一番大事なもの
「私の大事なもの……」
ルビーがすぐに思いついたのは、殺されてしまったウォッシュのことであった。
ケンカは日常茶飯事、うっとうしく思うこともあった。
それでもウォッシュはルビーにとって一番大事なものだった。
「私に大事なものなんてないわ。 ブランドのバッグにだって興味はないし、唯一の友達もこの前無くしてしまった」
「……そのかまどには、あなたの持っているものなら何でも入ります。 視覚や嗅覚、聴覚、味覚、痛覚といったものまで」
「それは…… 生きていく上で欠かせないものじゃない?」
「だから大事なんです。 そして、あなたにとって視覚が最も大事になります。 何故だと思いますか?」
単純に目が見えなくなれば、生活はかなり困難になるだろう。
しかし、先天的に目が見えない人だって、何とか生きていけるのだ。
なぜルビーにとってそれはまずいのか。
「……私に友達がいないから」
「その通りです。 友達がいれば、その人が自分の目の代わりになってくれます」
「……」
もし視覚を失えば、即座に暗闇に落とされ、自分を助けてくれる光もない。
「それを失ったら、私は生きていけないわ」
「……必殺技は最終手段です。 使わないにこしたことは無いでしょう」
複雑な思いの中、ルビーは研究所を後にした。
ルビーは燃料になる木を研究所の近くの森から拾い集めた。
「はぁ、いちいちこんなことしなきゃいけないわけ?」
30分程度歩き回って、胸に入るサイズの枝を拾い集めると、それを放り込んだ。
「後は、2号の居場所ね」
ルビーはスマホを取り出し、ワンセグでニュースの生放送を見る。
水球は現在、トッポギ市を破壊しながら移動しているようだった。
「マズいわね……」
ルビーは翼を広げ、トッポギ市に向かうべく羽ばたいた。
ルビーは上空から水球を確認した。
「やっぱり、メガフレアを使うしかないかしら……」
水球の中で戦ったところで勝ち目は薄い。
それは1号が証明してくれた。
少しためらいつつも、ルビーは胸の蓋を開けた。
「視覚を犠牲にしないと必殺技が使えないとか、どんだけ燃費悪いのよ……」
それでも、2号を止めれるのは自分だけであり、放置すれば更に被害は拡大する。
「……考古学者が何でこんなことしなきゃいけないのよ」
しかし、選ばれたのは自分なのだ。
しゃーない。
ルビーは胸の中で視覚を犠牲にメガフレアを撃ちたい、と念じた。
すると、まばゆい光が眼前に起こり、その後、ルビーの視覚は失われた。




