離別
「化石? それならそこにあるぜ」
少年が指さした先にあったのは、山積みにされた化石であった。
「ちょ、乱雑に扱い過ぎじゃない?」
「盗んで来たまでは良かったんだけど、翼しか組み立てられなかったんだ。 下手なパズルより難しいよ」
それで一部しかオークションに出されてなかったのか、とルビーは納得した。
「これもらってもいい?」
「いいんじゃないかな。 どうせ組み立てられないし、何より邪魔だよね」
こうして、ルビーは化石を譲ってもらった。
まず富豪と連絡を取って化石を買い取ってくれるかを相談した。
ライオンの土地が余裕で買えるほどの額を提示されたので、それを承諾。
少年の協力を得て、トラックに化石を積んで富豪の家まで運び出した。
地下にそれを持って行き、ルビーの生物の骨格の知識を頼りにそれを組み立ていくと、竜の化石が正しい姿に組み上がった。
「あとは君に渡した骨の一部をはめれば完成だな」
富豪から借りていた骨は研究室に置きっぱなしである。
ルビーは一旦研究室に戻ることになった。
「ただいま~」
大学の研究室に戻り、鍵を開けて中に入る。
「ウォッシュ、土産のクッキー買ってきたから一緒にたべ…… あれ?」
そこにはウォッシュの姿はなかった。
しかも……
「微かに血の匂いがする……」
ルビーは急いで薬品を保管している研究室に向かい、ルミノール液を借りてきた。
それをスプレーの中に入れ、自室の床面に吹きかけた。
すると、放射状に飛び散った血液が鮮明に浮き上がってきた。
「そんな……」
ルビーは自分の予感が的中しないことを祈りつつ、血の跡を辿った。
校舎の外にまでそれは続いており、土の上で途切れた。
土を掘り返し、間もなくウォッシュの亡骸が姿を現した。
「待ってよ、嘘でしょ……」
ウォッシュは頭を銃で撃ち抜かれたようだった。
ルビーは涙目でその亡骸を抱き留めた。
ルビーは動物と喋れる能力のせいで、子供のころは友達がいなかった。
そんなある日、動物園で知り合ったのがアライグマのウォッシュであり、ウォッシュはルビーのために動物園を脱走してきたのだった。
「何でこんなことを…… まさか!」
ルビーは自室に戻ってあるものを探した。
しかし、それは見つからなかった。
「竜の化石がない……」




