遭遇
その日、ルビーが研究室でソワソワしながら待っていると、宅配の男がやって来た。
小包の中身は、先日注文したスタンガンである。
夕方、ルビーはそれを持ってアメシスの車の近くに隠れていた。
「ふぅ、やるしかないわ……」
手には汗が滲んでいた。
今からやることは紛れもなく犯罪であったが、竜の復活を阻止しなければならない、という使命にルビーは駆られていた。
しばらく待っていると、アメシスがやって来た。
背後から忍び足で近づき、スタンガンの電源を入れる。
そして……
「グギャアアアアアアッ」
ドサリ、とアメシスの体が地面に崩れた。
「悪いわね……」
アメシスの体をまさぐり、鍵を探す。
「あった!」
鍵は上着のポケットに入っており、ルビーはそれを使って車の中に乗り込んだ。
エンジンをかけ、早速カーナビに登録されている地点を探した。
「自宅、学校…… 秘密の研究所? 絶対これよね……」
ルビーは秘密の研究所を選択し、そのまま車を発進させた。
夜になり、ようやく目的地付近までやって来た。
「ここから歩いて行かないといけないみたいね」
目的地は森の中にあり、車道は途切れていた。
スマホのライトで照らして中に踏み入る。
「歩いてどれくらいかかるのかしら……」
不安を抱きつつも、ルビーは歩き始めた。
「あーあ、泥だらけになっちゃった……」
ルビーは一旦切り株に腰を下ろした。
ヒールの踵が木の根に引っかかり、転んでしまったためだ。
「歩けるかな……」
しかし、転倒の際足を捻ってしまったらしく、立ち上がれなかった。
「スタンガンなんか使ったから、罰が当たったんだわ……」
しばらく落ち込んでいると、キーン、というセスナの風切り音のようなものが聞こえてきた。
そして、その音を出していたと思われる物体を見て、ルビーは息を飲んだ。
「うそ……」
「ルビーちゃん、見ーつけた」
その正体は、研究所から抜け出してきた3匹の竜の内の1匹である。