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残った問題を片付けることにしました。

「ねぇ、とりあえずこの拘束を解いてくれないかしら」


 5人の中で一番年上と思われる女性がそう問いかける。

 彼女の年は見たところ20前後で、赤い髪にすこし日焼けした小麦色の肌が特徴的な美人さんだ。

 他の四人は男二人、女二人で俺たちよりは年が上そうだが全員が12,3歳前後の子供だ。

 みな一応に俺たちの事を警戒した目で見ている。

 無理もないだろう、目の前で10歳にも満たない子供がコボルトを苦もなく倒して見せたのだから・・。


「それは無理ですね。 まだ貴方達のことをどうするか決めていませんから。 それに、貴方達が俺たちを襲ってこないとも限りませんし」


 ホントにどうするか・・。

 まさか、魔物に攫われてきた人間がこの世界で初めて会う人間になるとは思いもしなかった。

 それに、彼女らのことを如何するべきかもだが、大部屋の方には残りの魔物の群れがまだいるのは確かだし、そっちの方を先に何とかしないと落ち着いて話をすることも出来ないかな・・。

 この人達には問題が片付くまでここで大人しくしていてもらおう。


「残りの魔物を倒してきます。 話はその後で聞きます」


「ま、待った。 坊や達以外にも他に人がいるんでしょ? その人達と話をさせてくれない」


 あぁ、この人は俺たちが他の大人についてここに来たと思ってるのか・・そう思うのも無理はないけど、生憎とそうじゃないんだよね。


「勘違いしないで下さい。 ここにいるのは俺たち3人だけですよ」


「えっ・・」


 俺は二人を連れて小部屋を後にし、大部屋への道を進む。

 他の仲間がこっちに戻ってこないとも限らないが、本体を倒せば問題ないだろう。

 再び分かれ道まで戻ってきたところで、改めて大部屋のへの道を進む。

 曲がり角を利用し大部屋の様子を探ってみると、コボルトが10匹とコボルトよりも一回り大きい固体が一体、大部屋の中で就寝中のようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

 コボルトリーダー

 ランクD

 ジョブ:中級魔物Lv5

 体力:135

 魔力:80

 腕力:145

 俊敏:160


 スキル:棒術Lv5 統率Lv3 


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 コボルトが下級だったから、コボルトリーダーはコボルトの進化形態。 魔物のジョブはその種族の階級を表すものなのかな・・・進化したことでランクも一つ上がっているみたいだし、人間と魔物では強さに違いがあるみたいだな。

 とはいえ、俺やクインよりステータス値が上だし、このコボルトの数もいるとなるとなぁ・・・ジャックなら、コボルトリーダーと一対一になっても負けないだろけど、そうするとコボルト10体を俺が相手にしないといけないのか・・。 今は魔物たちも寝てるから、奇襲を掛けてさらに数を減らせればジャックにコボルトリーダーを任せても大丈夫か。 最悪クインもいるから、コボルトを俺が相手してクインを援護に回せば問題ないか。 


「ジャック、コボルトリーダーを一人で抑えれるか? 俺たちの中で一番ステータスが高いのはジャックだ。 倒せるなら倒してもいいんだけど、周りのコボルトが邪魔になる。 俺とクインでコボルト先にやるからジャックにはコボルトリーダーを任せたいんだ」


「任せてください。 兄さんの期待に答えて、あんなやつ一人で倒して見せますから」


「頼むぞジャック」


 俺はジャックの頭を撫でてやる。

 クインは自分もしてほしいと顔で訴えてきたが、今回の作戦はジャックが鍵になる。 ジャックのやる気を上げるために我慢してくれ。






 大部屋の入り口の影から中を覗く。

 コボルト達が起きる気配はない。

 俺はクインに目で合図をおくる。

 クインはそれに頷いて弓を引く。


 キュイン!


 4歳児が放った弓とは思えないほどの速さで矢が飛んでいって眠っているコボルトの胸に突き刺さる。

 矢の刺さったコボルトが、断末魔の叫びとも思える奇声をあげ事切れる。

 その声に反応し、リーダーを含めたコボルト達が慌しく目を覚ます。

 そこへさらにクインの弓から放たれた矢が襲い掛かる。


「ギギッ!」

「ギグッ!」

「ギガッ!」


 さらに3体のコボルトが地面に倒れる。

 そこで俺たちの存在に気づいたリーダーがコボルトに命令して俺たちに攻撃を仕掛けてくる。

 俺とジャックは大部屋の中に飛び込み、


「来いやおらー!!」


 盾術Lv3で覚えた挑発を使い、コボルトの意識をすべて俺に向ける。

 6体のコボルトまんまと挑発に引っ掛かって、俺に向かってくる。 その脇を駆け抜け、ジャックはコボルトリーダーと対峙する。


「「ギギッッ」」


 2体のコボルトが木の棒を振りかぶり、同時に手に持った木の棒を振り下ろす。

 片方を盾で受け止め、もう片方は剣で受け流す。

 残る4体のうちの一体が、俺をすり抜け後方のクインを狙おうとするので、盾で受け止めたコボルトの腕を掴んで走るコボルトの背に向かってブン投げる。

 綺麗な放物線を描いたコボルトが走るコボルトの背に見事に命中、絡み合って倒れたところにクインの放った矢が頭を打ち抜いた。

 

 これで残りは4体。

 

 残ったコボルト4体は、力の差に気づいて無闇に仕掛けるのをやめ俺を囲み同時に攻撃を仕掛けてくる。

 2体は剣と盾で防げる。 1体はクインの弓で仕留めれる。 だがそうすると1体余って攻撃をうけてしまう。

 ならどうするか。

 それは、


「スラッシュ!」


 剣術スキルのアーツ「スラッシュ」を使って、正面から来る2体を同時に切り伏せる。

 そして、後方の1体はクインが予定どうり仕留める。

 残ったコボルトの攻撃を俺は装備を捨て前方に飛ぶことでそれを回避する。

 そして、腰に予備の武器として隠していた短剣をコボルト目掛けて投げる。

 短剣は吸い込まれるようにしてコボルトの胸に突き刺さり、そのまま真後ろに倒れ最後の1体も事切れる。


【曲芸師のジョブを所得しました。 曲芸師Lv1のスキルツリーが開放されました。 10Spを獲得しました】

【剣術士のジョブが3→4に上がりました。 剣術士Lv4のスキルツリーが開放されました。 10Spを獲得しました】

【盾術士のジョブが3→4に上がりました。 盾術士Lv4のスキルツリーが開放されました。 10Spを獲得しました】

【拳闘士のジョブが3→4に上がりました。 拳闘士Lv4のスキルツリーが開放されました。 10Spを獲得しました】


 魔物との戦闘は経験値の入りがいいな。 さっきレベルが上がったはずの、剣士と盾使いのレベルがまた上がった。

 そして、新しく曲芸士のジョブを所得した。


 曲芸士:アクロバティックな動きでの攻撃で相手を翻弄する。

        ジョブ特性:魔力・俊敏上昇


 最後のコボルトの攻撃を避けて短剣を投げたのが曲芸になったのかな・・。

 新しいジョブを所得したのもだけど、魔力のステータスが上がるのはすごくありがたい。

 曲芸士は積極的にレベルをあげて、あれが取れるくらい魔力を上げたいな。


「兄さん!」


 後方にいたクインが俺に駆け寄ってくる。

 

「クイン、援護ありがとなおかげで助かったよ」


「いえ、兄さんを守ることが出来てよかったで・・・あ」


 俺はクインの頭に手を伸ばしてやさしく撫でる。

 頑張った時は思いっきり褒めてあげないとね。

 クインは俺に頭を撫でられて凄くうれしそうに笑っている。

 と、こっちの戦闘は終わったけどまだジャックが・・・・・って、向こうも大丈夫みたいだな。

 すでに向こうも方がつくところであった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 僕は今回兄さんから一番大切な役割を任された。

 コボルト達を統率する群れのボス、コボルトリーダーを抑えること。

 それが僕に任された役割だ。

 兄さんからは、倒せるなら倒していいといわれてるし、戦闘前にたくさん頭を撫でられて「頼んだぞ」って期待の声も掛けてもらった。

 僕はこいつを一人で何が何でも倒すつもりだ。

 それで、兄さんから「よく頑張った」って言っていっぱい褒めてもらうんだ。


 コボルトリーダーのステータス値はDランク平均を超えて、ちょうどDランクでも真ん中くらいの強さになっている。

 それに対して僕のステータス値はCランクの域に入っている。 数値で言えば100近く僕のほうが高いことになる。

 一人で倒せないこともないはずだ。

 いや、僕は兄さんの育成師のスキルで普通の人よりも強くなっているのだから勝たなければダメだ。

 兄さんも僕なら大丈夫と思って任せてくれたんだ、絶対に兄さん達が来るまでに倒してみせる。


 戦闘が始まった。

 僕と兄さんは同時に大部屋の中に駆け込み、兄さんが挑発のスキルでコボルトの意識を自分に向けている間に、僕はその脇を駆け抜けて後方で待つコボルトリーダーに剣を抜く。

 相手も僕が来たことに気づいて、背中に背負っていた大きな剣を構える。 コボルトの武器は木だが、コボルトリーダーの武器は金属で出来た大剣だ。 

 僕はスピードをいかしてそのまま正面からコボルトリーダーに突っ込む。

 掲げた大剣を振り下ろしてコボルトリーダーは僕を迎え撃つ。 大剣が僕の目の前に迫る瞬間、スピードを緩めることなく体を横にづらしてかわしそのままの流れで、下から斬りあげるようにして左腕の上腕部を切り裂く。


「ぎゃぎゃー!」


 コボルトリーダーの痛みの声で、赤紫の血が腕からしたたり落ちる。


(ホントは腕を切り落とすつもりだったんだけど・・・浅かったかな。 まだまだ、訓練がたりないな)


 左腕は血を垂らしながらブランと下に力なく垂れる。

 コボルトリーダは右手一本で大剣を持ち直すと、怒りに満ちた目で僕を見据え怒号を上げる。

 僕はそれに意を返さず、足を動かしてスピードで相手を翻弄する。

 まだまだ、戦闘に関して言えば未熟で体も4歳児の体でこれから成長を迎えるのだが、今はこの小さな体を生かして戦うには、足を止めずスピードをいかすしかない。 さっきの一撃でもそうだが、ステータスがあっても今の僕は体がまだまだ追いついていなくてイメージ通りにはなっていない。 それは防御の面でも同じで、ステータスはあっても現実の僕の体は4歳児のものなので、コボルトリーダーの大剣を一撃でも喰らえばかすり傷でさえ致命傷になりかねないのだ。

 だからこそ、僕はこの体を最大限生かすために足を止めるわけにはいかないんだ。


 コボルトリーダーの大剣が水平に僕を狙って振られる。

 僕は地面に突っ伏して大剣をかわし、腰の短剣を足に向かって投擲する。

 短剣が脹脛の辺りに刺さり、コボルトリーダーの体がグラリと傾く。

 僕はそれを見逃さず、今度は反対の足に短剣を投擲。

 両足の脹脛に短剣が刺さったことで、コボルトリーダーの膝が落ちて両膝を地面についた膝立ちになる。

 

 しかし、その状態でもコボルトリーダーの目には未だ闘志の火が・・・・・大剣を振り回し僕を狙おうとする。

 

「パリング!」


 剣士のLv4のスキルツリー開放で習得できるアーツ「パリング」は、タイミングよく武器同しをぶつけることで相手の攻撃をキャンセルして相手に隙を作るアーツだ。

 武器同士を合わせるタイミングが難しく、少しでもタイミングがづれればアーツが発動せずにこちらが攻撃を受けてしまう。

 その代わり決まれば、相手に大きな隙を作ることが出来大技を放ちやすくなるという扱いどころが難しいアーツなのだ。


 コボルトリーダーの腕は、バンザイでもしたかのように頭の上を向く。

 

「スラッシュ!」

 

 がら空きになった腹に容赦なくアーツを打ち込んでいく。


「スラッシュ! スラッシュ! スラッシュ! スラッシュ! スラッシュ!」


 コボルトリーダーの腹部に、横一文字に切り裂かれた後が無数に出来上がる。

 それに伴い、赤紫の血が地面に池を作っていく。

 グラリ。

 コボルトリーダーの体が前のめりに傾く。

 その瞬間、背中にある予備の剣を開いている手で握り、×の字を描くように首の根元を切り裂く。


 血しぶき舞いコボルトリーダーの体が地面に崩れ動かなくなった。


【剣士のレベルが5→7に上がりました。 剣士Lv6、Lv7のスキルツリーが開放されました。 20Spを獲得しました】

【投擲士のジョブを所得しました。 投擲士Lv1のスキルツリーが解放されました。 10Spを獲得しました】


「・・・・フゥ」


 さすがに中級の魔物というだけあって経験値も豊富だ。 剣士のレベルが2つも一気に上がった。

 頭の中に響いてきたメッセージ音を聞きながら、ジャックは一人満足気に微笑む。


(僕一人でもちゃんとやれた。 兄さんの期待に応えられたんだ)


 ジャックは一人拳を握り締める。

 この戦いがジャックという天才をまた一つ上のステージへと成長させたのは言うまでもないことだ。

 ジャックはこれからまだまだ強くなっていくだろう。


「お~い、ジャック大丈夫か」


 ジャックの最愛の兄と妹が自分の下へとやってくる。


(今日はいっぱい褒めてもらおう)


 そう心に誓うジャックであった。

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