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欲望と願望 ~貴方の欲望と願望を叶えます~

作者: 橘俊輔

NO.1 本職



 瓜二つの自分や相手をコピーが出来たら、貴方はどうしますか?

 願わくばと誰にでもある欲を満たしたいと思うはずです。

 我慢している貴方、ストレス社会にウンザリしている貴方、私が貴方の欲望と願望を叶えさせてあげましょう。


 欲を強く願えば貴方のもとに届くことでしょう。

 この白い便箋の招待状が・・・・・・。


 選ばれし者だけに届く招待状。対象者は老若男女問わず。

 便箋には店の案内やある物を持ってくる指示やルールが書かれています。



 このルールを守ってもらいます。


 ●欲望と願望を叶えるにあたっての条件

 ・権力に利用しない

 ・名誉に利用しない

 ・犯罪に利用しない

 ・トラブルが起きても、お店側は一切関わりません

 ・他人に当店の情報を漏洩しないでください

 ・以下の条件を守らない場合、貴方の身に災いが降りかかるでしょう



 そして、この欲望と願望を叶える支払い方法は・・・・・・。


 金か、

 寿命か


 金を選んだ場合100万の大金を用意してもらうが、1日の利用に付き100万円。

 大金がなければ寿命を選び、1日の利用に付き1年の寿命が縮む。

 そして、このお店の部屋に願いを叶える何種類かの機会や装置で人をコピーし、人々が満たされます。


 すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「早速、今日のお客様が来店してきたので、ご案内しましょう」


「欲望と願望の世界へ・・・・・・」


 バタンと扉が閉まる音がした。

「いらっしゃいませ」

 と、案内人が招く。

「この店が俺の欲望や願望を叶えられるのか?」

 と、背が高いアロハシャツを着た男がせっかちに話す。その男の特徴はポケットに手を突っ込み柄が悪い態度。ウルフみたいな襟足の髪型で、目つきも悪い印象だ。

「そうです、招待状をお持ちで?」

 と、案内人は確認したら、

「これか?」

 と、アロハシャツの男はズボンのポケットから白い便箋を出した。

「この便箋の招待状を他の奴に見せたが、白紙だと言われたが何故だ?」

 と、アロハシャツの男は疑問を案内人にぶつけた。

「他人には見えない心の手紙=欲の手紙ですので、お客様にしか見えません」

 すると、アロハシャツの男は納得した上で、

「で、早速、俺の欲を叶えさせてくれ」

 と、せっかちに話す。

「その前に、貴方の”欲”を聞かせてくれませんか?」

 案内人は険しい顔で聞き返す。

「俺の”欲”は・・・・・・」

 と、言った途端、顔色が変わった。

「瓜二つの自分を働かせ、俺はギャンブルのパチンコで遊ぶ事だ!」

 不気味な顔をしていたアロハシャツの男。

「俺の名は朝川精斗あさかわせいと、派遣社員だ。毎日同じ作業の繰り返しで変化がない工場で勤務。あまりに詰まらんから途中で無断で帰ったことがある。でも、パチンコは台を移動できるんだぜ!いわば俺の”職場”。そうゆう理由だ!」

 アロハシャツの男、朝川はニヤリと笑みを浮かべた。

「なるほど分かりました。では、早速”コピー”を始めましょう」

 と、案内人が言うと、

「コピー!? コピーとは何だ?」

 朝川は驚いた口調で問いかける。

「例の”物”はお持ちになられましたか?」

 と、案内人が険しい顔で話す。

「あっ、あぁ・・・・・・」

 驚きも束の間、案内人の問いかけに返事をし朝川はズボンのポケットから、ゆっくりとチャック付きのビニール袋を取り出した。

「俺の髪の毛だ」

 チャック付きのビニール袋の中には朝川の髪の毛が入っていた。

「この髪の毛から貴方のコピーが出来ます」

えお、案内人が目をつぶり落ち着いて話す。

「な、なに・・・・・・」

 絶句する朝川。

「髪の毛に付いている毛根鞘もうこんしょうにはDNAが含まれています」


 ※毛根鞘もうこんしょうとは・・・・・・毛根周りに付着している透明な固体の事。


「一般の認識では髪の毛にDNA型の監査が出来ると誤解しています。この毛根鞘が付いた髪の毛を、DNA鑑定装置で読み取ります」

 と、案内人は朝川の髪の毛をピンセットでつまみDNA鑑定装置に入れた。すると、もう1つの装置のパソコンが作動し液晶パネルに明かりが付いた。

「パソコンの液晶画面に映し出されるのが、貴方のプロフィールです」

 なんと、液晶画面には朝川の誕生日、年齢、血液型、続柄、身長、体重、好きなもの、嫌いなもの、趣味などのプロフィールが映し出されていた。

「はっ!! な、何故・・・・・・!?」

 朝川は自分のプロフィールが全て映し出され驚きを隠せない様子。

「詳しいことはともかく、招待状のも書いてありましたが、どちらの条件にしますか?金か、寿命か!」

 と、案内人の問いかけに一瞬、張り詰めた空気になった。朝川は沈黙になり、案内人は目をつぶり静かに朝川からの返事を待っていた。

 朝川は悩み数分黙っていたが、重い口を開き決断した。

「寿命だ!!俺の性格上、金やギャンブルに執着心があるからな、金を選ばず寿命を選んだぜ」

 案内人は朝川の決断に理解した。

「ご利用は何日までにしますか?」

 と、案内人が朝川に聞くと、

「5日間。利用日が長いと寿命が短くなる=年をとって遊ぶ時間が無くなるのは嫌だから、働く日にちだけにした」

 と、朝川が答えた。

「分かりました。では、こちらの丸い穴に人指し指を入れてください。貴方の指先から寿命を吸い取ります」

 パソコンのキーボードの左横に寿命を吸い取る丸い穴があり、朝川はその丸い穴に人差し指を入れた。

 すると、パソコンの液晶画面に”寿命5年分吸い取り 完了”と表示された。

「5年分の寿命が縮みました。それではキーボードのenterキーを押して全ての条件に対して決定してください」

 案内人は朝川に指示すると、朝川は恐る恐る人差し指をenterキーに近づけ、カチッとキーを押した。

 すると、カプセル型の機械装置が唸るように動き始めた。グガガガガガ・・・・・・と唸り、次の瞬間カプセルの中がピカッと光り始めた。

 「うっ!? なんだ!!」

 眩しさと衝撃波で目を腕で塞ぎながら戸惑う朝川。すると、カプセルの中にうっすら人影が見えた途端、カプセル型装置がドーンと音が鳴ると共に機械が止まった。

 カプセルの中には朝川と瓜二つのコピーが居たのを見た朝川は腰を抜かした。

「こ、これは凄いぞ・・・・・・」

 瓜二つの自分がいることに驚きを隠せないが、朝川は欲望と願望を満たせる事に不気味な笑みを浮かべていた。

「コピー完了です。お客様、くれぐれもルールをお守りください」

 と、案内人は朝川に念を押した。



 朝川と朝川のコピーがアパートの自宅に戻った部屋で朝川がコピーに話しかける。

「よし!! 来週からお前は仕事しろ。月曜~木曜までお前が働いて、金曜は俺が働く」

 すると、ベットで寝そべっている朝川のコピーが、

「お前1日だけ働くのかよ? 都合いいな」

 と、コピーが朝川に言い返す。

「行く会社の部署を教えてやる」

 と、朝川はコピーに教えようとすると、

「知っている。お前のコピーだからな、クックック」

 と、コピーが笑う。

 すると、朝川はコピーに銀行キャッシュカードを差し出した。

「俺はギャンブル用のキャッシュカードを持つ。お前は普通の預金通帳のキャッシュカードで食事に使え」

 と、コピーに預金通帳のキャッシュカードを渡した。

「ギャンブル用・・・・・・? 職を転々とした使い回しのキャッシュカードだろ!」

 と、皮肉るように言うと朝川は空かさず、

「うるせぇ」

 と、言い返す。

 すると、朝川は険しい顔になり、

「いいか! 5年の寿命が縮まった分、しっかり働けよ!」

 と、朝川はコピーに檄を飛ばすと、

「お前に言われたくないな。クックック、任せておけ!」

 と、コピーは自信満々に答えた。


 そして、月曜になり早朝にコピーは会社に向かい、お昼から朝川が大好きなパチンコ店へと向かった。

 朝川はパチンコ店でパチンコ玉を弾き始めていた。

「よし!! 確変キター!!」

 お気に入りのパチンコ台でテンションが上がる朝川。

「来い来い!!」

 すると、同じ柄の絵が3つ揃うと、

「キター!! 5回目の大当たりだー!!」

 思わずガッツポーズを取るくらいのテンションがMAXな朝川。

「今日は大勝だ!! よし、明日も稼ぐぜ!!」

 1日目はニヤニヤと笑いが止まらない様子。

 朝川は運が付いてるのか、連日の大勝をしていた。今日もパチンコ玉を弾いていたら、朝川が頼んでいた飲み物を美人女性店員が持ってきて、

「毎日大当たりですね!!」

 と、美人女性店員に不意に言われ、ドキッとして鼻の下が伸びる朝川。


 そしてパチンコで大勝した2日目、3日目も綺麗な星空を見ながら、

「うおぉ~!! まれに見ぬ大勝!! 楽しい~!!」

 大声を上げ、喜びを爆発させる朝川。

「この勢いで、風俗で発散するか、ニヒヒヒヒィーー」

 不気味な笑みを浮かべながら、風俗店へと足を運んでいた朝川だったが、その朝川の行動を一部始終見ていた人物がいた。

「なるほど、そうるうことか・・・・・・」

 と、その人物が呟いた。


 そして4日目の事だった。

「なんでだ!!」

 パチンコ店で台の前に座って玉を弾いていた朝川は怒鳴っていた。

「何回も回しているのに、なんで当たりが来ないんだ!!」

 と、言いながらパチンコ台を何回も叩き苛立っていた。そうこうしてる内に徐々に持ち金、持ち玉がなくなってきた。

「クソー、最後は・・・・・・。頼む・・・・・・」

 残りの持ち金を最後の望みに賭けてパチンコ玉を弾き出した。

 かかれ、当たれと願いを込めながらも苛立ちが激しくなり足をバタバタしていると、最後の玉になった。

 そして最後の玉が弾かれた。ピンに弾かれスルスルと落ちていく。そして一番下まで落ち、パチンコ玉が左右に揺れながら穴にスッポリ入って全ての玉がなくなってしまった。

「クソー!!」

 と、店の中で大声を出し悔しさを全面に出した。


 財布の中がスッカラカンになり、帰宅した落胆の朝川をコピーが、

「その顔見ると、全部負けたのかよ」

 と、おちょくるように朝川に言うと、

「うるせぇ!! 運がなかっただけだ!!」

 と、苛立ちながら朝川が言い返す。朝川はコピーに、

「そうゆうお前は働いているのか?」

 と、コピーに会社の様子を伺うと、

「あぁ~、働いているとも、俺の”職場”でな」

 コピーの口調は、しっかり働いている様子だった。するとコピーが、

「カード交換しなくていいだろ?」

 と、キャッシュカードをフリフリ振りながら朝川に聞くと、

「なんでだ?」

 と、コピーに聞き返す。

「そのキャッシュカードの中身はゼロみたいなもんだろ?その残金でお前は職場に行ってもらうぜ。俺の持っている預金通帳用のキャッシュカードで明日は弾かせてもらうぜ」

 と、コピーが言い、朝川のキャッシュカードと交換しなかった。

「分かった。俺の負けた分取り返してくれ」

 朝川はコピーに託すように言うと、

「おう!!」

 と、自身満々に返事を返したコピーであった。



 次の日の金曜。

 コピー利用期間5日目の最後の日。

 朝川は会社の門にいた。

『久しぶりの仕事だけど、2時間も寝坊して遅れたが・・・・・・。それにしても金曜だけ働けりゃ、気分転換になるな』

 自分の働く部署がある建物へと歩いていく、その途中で作業員達が朝川の姿を見てザワザワとしていた。ある人は驚き、ある人は朝川を見ながらコソコソと話す姿があった。

「なんだ・・・・・・? 相変わらず、こいつらうっとうしいなーー」

 と、苛立ちながら部署に向かった。

 すると、周りにいた作業員達が、

「おい、あいつ・・・・・・」

「あぁ、作業服着ていたぜ・・・・・・」

 と、信じられない光景を見たかのように話していた。

 朝川は職場に着き、作業長に挨拶をした。

「作業長遅れました・・・・・・」

 と、不気味な笑みを浮かべながら話すと作業長が、

「何しに来た!!」

 険しい顔をしながら朝川に檄を飛ばした。

『おいおい、何を言ってるんだ、このオッサン。働きすぎて頭おかしくなったのか? イヒヒヒヒヒィ』

 と、作業長をバカにした目で見た。

「まさか、解雇されたの聞いてないと言うんじゃないよな?」

 作業長が言ったことにビクッと驚く朝川が、

「はぁ?」

 と、何を言ってるんだと言わんとばかりの返事。

「4日間の無断欠勤をしていたんだぞ!! そこに勤務態度が悪い。それに、ある作業員から聞いたが無断欠勤でパチンコ三昧してる姿を見ていたんだぞ!! 呆れたぞ!!」

 なんと、コピーは4日間パチンコ店に通っているところを、たまたま有給休暇中だった作業員が見ていたのを作業長に伝えていたのだった。それを聞いた朝川は呆然と立ち尽くしていた。


「あのヤロー!!」

 と、怒り狂って会社を飛び出しパチンコ店に向かった。

 走って息が上がりながらもパチンコ店に着き自動扉が開くと、目の前にコピーがパチンコ玉を弾いていた。

 朝川はコピーに勢いよく走り近づき、うなぐらを掴んだ。

「てめぇ!! 4日間、仕事していなかったな!!」

 朝川が怒鳴りつくと、コピーがうなぐらを掴まれながら苦しそうに朝川に言い返す。

「お、俺が真面目に・・・・・・は、働くと、思ったか?」

 と、言われ驚く朝川。

「い、言っただろ? しょ、職場に行っていると・・・・・・、ここが俺の”職場”だ!!」

 そして、コピーの顔色が不気味な笑みを浮かべながら朝川に言い放つ。

「俺とお前の思考は一緒だぜ! 何故なら、お前のコピーだからな!」



 如何でしたか?

 まさか、自分のコピーまでパチンコで遊んでいるとは思わなかったでしょう。

 楽して生きようなんて、甘い欲望です。

 自分の性格を知っておきましょう。

 さて、彼はまともに働くようになるんでしょうか・・・・・・。



 パチンコ店で朝川とコピーが殴り合いをしているところを見た2人のお客がこう言ったいた。

「おい、双子の喧嘩か?」

「さぁ・・・・・・」


 


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