竜の語り
「ねぇ、好奇心から質問してもいい?」
(なんやねん、スリーサイズは教えへんで)
「あなたは30万年前の化石なんだけど、何で絶滅しちゃったの?」
しばらくの沈黙の後、骨の竜は語り始めた。
自分は100年もの間、人間と戦い続けていた。
いくら殺しても、大軍を起こしてやって来る人間との争いに消耗し、とうとう王である自分が討ち取られてしまったとのことだった。
(お前らしつこいし、多過ぎんねん)
「そうなんだ……」
やはり、ルビーの想像した通り、地上の覇権争いで敗れたのだ。
(ちゃんとした体があったら、今度こそお前らぶっ飛ばしてやるんやけどなぁ)
「ちゃんとした体……」
アメシスの研究のことが脳裏をよぎった。
この竜のクローンが誕生してしまったら、地上で暴れ回る危険性があるのではないか?
「トルマさん、ちょっといいですか?」
ルビーの懸念をトルマに説明した。
「そんなことが可能なのですか?」
「ええ、それで、クローンが誕生する前に研究所を探さないといけません」
「……少し待ってて下さい」
トルマは自室に戻ってあるものを持ってきた。
それは、小型の発信器であった。
「これにはマグネットがついているので、車の背面に取り付けることが出来ます。 これで後を追えば研究所の場所が分かるでしょう」
なんでトルマがそんなものを持っているのかは謎だったが、ルビーは発信器を受け取った。
その足で大学に戻り、アメシスの車の背面に手を突っ込んで発信器を取り付けた。
「これでよし」
ところが、数日経っても家と大学の往復で、全く研究所に向かう気配がなかった。
「……もしかして、私のことを警戒して研究所には向かわず、部下に任せているのかしら」
そうなると、こちらが研究所を探し出すより先に竜のクローンが誕生してしまう。
「……でも竜の化石を届けに一回は行ってるはず。 カーナビの履歴が見れれば……」
カーナビを使っていれば、履歴に場所が残っているハズである。
「もう時間がないわ…… やるしかない」
ルビーは通販でスタンガンを購入した。




