させてくれぬか?」

「黙ればば目がぁぁぁぁ!」


「コホン。それでわしの研究に協力する気は?」

「毛頭ありません」

「お前の頭に毛がないのはわかっておる」

「まだありますよ!?」

「そんなことより」

「ありますよね! まだ大丈夫ですよね」

「お主のシギルは非常に珍しいのじゃ」

全然取り合ってくれない。

この人は昔からそういう人だ。

人の話を全然聞かないし、研究だけを生きがいに生きているような奴だ。

「僕は忙しいんです」

レスバトルしたり、オナニーしたり、アニメみあたりやらなきゃいけないことが目白押しだ。

「何の得があって僕が手伝いを」

「協力してくれたらエリナなの胸を揉ましてやろう」

「くわしく!!」

シギル解明のために力を尽くすのは人として当然のことだ。

「よかろう」

鷹揚に頷く教授。時間がもったいない早くしてくれ。

「お主の話とわしの目にした状況からすると、お主のシギルはリバイバルじゃ」

「そんなことより胸を揉む話を!」

「お主が死ぬと時間が5秒前に戻る」

「胸の話をはやく!!」

「そしてその時の記憶を持っているのはお主を含め、特殊な力を持った一部の人間だけじゃ」

「おっぱぐぎゃ」

アイアンクローはやめて。爪がめり込んでる。

「人の話を少しは聞いてくれるかのぅ?」

手を離してくれないと頷きたくても頷けない。


「げほっ、俺の力は死ぬと5秒時を戻す力だと」

手で顔に触れると爪の跡がくっきりとついていることがわかる。

「そうじゃ」

「それで、リバイバル前の記憶があるのは僕と一部に人間だけだと?」

「そうじゃ」

教授は腕を組みソッポを向いてこたえる。

「怒ってます?」

「そうじゃ」

「おっぱい揉んでいい?」

「殺すぞ!」

ちゃんと話を聞いてくれているようで何より。


「具体的に一部の人間って誰のことなんですか?」

「エリナのように瞬間記憶を持つ人間じゃな」

「ファンディー教授は?」

賢い人なのは知っているが、瞬間記憶があるとは聞いたことがない。

「わしはおそらく、猫の姿をしていたからじゃな。動物と人間では記憶のメカ二ズムが違うのかもしれん」

ふむふむ。まあ、よくわからないけど、

「そろそろ胸の話を」

「お主はそればかりじゃのぉ」

溜息交じりに教授が呟く。そんな取引条件を出すこの人も大概だと思うが。

「一時間協力につき一揉みでどうですか?」

「いや、一日につき一揉みじゃの」

「せめて、5いや3揉みお願いします!」

「エリナの胸はそんなに安くないんじゃ!」

「でしたら2揉みでもいいです!」

「2……よかろう。契約成立じゃ」

ガシッと手を交わす。

白熱した交渉だった。

「ふぅ~ん。何だか盛り上がってますね」

地獄の底から声が聞こえた。

「な、何故ここにいるのじゃエリナ?」

「何故って、ファンディー教授がクラスのレポートを持って来いとおっしゃったのですよ?」

顔は笑っているが目は笑ってない。

「ち、違うんじゃエリナ。こいつを協力させるために言っただけで、実際に揉ませる気はないのじゃ」

「な、てめぇ騙したな!」

「やかましい。騙される奴が悪いんじゃ!」

「妖精の心を弄ぶなんて!」

「童貞じゃろうが!」

こいつは根っからのクズらしい。

「このクズがぁ!」

「お主じゃろうが!」

「二人共よ」

「「へっ」」

「シギル・グラビティ」

めり込んでるめりこんでる!!  一日に二回もめり込んでる!!!

「お願いやめて!! 一日につき一揉みでいいからぁぁぁぁ!!」

「揉ませるわけあるかぁぁぁぁぁ!!」

「わしはなにもゆうてないのにぃぃぃぃぃ!!」

セカンドキスの味は高級なコンクリートの味がした。


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