眷属が増えることになりました。
短めの話です。
後、あんまり話が進みません。
「それじゃあジャック、頼んだよ」
「はい、兄さん。 みなさんは僕が安全に送り届けます」
エレン以外の4人はジャックの護衛の下、村へと帰るために洞窟を出て森へと入っていった。
昨日エレンに聞いた話だと、半日もあれば森は抜けられるそうでそんなに深い森ではないそうだ。
洞窟の近くには回復薬の素となる薬草が取れる場所もあるそうで、エレンがその場所を知っているとのことなのでこれも後で取りに行ってみようと思う。
で、おそらくこれが一番重要な話になると思うが、この森はオルスタン大陸・・・帝国領内にあるそうだ。
ランク差別が激しく、徹底した実力主義の国それが帝国だ。
「さてエレン、これから君に協力してもらうわけだけど、その前に君には俺の眷属になってもらうよ」
「眷属? それはアタイに奴隷になれってことかい?」
「う~ん、奴隷とは少し違うかな。 まぁ、眷属化したらちゃんと話すからさ、今はとりあえず俺に従っておいてよ」
「・・・・・分かったよ」
「よし、それじゃあ手を出して」
エレンが俺の言葉に恐る恐る手を差し出すと俺は持っていた短剣で自分の手の平を浅く切り裂いて血を流す。 同じくエレンの手の平を短剣で切り裂き、そこへ俺の血を流し込む。
眷属化は眷族にしたい相手の血に自分の血を混ぜることで眷属とすることが出来る。 エレンが引きつった顔をしているがなんら危険なことはないのだ。
その証拠に、
「眷属化!」
「えっ!?」
スキルを発動させると、エレンの手の平の傷が自然に塞がっていく。
「これでエレンは俺の眷属だ。 眷属になったからには、俺の情報を他人に話すことが出来なくなるんだ。 だからもし、エレンが俺を裏切ろうとしても眷属化を解除しないと俺からは離れられないからね」
「そ、それは・・」
「そうだね、その点だけは奴隷と変わりないかもしれないけど、その他に制約を課すつもりはないしエレンが望むならエレンを強くして上げることも出来るよ。 まぁ、眷属化もしたことだしここじゃ何だから話は拠点に帰って話そうか」
俺たちは洞窟の小部屋まで帰ると、異空間拠点の扉を開き拠点へと戻る。
「こ、ここは一体・・」
「ようこそエレン。 俺たちの拠点に」
扉を潜るといきなり目の前には大きな玄関ホールが・・・エレンはそれだけで何が起こったのか分からず顔を強張らせる。
俺はそれに構わずエレンを連れリビングへと向かう。
俺がどっかりとリビングのソファーに腰掛けると、タイミングを見計らっていたかのようにクインがお茶とお菓子を持って現れる。
クインの頭を撫でて感謝の意を表していると、
「心配しなくてもここには俺たちしかいないから、エレンもこっちに来て座っていいよ」
エレンは遠慮がちに近寄ってきてソファーに腰掛けると、クインが煎れてくれたお茶を一口すすり、
「いろいろと驚かされてばかりだけど、そろそろあんたのことを教えてくれないかい」
それを聞いてくる。
「そうだね。 まず、最初に言っとくと俺はこの世界の住人じゃない。 ある人に頼まれて、こことは違う別の世界からやってきた異世界人なんだ」
「別の世界からきた異世界人だ・・・そんなもん急に言われて、どうしたら信じられるってんだよ・・」
「う~ん、ステータスが見せれれば信じて貰えると思うんだけど、エレンは鑑定がないから俺のステータスだ見れないだろうし・・」
「アンタ、ステータスカードの出し方を知らないのかい? 自分のステータスは、相手に見せようと思えばカード化して見せることができんるんだよ・・・・・ほら」
エレンが俺にカード化した自分のステータスを見せてくれる。
まさかこんなに簡単に出来るとは・・・。
ついでだからエレンのステータスを見せてもらおう。
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エレン・サンクトア
18歳
ランク:E
ジョブ(2/2):シーフLv2 薬剤師Lv2
体力:20
魔力:25
腕力:15
防御:15
敏捷:35
スキル:索敵Lv2 調合Lv2
称号:エースの眷属
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ふむ、この世界に来たときの俺より少し強いくらいかな・・眷属化もちゃんとされているみたいだ。
エレンのランクはEで、ジョブは2つしかつけない。
2つのジョブについてこのレベルで、この年齢で、この数値となると、やはりランクが低いと成長にも大きく違いが出てくるみたいだな。
と、人のばかり見ていてもしょうがないか。
ステータスを相手に見せることを思って・・・・
「出来た! はい、エレン。 これが俺のステータスカードだ、称号のところを見てくれたら俺が異世界人だって分かってくれるはずだよ」
俺はエレンにステータスカードを渡す。
「な、なんだいこのステータス値は! 5歳児にしては高すぎるよ。 それに、スキルもジョブもこんなにたくさん・・・・・Exランクなんて聞いたことが・・・・・」
エレンの驚きようが凄いな。
あぁ、やっぱりこっちの世界の人が見たらそういう反応するよね・・。
「どう? 俺が異世界人だって分かってくれた」
「・・・・・は! あ、あんた神様の使いだったんだね。 そんな凄い人とは知らずアタイは・・・」
「そんなこと気にしなくていいよ。 俺は頼まれてこの世界に来たってだけで、一つも偉くなんかないんだからさ」
「そうかい。 アタイとしちゃそうでもないと思うんだけど、アンタなんて言い方も失礼だろうから、これからはエースさんって名前で呼ばしてもらうよ」
「さんは要らないからね。 呼び捨てでいいから。 で、ステータスを見て貰ったら分かると思うけど俺のジョブに育成師ってのがあるよね」
「あるね。 聞いたことないジョブだけど、まさかユニークジョブかい?」
「そうだよ。 育成師のスキルはね他人のスタータスを上げたり、ジョブを所得する早さを上げたりと他人を強く出来るジョブなんだけど、このジョブの一番凄いところはランクも上げれるってとこなんだけど・・・」
ガタリ!
エレンはソファーから立ち上がり、俺に掴みかからんが勢いで体を近づけ興奮気味に聞いてくる。
「それはアタイにも可能なのかい! もし本当にランクが上げれるなら何だってするよ。 アタイの体でよければ喜んで差し出すから、アタイにもその力を使ってくれないかい」
あれ?突拍子もないこと言ってるはずなのにそんなあっさりと信じてくれるの・・。
もっといろいろとこう聞かれると思ってたのに・・・・ランクのこととかスキルのこととか・・・・・まぁ、話す手間が省けるし信じてくれるならそれでいいか。 また聞かれたら答えればいいんだし。
よほどランクが低いことで周りから何かされているのだろうねぇ・・・鬼気迫るものが凄まじい。
まぁ、強くなりたいって気持ちは分かるから育てるには持って来いなんだけど・・。
「落ち着いてエレン。 俺が君に協力してほしいことって言うのはそれの事なんだよ。 まだ育成師のジョブに関して、俺も分かってないこともあるから検証がてらエレンを俺に育てさせてくれないかな。 もちろん、エレンが望むならなんだけど・・・」
「いいに決まってるだろうが。 つか、さっきからずっとそう言ってたじゃねぇかよ。 強くなれる? 最高じゃねぇか。 強くなって、散々アタイたちの事を馬鹿にしてきた帝国の連中に目にもの見せてやるんだ」
エレン・・・さっきから若干口調が変わってるよね・・。
それに帝国に対して、相当な恨みというか思いがあるようで目が燃えてるよ。
落ち着こうよ。
「それで! アタイは何をすればいいんだい。 脱ぐのかい? 脱ぐんだね。 脱ぐよ!」
だから落ち着いてってば!
5歳児に体を開くって何してんだよアンタわ!
そういう話はマジで勘弁・・・ほら、クインが汚物を見るような目で俺を・・・。
そんな目でみないでお兄ちゃん生きて行けないから!
「う、うん。 5歳児相手にふざけるのは止めてください。 妹の教育上良くないので・・」
「おっと、すまないね。 ちょっとばかし悪ふざけが過ぎたよ」
「はぁ・・。 まぁ、エレンの気持ちは分からなくはないですよ。 俺がこの世界のことを聞いた限りでは、ランクはこの世界では絶対的なものみたいですからね・・・虐げられてる人からしてみれば俺の話はウソでも信じてみたくなるような話ですから」
「あぁ、アタイも実際にこの拠点とエースのステータスを見せて貰わなきゃ信じてないだろうからね」
「今は信じてくれるんですか? これだけ言って結局はウソかもしれませんよ」
「それでもアタイは信じるさ。 少しでも強くなって帝国の連中を見返せるなら、何だって信じて見せるよアタイは・・」
「そんなに帝国がやってる事が憎いんですか?」
「憎いさ。 あいつら帝国の連中は、ランクが低いだけで人をゴミのように扱いやがる・・・・たかが、ランクが高いだけだってのにな・・。 でもそれ以上に、自分が弱いことに腹が立つ・・・何も出来ない自分がどうしようもなく嫌になるんだよ・・」
たかがランク、されどランク。
この世界ではランクが低いというだけで、能力に絶対的な差が生まれ最弱が埋もれている。
エレンやこの世界でランクが低いといわれている人たちは、みんなそこで強くなることを諦めてしまっている。
俺はそれが許せない。
最弱だから弱いと誰が決めた・・・弱いから勝てないと誰が決めた。
最弱だからこそ、弱いからこそ、上がたくさんあって可能性がある。
一番強いのはランクが高いやつじゃない。 一番強くなる可能性を秘めたのは最弱に決まってるじゃないか!
それをランクなどで人の価値を決めるなど、この世界のルールは実に間違っている。
だからこそ、俺の手で最弱を最強にしてみせる。
エレンの願いを叶えてみせようじゃないか・・。
「エレン俺が君を強くしてあげるよ・・・・」
俺はエレンに手を差し伸べ、
「俺についてこい、俺が最弱の君を最強の君に育て上げてやるよ!」
エレンは俺の言葉に、
「フフ ガキのくせに言うじゃないか・・・でも、そんなウソなら喜んで騙されてやるよ。 アタイの未来エースに託すよ」
差し伸べた手を取り立ち上がる。
ここから始まるのだ。
育成師としての本当の育成が。
「さぁ、始めようか。 |最弱≪さいきょう≫の育成を」
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一方その頃エレンの村では・・・
「ベローズさん、昨日森に行って帰ってこなかった5人のうち4人が今しがた村に帰還したそうです」
「4人か・・・もう1人は死んだのか?」
「いえ、それが帰還した奴らの話だと森でコボルトに襲われたところを助けられたらしいんです」
「ふん、コボルトごときに襲われるとはこれだからランクの低い奴は使えんのだ。 それで、そのコボルトを倒した奴がどうかしたのか」
「へい、何でも襲ってきたコボルトの中にはコボルトの上位種のコボルトリーダーもいたそうで、そいつらはコボルトリーダーを含むコボルト7体の群れを、たった3人で潰したそうです」
「ほぉ、Dランクの魔物を倒すとは中々の奴だな。 で、そいつ等は連れて戻ったんだろうな?」
「いえそれがですね、そいつ等はいなくなったもう1人を何かに協力させるとかで連れていったそうなんですけど、1ヶ月たったらその1人を返しにここへ来るとかなんとか・・・」
「何だその曖昧な情報は・・もっと分かるように話せ。 それで、そいつ等のランクや容姿はどうなのだ使えそうな奴なのか?」
「へい、何でも子供が3人だそうです」
「子供だと!? クク そりゃすごいじゃねぇか。 コボルトを倒せる子供なんぞそうそういるもんじゃねぇぞ・・・・本国に連れて帰ればいい値で買い取ってもらえるか・・クックック。 よし、まずは帰還した奴らからそいつ等の情報を聞きだせ」
「了解でやんす」
「さて、そいつらは俺様を楽しませてくれるかな クックック」
本日18時にもう一話投稿します。
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