表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

転生してもニートだった


可愛い女の子を守って死ぬ。たぶん理想的な死に方だったと思う。

この10年間、俺は何もしてこなかった。

画面の向こう側の人をディスり、オナるだけの人生。

そんな俺がこんな格好よく死ねたんだ。美女エルフ姉妹の頭の中で生き続けられるなら、こんなクソみたいな人生でも悪くなかった気がしてきた。

 

 何だか眩しい。騒がしい

 お迎えの時間のようだ。

 願わくば次は異世界に転生してチート能力でハーレムを作りたいな。


 

 「くそぉぉぉぉ! 捕まるぐらいならぁぁぁぁぁ!」

 不快な男の声で目が覚める。

 何が起きたかよく分からないが異世界ではないこと、白銀髪のロリエルフがピンチなことは分かる。

 ここが転生先なのか夢なのか、さっきが夢だったのかなんてわからない。


 でも、俺は、この子の命を助けたい。

 さっきのが夢だというならば、それは正夢であってほしい。


火の矢は俺の脳天を焼く。

この形容しがたい痛みは間違いなく現実だった。


「くそぉぉぉぉ! 捕まるぐらいならぁぁぁぁぁ!」 

「くそぉぉおおおぉぉ!!」

意味わかんねぇ!


それでも闇雲に走った。

何度死んだって、この子を救いたい気持ちに嘘はない。異世界転生したい気持ちにも一寸の嘘はない。


接近する火の矢は間違いなく、また俺の脳天をぶち抜くだろう。

怖い。

文字通り死ぬほど痛い。熱い。

でも、

「ま、に、あ、ええぇぇぇええ!」

俺は飛び込む。何度だって。


「よくやった。お前が作った2回の5秒が小さな命を救ったんじゃ」

赤いチョーカーを首に巻いた黒猫が拳で火の矢を消し飛ばした。




「もう2・3発いっとくとするかのぅ」

腫れるような顔面の痛みで目を覚ますと猫が振りかぶっていた。


「やめてぇ」←(寝起きで裏返った声)

バチン←(猫パンチの音)

ボタッ←(鼻から血が滴る音)

ガバッ←(猫が振りかぶる音)

「起きます、起きてます!」


ガバッ(体を起こす音)

ボキッ(猫パンチ)

ダラダラ(滝のような血)


「何で?」

「すまん、あまりにも気持ち悪かったんじゃ、……顔が」

 世界一無礼な猫だと思った。

 「って、そんなことより何がどうなってんだよ」

 「馬鹿もんが。まだ立てるほど体力回復しておらん……言わんこっちゃない」

 あれ? 足に力が入らない。

 「お前は2回も死んだのだぞ? あまり無茶してくれるな」

 夢じゃないのか。

 寝起きのせいか頭が混乱していて何も考えられない。

 大きく深呼吸をし目を閉じる。

 こういう時は冷静になることが大事だよね。

 

 バチン

 顔面の痛みで眠気と共に冷静さが吹き飛んだ。

「なにすんだよクソ猫!!」

「寝そうだったから起こしてやったんじゃ。感謝しろ馬鹿者が」

「寝てねぇよ! 冷静に考えようと……」

手に温もりを感じる。

そっと後ろを振り返ると、膝をついた巨乳エルフが俺の手を握っていた。


「あ、あの」

ウルッとした青い目とほんのり紅色に染まった頬に

「あの、ありがとうございました」

艶めかしい唇から絞り出される甘美な声。

「と、とととうぜんのことをしたまでで」

くそ、だせぇ。『当然のことをしたまでさ。それより君に怪我はないかい?』というつもりだったのに、なんだこれは。


「セリカもお礼を言いなさい」

「はぁい」

遠くから無邪気な声が聞こえた。どうやらあの子は無事だったらしい。

よかった。ホントによかった。

「ようせいのおじさん。さっきはありがとう」

よくなかった。

「妖精?」

「うん。このおじさんね、きゅうにセリカの前にでてきたんだよ」

「ふぅ~ん?」

巨乳エルフの手が離れる。名残惜しいがこの手で後でオナニーするとして今は逃げ

「小っちゃい子がだいすきなんだって」

肩が潰れるように痛い。

「違う誤解なんだ。信じて肩から手を離そう巨乳エルフちゃん!!」

「巨乳エルフ?」

「ち、ちがうちがう。ほらえっと」

「ほんとにすごいんだよ。おぱんつ一枚でね」

「ロリエルフちゃんやめて。それ以上言ったら肩が潰れたように痛いぃぃぃ」

「ロリエルフ?」

肩が痛すぎて肩の痛みを感じないんだけど!? これやばいんじゃね?


(お主は相変わらず馬鹿じゃなぁ)

猫がそっと耳打ちしてきた。

(うるせぇよ。そんなこと言っている暇あったら助けてくれ)

(はぁ。エリナを褒めてやれ)

(エリナ?)

(お前の肩を潰してる娘の名じゃ。この娘は男の免疫がないからの)

(褒めれば惚れると)

なるほど、女の子は褒められることが好きと聞くし、ここで上手くいけば……

妄想中 ← 自己規制


(いや、惚れはせんと思うんじゃが……聞いておるか?)


よし、俺は今日妖精を卒業する。

肩に乗った手を払いのけ言い放つ。

「確かに俺はロリが好きだ。エルフが好きだ。でも、巨乳エルフが一番……」

「シギル・グラビティ」


全身が床にめり込んだところまでは覚えている。

ファーストキスは土の味がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ