アメシスサイド 1
アメシスが気がついた時には夜がふけており、かなりの時間地面で伸びていたようだった。
「吾輩は何をされたのだ…… むっ!?」
アメシスは自分の愛車が無くなっていることに気がついた。
「何という失態だ……」
今日の所は電車で帰るしか無い、そう思った時、キーンという風切り音がした。
その音が自分に迫ってくると、頭上でピタリと止まり、見上げた先には竜がいた。
「完成したのか!」
しかしなぜこんな所に?
「グルル……」
何やら目が血走っている。
アメシスは、これは自分に好意的な態度ではないな、と直感し、即座に踵を返して校舎に駆けだした。
案の定、竜は咆哮をあげてこちらに迫ってきた。
校舎まではおよそ20メーターはある。
「間に合わんな……」
アメシスは一気に方向転換し、竜の足元に滑り込んだ。
竜の方も加速した直後のため、ブレーキが効かず、そのまま前方に流れていった。
その隙に車の真下に潜り込んで自分の部下に携帯をかける。
ところが、携帯は一向に繋がらない。
「裏切られたか……」
アメシスは最初に学部長を疑った。
自分を殺せば、いよいよ手柄を独り占めできるだろう。
「警察…… いや、ダメだ」
警察にかければ、竜を野放しにしたことを問われる。
そうなれば、研究の功績が評価されることはないだろう。
「さて、どうするか……」
幸い、周りは暗く、自分の姿は闇に紛れている。
竜も車の真下に自分がいることは分かっているようだが、正確な位置までは掴めていないようで、見当違いの場所を探している。
しかし、止まっている車は数台で、あと1分とかからず見つかるだろう。
「機種変更したばかりだったが、やむを得んな」
アメシスはマナーモードを解除し、音量マックスでメディアプレーヤーを起動すると、即座に草むらの中に投げ込んだ。
「グルアッ!」
音に反応して竜がそちらに向かう。
「少し脳みそが足りないようだな」
アメシスは、音を立てないようにゆっくり移動を開始した。




