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妄想力は健在でした。

「『8国に現れた8人の魔王は勇者たちによって倒されました。力を使い切った勇者たちが、その後どこに行ったのか誰も知りません。』」

「うん、読むの上手になったね、ヤスミン。」


ヤスミンももう11歳だ。子供向けの『勇者物語』もすらすらと読めるようになった。そこそこ裕福だったうちの村は隣村も吸収して、裕福な町に進化している。3年ちょっとで随分な急成長だ。ヨハナが帰ってきたら驚くだろうな。


「でも、この本の最後おかしいよ?『その後勇者たちは大好きな家族と幸せに暮らしています』なのに。この本、間違ってる~。」

「ああ、それはね、うちだけ変わってるんだよ。」


うちでは、『勇者物語』を子供を寝かしつけるときに話していた。両親はすらすらと話していたから、両親の創作話だと思っていたのに、本があったことに驚いた。うちの『勇者物語』は本より細かいところがあったり、ヤスミンの言うように最後の部分が違っていたりする。


最近、村の時より町になったら情報が多くなってきて、私の想像力も活発になってきてる。でも、これは想像ではないと思うんだ。うちの父がその勇者なんじゃないだろうか。そして母は勇者と常に一緒だったという聖女なんじゃないかな。


話の内容が具体的すぎたし、この前うちの納屋でかなり大きい錆びた剣を見つけた。勇者物語に出てくる勇者が持っていたという大剣にそっくりだった。あと、ヤスミンの制御が難しい大きな力、調整しているうちに私の魔力とは違うことに気付いた。聖女の持つ力なんじゃないかと思う。


勇者と聖女、そういう特別な両親だったから、私とヨハナという異世界転生者が子供になったんじゃないかなと思ってる。何となく聞きづらくて二人にはちゃんと確かめていないんだけど。


あと、多分これは本当に私の想像でしかないと思うけれど、この世界は8つの国でできていて、『一の国』『二ノ国』・・・『八の国』という名前だった。今は数字じゃなく、それぞれ名前がある。私たちが住んでいるのは『アラード』。元は『八の国』らしい。


8つの国。そして8人兄弟の私たち。もしかして、私たちって8つの国にいた魔王の生まれ変わりとか?だから勇者と聖女の間に生まれて管理できるようにされてるとか?なんて考えてしまう。いや、私はちゃんと日本人だったことは覚えているんだけれど。


でも出来過ぎてるのだ。ヤスミンが妹か弟が欲しいと言ったときに、9人目は産まないと言った母。8人であることは決まっているようだった。あと、私たち兄弟の名前だ。


長女:ヒルデ  

長男:フーゴ 

次女:ミーネ  

三女:ヨハナ  

次男:イッカ  

三男:ムラト 

四女:ナナリー 

五女:ヤスミン 


わかってもらえるだろうか?日本語で数を数えた時の『ひぃふぅみぃよぉいつむぅななやぁ』と名前の最初の音が同じなのだ。こじつけ?こじつけなんだろうか。でも気になる。


まあ、いつまでも考えていても仕方ない。


「散歩に行こうか?ヤスミン。」

「行く~!」


町の人たちに挨拶しながら演習場の前まで来た。ケランを倒すために、シミュレーションをしているらしい。指揮を取っているのは弟のイッカだ。前までケランを倒すのは私の仕事だったのだけれど、1年くらい前からイッカ率いる町の自衛団にその仕事を譲っている。



「そう!落とし穴に誘い込むように!!第三班!!」

「ウェルダン!!」「ウェルダン!!」「ウェルダン!!」「ウェルダン!!」


・・・炎の魔法の呪文がウェルダンになってしまっている。何とか呪文を変えてもらいたいのだけれど、私がケランを倒すのを見てきた彼らの炎のイメージは『ウェルダン』で固まってしまっているので、今更『ファイア』と唱えたところで何も出ないんだという。・・・何で私、ウェルダンって言葉を使い続けちゃったんだろう。これって立派な黒歴史。しかも、継承されていく系の・・・(爆)


イッカは姉の私が言うのもなんだが、整った顔立ちに、優しい性格、ことさら女性には優しく、かなりなジェントルマンで、人を集めて動かす天性のリーダー気質だ。そりゃあ、モテる。うちの兄弟の中で一番モテているけれど、自分の恋人以外決して口説かない誠実さだ。


当たり前?ですよね。でも、その当たり前じゃない見本が3つ上にいるもんで。兄のフーゴは、なんていうか、口が上手くて商才はあるし、商人としてはすごく優秀だと思うんだけど。恋人と長続きしない。本人は口説いてないっていうけど、彼女とデートしてる最中に他の女の子を褒めて喜ばしちゃダメだと思うよね。


そんなわけで、8人兄弟のうち、結婚しているのは一番上の姉のヒルデだけ。姉は裁縫が上手で、自分でどんどん服や小物を作ってしまう。今はまだお店で雇われているけれど、そのうち独立するんじゃないかな?


因みにもう一人の弟のムラトも彼女もちだ。魔道具を作る職人の見習いだけど、私のめちゃくちゃな注文を聞いて、結構いろいろ作ってくれる。ムラトはイッカよりも自分の意見を通す方なので、私の心に刺さることも、刺さっていることを承知で言ってくる。


「ミーネ姉ちゃん、そろそろ結婚してくんない?姉ちゃんたちが結婚しないと、イッカ兄が遠慮して結婚しないし、婚約にも踏み切れないんだぜ?俺たちだって婚約くらいしておきたいのに。」


うん、結婚が一人でできるものなら、してあげるけど!?それとまず、フーゴ兄に言ってくれないかな。年の順でしょ?それにまだ私、ぴっちぴちの17歳・・・ここ、田舎だから結婚年齢が低くて、ギリギリ行き遅れじゃない歳なんだ。まだまだ可能性は・・・この町で恋人いないのって本当に一握りなのよね。


あ。悲しくなってきた。残念ながら、私に彼氏はいない・・・くっ、正直に言おう、いたことがない。今まで一度だって、男の子とまともにしゃべったこともない。理由は、多分私が強すぎて、怖いのだろう。自衛団の人たちですら、ケランを倒す助言を一言二言話しただけだ。


13歳のナナリーですら、今の彼氏で二人目だというのに。11歳のヤスミンには告白してくる連中が何人かいるのに。・・・大丈夫、私には食いしん坊で食にしか興味のないヨハナがいる。ましてや双子、私が一度としてモテたことがないんだもの、ヨハナだってモテたことなんてないに違いない。


そう信じていたヨハナが三年半ぶりに帰ってきた。一人の男性と一緒に。

ヨハナが男を連れてきた!?次回をお楽しみに~。

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