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育成中につき俺は鬼になることにしました。

エレンさん成長中です。

彼女はどんな形に育って行くことやら。

  

 俺はエレンを連れ訓練場に来ている。  


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 エレン・サンクトア

 18歳

 ランク:E

 ジョブ(2/2):シーフLv2 薬剤師Lv2

 体力:20

 魔力:25

 腕力:15

 防御:15

 敏捷:35


 スキル:索敵Lv2 調合Lv2 

 称号:エースの眷属


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 エレンのステータスを改めて見直し、俺はどう育てていこうか思考する。

 ジャックとクインは、俺の魂から出来ていることもありランクも俺と同じで、スキルの検証なんかに付き合ってもらったが俺が育てたというより二人は自分達で勝手に強くなったと言ったほうがいい。 

 だから実質、育成師として一から育てるのはエレンが初めてと言える。

 そういう意味でまず、彼女をどういう方向で育てていくかを考えなければいけない。

 バランスよく育てるというのが一番無難でいいのだが、ある程度方向性を決めて特化させるという手もある。

 特化させると今後眷属が増えたときにも、グループ化させ纏めておくことで俺の目が届きやすくするというメリットがあるし、役割によっては仕事を振りやすくもなる。今後は拠点の外に出ての行動が増えるだろうから、エレンのような斥候職を持つものには隠密として情報収集に動いて貰うのもいいだろう。大陸はもう一つあることだし、そっちの情報も気になることだし・・。 ただ、デメリットとしてはステータスに偏りが出てしまうことが懸念される。

 逆にバランスよくすると、良くも悪くも弱点がない・・・が、長所もなく特化型には及ばないというデメリットがある。 今の俺がバランス型でまさにそれで、特化した戦闘スタイルの相手には相性が悪い。 

 まぁ、俺の場合はジョブが無制限だからどうしてもステータスはバランス型になりやすいから仕方ないんだけど、エレンのようにランクでジョブの数に制限がある人にはそうはいかないだろう・・。

 それに、俺もまだランクの上がる仕組みについては完全に把握しきれていない。 最高神様から貰った本には、ステータス値の上昇と本人が経験値を積むことでランクが上がるとは書いてあったが、それ以外のことはまったく分かっていないので正直俺も手探り状態なのだ・・・。

 

 とは言え、エレンはすでにジョブに2つ就いているので、ランクが上がるまではジョブレベルを上げていき、指導スキルでステータス値を成長させる方向で行くしかないだろう。

 


 俺はエレンを連れ、地下にある訓練場に向かう。

 今回まず確認することは、ジャックやクインと比べエレンに指導スキルを使ったときのステータス値上昇までに掛かる時間と指導内容についてだ。

 具体的に言うと、初日にここで俺がジャック達に指導スキルを使ったときは、剣での素振り50回でステータス値が1上がった。 ランクEのエレンの場合、ステータスが1上がるのにどれくらいの違いがあるのか・・・・・それを調べるのだ。


「エレン、こいつで素振り50回からだ」


 訓練場に立て掛けてあった剣をエレンに投げ渡す。

 それを受け取ったエレンは、両手で剣を握り剣を上から下へと振り下ろす動作を繰り返し始める。


「声にだして数も数えろ。 一回一回丁寧に振るんだぞ」


 ここでも指導スキルを使い指示をあたえる。

 

「1、・・・2、・・・・3、・・・・・4・・・・・・5、」


 最初こそ元気よく剣を振っていたが、ステータスが低いのと慣れない動きのせいで、20回を超えた辺りから目に見えて腕が下がりはじめる。


「腕が下がってるぞ! 一回一回きちんと頭の上まで腕を上げるんだ」


「はぁ・・・はぁ・・・・25、・・・26、・・・・・・・・・・・40、ハァ・・ハァ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50!」


 うん、たった50回でもエレンはかなりしんどそうにしている。

 ジャックは50回振っても平然としていたから、ステータスの差かランクの差か・・・・・・やはりそれぞれに違いがあるようだ。

 その人にあった訓練を見極めて指導することも必要になるな。


 俺は膝に手をついて荒い呼吸を整えるエレンに鑑定をかける。

 果たして成長しているか・・。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 エレン・サンクトア

 18歳

 ランク:E

 ジョブ(2/2):シーフLv2 薬剤師Lv2

 体力:23

 魔力:25

 腕力:18

 防御:15

 敏捷:35


 スキル:索敵Lv2 調合Lv2 

 称号:エースの眷属

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 お、体力と腕力が3も上がってる。

 ジャックが同じ回数やった時は1しか上がらなかったはずなのに・・。

 もしかして、指導で上がるステータス値は本人の負荷の違いで上がる数値が変わってくるんじゃ・・。

 ジャックが同じことをやった時は苦もなくやり遂げてたよな・・・・・あの時と今で違いがあるとしたら、訓練を受けている人の違いはあるけど大人と子供だし、あの時のジャックと今のエレンのステータスはほぼ同じ。

 だとするとやはり、訓練を受けた人が負荷を感じるか感じないかで指導スキルの影響も変化すると考えたほうがいいかもしれない。

 ためしにエレンが負荷に感じないくらいの回数を後でやらせてみよう・・。

 

「エレン、ステータスを確認してみろ」


 俺がそう言うと、エレンはステータスカードを出して自分のステータスを確認している。

 

「あ、上がってる。 ステータス値が上がってるよ!」


 エレンは興奮気味に俺の胸倉を掴んで報告してくる。

 あのエレンさん・・・顔がすごく近いんですけど・・。

 今は5歳児の体とはいえ、中身は大人なので必要以上に接触されると・・・俺だって男の子なんだからね!

 あぁ、女の人って何かすごくいい匂いがする・・。

 思わず、エレンの頭を抱きこんでその頭に顔近づけて・・・・はっ!

 そこで背後に、強烈な殺気を感じて目だけ振り返ると・・・。

 般若の形相をしたクインさんが立っておられました。 


 妹よ、兄は断じて無実だといいたい。

 未遂だ、どうかお慈悲を・・・。

 

 そこで俺の意識は暗転し・・・・・・何てことにはなりませんでしたけど、これ以上クインの前で他の女の子といちゃつくと、本当に意識が飛ばされる可能性があるので気をつけます・・。

 安定のブラコン妹のようで兄はうれしいやら、恐怖を感じているやらであります・・・早く自分の身を守れるくらい強くならないと嫉妬でクインに殺されるかも・・。


「ジョブのレベルアップ以外でステータスが上がるなんて・・・・ウソじゃなかったんだね」


 相変わらずエレンは俺の胸で泣いています。


「だから言ったろ、俺は他人を育てることを天職とした育成師だって。 ・・・おい、何でそこで泣くんだよ・・」


「・・・グスッ。 あぁ、ごめんよ。 まさか本当に強くなれるとは思ってなくて、実際に自分が成長したのを見たらね・・・・うれしくて」


「これぐらいで感動するなよ。 これから一ヶ月の間に、俺がエレンをもっと強く育ててやるんだからな」


 うれしいのは分かるが、これからもっと厳しい訓練で強くなってもらうんだ・・・・泣いてる暇なんかないよ。

 鬼だ俺は鬼になるのだ!

 貴様を最強に育て上げて見せるわ!

 俺は再びエレンに剣を握らせさっきよりも回数を落として振らせる。 

 




「エレン、シーフのジョブはどうやったら所得出来るの?」


「・・・はぁはぁ・・・・・はぁ・・・・・・・・・はぁ」


 少しハードにやり過ぎたか・・・エレンは床に座り込んで荒い呼吸を整えている。

 回数を変え、剣を振らせること2時間。

 負荷によるステータス変化の検証を続けた結果、概ね俺の思ったとおりの結果が得られた。

 おかげでこの2時間の間に、エレンのステータス値はEランク平均まで上がっている。 流石育成師のスキル凄い成長の早さだ。 おかげでこっちも、ジョブとスキルレベルが上がって、育成師Lv3のスキルツリー開放で新しく技能指導のスキルが手に入った。

 効果は俺の持つスキルをジョブ関係なしに相手に覚えさせることが出来るというもので、エレンには既に剣術Lv1がついている。

 これまた、俺がジョブとスキルを覚えれば覚えるほど、眷族は強くなるという凄いスキルだ。 

 要するに俺が弱いとダメって事なんだけどね・・。


「はぁはぁ。 シーフのジョブかい? シーフは斥候職だから、敵の気配を感じることが出来れば誰でもなれるよ」


 呼吸を整え、少し落ち着いたエレンが先ほどの俺の質問に答える。


「え、条件ってたったそれだけなの?!」


「あのなぁ、誰もがアンタみたいに戦えるわけじゃないんだよ。 シーフのジョブを取ろうと思ったら、危険な魔物の生息地に近づかなくちゃいけないんだよ・・・ある程度戦闘が出来ないとシーフのジョブは取るのには危険が伴うんだ」


「でも、エレンは取ってるじゃんか」


「アタイはあれだよ、逃げ足だけは自信あったから魔物に見つかっても逃げ回って戦っていないからね。 アタイらみたいにランクが低いと、戦うより逃げることを優先しないといけないから、シーフのジョブに就いてる奴は結構多いんだよ」


 シーフのスキルは索敵だからね・・・・見つかる前に逃げるってことなんでしょ・・。

 そうすると次はジョブのレベル上げをしよう思ってたから、薬草の採取がてら森に行くか。

 俺もシーフのジョブは取っておきたいし。


「よし、エレン森に行くから準備して」


「え、突然どうしたんだい」


「ジョブのレベル上げだよ。 薬草の採取がてら森でシーフのレベル上げ、エレンのステータスもEランク平均まで上がってるし剣術スキルも覚えさせたんだからコボルトくらいは一人で倒せるはずだしね」


「そりゃ幾ら何でもいきなりすぎやしないかい・・・アタイは戦闘なんてほとんどやったことないってのに・・・」


「問題ないよ。 俺もクインもいるんだし、エレンがちゃんと索敵すれば魔物に会うことはないだろうしね」


「そりゃそうだけど・・」


「つべこべ言わない。 ほれ行くぞ!」


 俺はエレンの手を引っ張って外に出る。






「う~ん、魔物の気配なんて感じないぞ・・」


「そりゃそんなに簡単にジョブが取れるわけないだろ。 魔物の気配を感じるのは言うほど簡単なことじゃ・・・「あ、兄さん! シーフのジョブが取れました」・・・」


「簡単に取れたみたいだぞ?」


「・・・・・」


 本職形無しだな。

 流石はクイン、同じ魂から出来ていると思えないほど優秀だな・・・森に入って1時間もしないうちにシーフのジョブを取ったちゃったよ。


「クイン、魔物の気配を感じるコツは?」


「コツですか? そうですねぇ・・・あえて言うなら、周りの情況を想像して草や木の動きにも注意することでしょうか」


「個で捉えるんじゃなくて、周で捉えるってことかやってみる・・・・・・・・・・・・・・・・・お、出来た。 シーフのジョブも取れてるみたいだ」


「流石は兄さんです」


「クインのおかげだよありがとね」


 撫で撫で。


「アンタら兄妹はホントに・・・・」


 そうこうしているうちに、エレンの案内で薬草の採取場所が見えてきた。

 ただ、そこには魔物の気配が1つ。


「魔物の気配がするね」


「はい。 これは・・・気配はそれほどですから、おそらくコボルトじゃないかと」


 そっと近づいていって確認してみると、気配はやはりコボルトであった。

 この短時間の間に、クインは索敵をすでに使いこなしていた。

 本職のエレンさん形無しですよ・・。


「一匹か・・・よし、エレン君に決めた!」


 俺はエレンの背中を押す。


「ちょ、だからアタイは戦闘なんて・・・」


「やかましい! つべこべ言わず行け!」


 俺はエレンの背中を押し出すと、小石を拾ってコボルトに投げつける。

 見事!

 小石はコボルトの頭に命中し、コボルトはエレンの存在に気づく。


「ギギ!」


 怒ったコボルトが木の棒片手にエレンに襲い掛かる。


「エースっ!」


 エレンは俺を睨みながらも剣を抜いてコボルトと対峙する。

 ステータス上ではエレンのほうが僅かに上なので、後は本人の実力次第だ。 まぁ、負けることはないだろうけど・・。

 

 コボルトの振り下ろす木の棒をエレンは必死に避けている。

 身のこなしは流石シーフといったところか。

 後は攻撃・・・なのだが、エレンは中々攻撃に移れないでいる。


「ビビッてんのか?」


「だと思いますよ。 エレンさんはあのランクのせいで、今までずっと逃げることで生きてきたようですから」


 ここでもランクが関わってくるのか・・。

 どんだけランク一つで、人の人生狂わせれば気が済むんだか・・・全く。


「仕方ない。 クイン、弓でコボルトの体勢を崩して援護してやってくれ」


「はい」


 クインが弓を構える。

 ちょうどコボルトとエレンが俺たちの正面にやってきて、コボルトの振り下ろした木の棒をエレンが横に転がって避ける。


「今だ」

 

 俺の合図でクインが矢を放ち、コボルトの脚を射抜いた。


「ギギ!」


 方膝を地面につき動きが止まるコボルト。


「今だエレン!」


 俺の声にエレンがハッと顔を上げ、剣を構えコボルトに振り下ろす。


「はあぁーッ!!」


 剣がコボルトの首から胴を切り裂いて、赤紫の血を流しながらコボルトは前のめりに倒れ動かなくなる。 

 エレンが初めて魔物を倒したのだ。

 

 エレンは動かなくなったコボルトを見届けると、剣を手から離し地面に腰を下ろす。

 俺とクインもそれを見て、エレンに近づいていく。


「初戦闘、初勝利おめでとうエレン」


 俺がそう声を掛けると、エレンはキッと鋭い目で俺を睨んでくる。


「何が初戦闘だい。 アタイは無理だって、あれほど言ったのにアンタが無理やり戦わせたんじゃないか! アタイは・・・アタイは・・」


「そうやって何時まで弱者でいるつもりなんだ? 強くなりたいと言ったのはエレンじゃないのか?」


「・・・・・」


「言ったろ、俺には最弱を最強に育てる力があるって。 今日一日だがエレンは確実に強くなってる。 エレンなら出来ると思って俺はやらせているんだから・・・無理だ、嫌だはもう通用しないんだ、やるしかないんだよ」


「・・・・・」


「何時までも弱者でいることに甘えるんじゃねぇ! 強くなりたきゃ前だけ向いてろ! 後ろは振り返るな! 甘えを捨てろ! それが出来ないなら一生最弱のままだぞエレン」


「・・・・・アタイは・・・アタイは強くなりたい。 でも怖いんだよ・・・戦うのが怖いんだよ・・」


「エレン、戦うことだけが強さじゃないさ。 守ること、それだって立派な強さだと俺は思うよ。 もし、エレンが戦うことが出来ないならそれでもいいさ・・・強くなる道は一つじゃない、守る強さを身につければいいんだよ」


「守る強さ?」


「戦う強さが剣を抜くことなら、守る強さはそれ以外の全部さ。 エレンで言えば、シーフのジョブで未然に危険を回避したり、薬を作って誰かの怪我を治したり、それだって立派な強さだ・・・強くなることに形は一つじゃない、自分の強さの形を見つけて強くなればいいんだ」


「・・・グスッ。 アタイも見つけてみるよ。 自分の強さの形ってやつを・・」


 これで少しは自分の価値に気づいてくれたかな。

 エレンは最弱じゃない。

 もう、最強の階段を登り始めてるんだから・・。


「さ、薬草を採取してさっさと帰るぞ。 もたもたしてるとコボルトにまた襲わせるぞ!」

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