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異世界転生をしたんですが。

私には生まれる前の記憶がある。前世の記憶ではなく、生まれ変わるときの記憶があるのだ。


人が行儀よく二列に並んでいて、近くにある矢印が『異世界転生』と書かれていた。なるほど、違う世界に転生するのかなんて思いつつ並んでいると私の番になった。受付のやたらと熱量が有り余ってるようなおじちゃんがその人の適性を判断して、送る世界を決めてくれるらしい。じっと私を見つめたおじちゃんが後ろを振り返り、係の人たちに叫んだ。


「はい!妄想力一丁!!!」

「はい!妄想力一丁!!」

「妄想力一丁!」


繰り返す後ろの係りの人たち。居酒屋か!!っていうか、やめて!!恥ずかしいから妄想力とか叫ばないで!!


私の隣に並んだ女性が気の毒そうな顔で私を見ている。うう、私を見ないでください。せめて想像力って言ってくれればクリエイティブ的なカッコよさがあったんじゃないの?そんなことを考えているとまたおじちゃんが叫んだ。


「はい!食いしん坊一丁!!!」

「はい!食いしん坊一丁!!」

「食いしん坊一丁!」


思わず隣の女性を見てしまった。女性は『せめてグルメって言って!!』と抗議しているが、食いしん坊一丁という声はやまない。今度は私が気の毒そうな顔をする番だった。


カプセルのような物の中に入って転生先を想像する。妄想力、もとい、想像力が評価されたのなら、私は魔法がある世界とかに生まれ変わるのかなあ。そして隣の女性は持ってる知識でグルメ革命とかしちゃう世界なのかな・・・なんてその時は思っていたんだ。





無事に想像通り魔法のある世界に生まれた私ですが、双子の妹が隣の女性だったのは予想外でした。え?グルメ革命するんじゃないの?ここ、魔法の世界だけど?


・・・・・・・・・


私たちはあまり裕福でない村に生まれた。お腹いっぱいまで食べられることはあまりないけれど、空腹に耐えなきゃいけないわけじゃない、そこそこな村。上には姉と兄が二人いて、下には妹一人と弟二人、間に私たち双子、あとお母さんのおなかの中に赤ちゃんがいるので8人兄弟だ。そのうち二人が転生者とか、この世界の転生者の確率ってどれだけあるんだろうか。


そう、同じ転生者の双子の妹が曲者なのだ。私は想像力が豊かだったためか、魔法がチート並みに使える。魔力量は多いしどの属性の魔法でも大概使いこなせる。でも、そんなことがばれたら面倒そうなので、黙っておくつもりだったのだけれど、妹も生まれ変わるときの記憶があるので、私のチート魔法力を見逃さなかった。


「ミーネ、強火にして!」

「火力7くらい?」

「8で!そのまま三分経ったら弱火で!火力2ね!」

「はいはい、2ね。」


お母さんのご飯は普通においしいと思っていたのだけれど、妹、ヨハナには物足りなかったらしい。というか、もっとおいしくなるのにもったいない、ということらしく、もっと繊細な火力調節を求めてきた。もちろん姉のミーネに。おかげで今のところ得意魔法は火属性、というより釜戸の火調整です。最近、コンロの気持ちがわかる気がしてきました。注文多いなとか。


「ミーネ、こっちのお鍋、ちょっと水足してくれる?」

「これくらい?」

「うん、ちょうどいい。」


本当なら、水は井戸から汲んでくるんだけど、私は水魔法も楽に使えるので水を出すなんてお手の物。そしてまたこれがヨハナに便利に使われるという。そんなヨハナの言うことに従っているのは、本当にヨハナの作るものが美味しいからだ。私たちは六歳だけれど、もうキッチンはヨハナが握っている。


「あら、美味しそうな匂いがするわね〜。お医者様にあまり食べ過ぎてはいけませんよって言われているのに、ヨハナのお料理がおいしいから、お母さん、食べ過ぎちゃうのよ。」


お母さんが奥の部屋から出てきた。匂いにつられてしまったらしい。本当はもうちょっと寝ててもらいたかったんだけどなあ。家の雑務が終わったころに。


「お母さん、おはよう。今日もお母さんには栄養たっぷり取ってもらわなきゃ。」

「お母さん、おはよう。お医者さんから勧められてるのは軽い運動なんだから、無茶しちゃダメだよ。」


私たちは同時にそう言った。家事は重労働なんだ。それなのに、お母さんは私たちがまだ手を付けてない家のことをしようとする。だから、先にくぎを刺してみたんだけど。


「うふふ。そうよね、軽く運動のために庭の水まきでもしようかしら。」

「それ、重労働だから!」


庭に水を撒くためにはまず、井戸から水をくまなきゃいけない。井戸は近くないし、そこから庭まで重い水を運ぶなんて賛成できない。しかも何往復するんだよ。


「それは、私がするからいいよ。水は魔法で出せるし、一気に終わらせるよ。」

「あら、そう?じゃあ、何をしようかしら。」

「お母さんは皆を起こしてきてよ。そろそろご飯作り終わるし、熱いうちに食べた方が美味しいからね!」

「じゃあ早くみんなを起こしてこないとね、ヨハナに怒られちゃうわ。」


うん、怒られるよ。比喩じゃない。食いしん坊、もとい、食べることが大好きなヨハナは大切な家族に美味しいものを!と少ない食材で頑張っていて、出来立てを食べてもらうことにこだわっている。


食事が終わった後、身重の母と小さい妹と弟を置いて、それぞれ仕事に出かける。私とヨハナの今日の仕事は畑の水やりだ。庭の水まきは母が動き出さないように、さっさと終わらせた。畑に水を振りまきつつ(ヨハナも細かい調整は苦手だけれど、魔法は使える)、作物が順調に育っているのを見る。


「ねえ、ミーネ、この作物をさ、魔法でパーッと実らせられないの?」

「うーん。できるだろうけど、多分美味しくないと思うよ。ちっちゃな子が魔法で大人に変身するのと同じ。中身が伴わないの。」

「ちぇ~。」


そう、作物は順調に育っているのだ。ではなぜ私たちがお腹いっぱい食べられないのかということになる。実はこの村にはすぐ隣に森があるのだけれど、そこは魔の森と呼ばれていて獰猛な魔獣が生息しているらしい。ただ、この村との間には結界がはってあって、その魔獣もこちらには来られないのだけれど、そう強くない魔獣ならば結界を抜けてきてしまうことがある。


その結界をすり抜けてきた魔獣に人が襲われたことはない。だけど、人間の食べる作物や家畜などを食い荒らすのだ。だから、どんなに豊作でも半分以上魔獣に食べられてしまう。その魔獣が人間を本当に食べないかどうかはわからない。魔獣が作物を食べている隙に村人は逃げ、身を隠してじっと息を殺している。魔獣はお腹が膨れれば森へ帰っていくので、後に残されるのは食い荒らされた畑を見て、悔しく思いながらも、犠牲者が出なかったことに安堵するのだ。


その魔獣、私に倒せないだろうか?一応魔法については自信がある。この村の中でも結構な魔法の使い手じゃないかと思ってる。とはいえ、他の人の魔法なんて父の物しか見たことがないけれど。私は魔法を攻撃として使ったことがないので、どうなるかよくわからないのだ。



ふと、ぐらっと視界が揺れた気がした。めまい?頭を押さえて水のまかれた畑を見る。そこにはさっきまでいなかった、大きな恐竜、トリケラトプスみたいなものがいた。

お読みいただきありがとうございました。



9/27:魔物を魔獣に統一しました。

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