弱者とはこうあるべきだと思いました。
「と言うわけで、新しくラクスが眷属になったからよろしくね」
ラクスを眷属化したので、異空間拠点へと連れて行って拠点を案内していた。
そこへ外から戻ってきたジャックとエレンがやって来たので、ラクスの事情を説明していたのだ。
「つくづくアンタは問題事に巻き込まれるねぇ・・」
「でも、彼女の話を聞く限りでは放っておく訳にも行かないと思いますよ。 僕たちも同じような相手に狙われいるんですからね」
「そうだね・・。 けど、ここにいれば奴らも簡単には手を出せないだろうから、その間にエースがこの子を育てるだろ?」
「そういうこと。 と言うわけで、俺は明日からラクスの育成をしないといけないから、そっちはそっちでよろしく頼むよ」
「ま、しょうがないだろうね。 ところで、クインが認めたってことはこの子もハーレムに加えるのかい?」
「そのつもりだよ」
「ハァ、増えるだろうと思ってはいたけど、まさかこんなに早くとはねぇ・・」
「あ、あの・・・ご迷惑でしたら私すぐに出て行きますので・・・」
あ、またラクスの耳がシュンと垂れてる。
ラクスの感情は判りやすいなぁホント・・。
でもそこが彼女のかわいいところなんだよな・・・・・あぁ~モフモフしてやりたい!
「あぁ、そんなつもりで言ったんじゃないから誤解しないでね。 ラクスって言ったかい、アタイはエレンって言うんだこれからよろしくね」
「は、はい! よろしくお願いしますです」
「それでは僕も。 初めましてラクスさん、僕はジャックと言います。 エースの弟です。 これからよろしくお願いしますね」
「ふぁ、ふぁい! よろひくです。 あう~噛んじゃいました・・・恥ずかしいです・・・」
ジャックのイケメンスマイルに当てられたのかな・・・・瞬間沸騰のように顔が真っ赤だぞラクス。
俺の時はそんなことなかったはずなのに恐るべしイケメン・・・・・クッ、ラクスは絶対にやらんぞジャックよ・・。
そしてエレンよ、お主もラクスのかわいさに当てられたな・・・手がピクピク動いてるぞ。
「・・・・・エース、アンタとんでもない者を捕まえて来ちまったね」
「フッ、ラクスはすでに俺の者だ。 誰にも渡さないぞ」
「そうだね・・あの子は絶対に逃がしちゃダメだよエース。 あんなかわいい子絶対に逃がしちゃ・・」
良かったなラクス、エレンに気にいられたみたいで・・。
きっとこの後モフられるだろうけど頑張れよ・・。
「あ、あの・・・・」
「ん? どうしたラクス」
「い、いえ・・・みなさん私がハーフだと知っても嫌がらないんだなぁと思って・・」
「何だそんな事か・・。 ここにいる奴らも元々ランクが低いせいで差別を受けてた奴らだからな、ハーフだからと差別するような奴はここにはいないんだよ。 だからここでは別に遠慮することなんてないんだぞ」
とは言っても、いきなりすべてを信用しろってのは無理か。
今まで差別意識のある世界で暮らしてたんだから仕方ないか・・。
「まぁ、ゆっくり慣れていけばいいさ。 ここにはラクスを嫌う人はいないんだからな」
「はい・・」
その日はラクスの歓迎会ということで、眷属全員でのお祝いとなった。
と言っても、まだ眷属の数自体はエレンの村にいた100人足らずなのだが・・。
ラクスの事は全員に伝えてある。 皆ラクスに同情的で、帝国のやり方には不満の声を漏らしていた。
そのため、ラクスはすんなりとみんなに受け入れられホッと一安心という感じだった。
俺は心配していなかったが、これでラクスも自分の居場所を見つけれたと思う。
その後ラクスは、エレンとクインに散々モフられてたみたいで、こちら仲良くやってくれているみたいだ・・。
兎に角、無事に仲間入りが出来たみたいで良かったよ。
明けて次の日。
「ということで、昨日言ってなように俺は拠点に残ってラクスを鍛えることにするから、今日は俺抜きで迷宮に行ってくれ。 あ、俺の抜けた穴は変わりにムサイ行ってもらうから」
「うむ、我も久しぶりの実戦で腕がなるわい」
「はぁ、それは言いのですが兄さん、ラクスにあまり無理はさせないで下さいよ」
「そうだよエース。 アタイの時もそうだったけど、エースの指導は中々にハードなんだから初めはやさしくしてあげるんだよ」
「分かってるよ。 今日はラクスの適正を見たりするだけだから、そんな無理はさせないって」
何かたった一日で、二人ともすっかりラクスのこと気に入ったみたいだな。
うれしいことなんだけど、あんまり過保護過ぎるのもラクスのためには良くないと思うぞ・・。
「あ、あの私なら大丈夫ですから心配しないで下さい」
「そうかい・・・でも、何かあったらちゃんとアタイ達に言うんだよ?」
「そうですよラクス。 何もないとは思いますが、兄さんも一応は男ですから注意してくださいね」
おい、一応は男って何だよ・・・・・どこからどう見ても男だぞ俺は。
それに何もしないから。
卑猥な事なんてかわいいラクスにしないからな!
まぁ、本人が良いって言うならあれだけど・・・・・。
「あぁもう、こっちの事はいいからさっさと行けよ。 心配しなくても何もしないっての」
「・・・・はぁ、些か不安ですが仕方ありませんね」
これ以上こいつ等をいさせると何を言い出すか分からないので、さっさと追い出してしまおう。
全員がいなくなったところで、ラクスを連れ訓練場へ向かう。
ちなみにラクスには訓練用の服を着させている。 動きやすいシャツに動きやすいハーフパンツ姿で、ハーフパンツに空けた尻尾穴からラクスのかわいい尻尾がフリフリと覗いていて・・・めっちゃモフりたい。
学校の体育で着るような物をイメージして俺が作ったもので、試しに農作業をする眷属達に着させてみたら以外と好評でみんな 使っている。 本当はハーフパンツじゃなくて、ブルマも用意していたんだけど・・・・・クインとエレンに厳しく叱られやめになりました。 一体ブルマの何が悪かったのだ・・・。
さて、まずはFランクというのステータスがどんなものか見てみようか・・。
訓練場に着いた俺はラクスに鑑定をかける。
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名前:ラクス
年齢:14才
ランク:F
ジョブ(0/0):
種族:人獣ハーフ
体力:8
魔力:5
腕力:6
防御:4
俊敏:9
スキル:
Sp: 0P
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初めて見たFランクのステータス・・・それは何とも理不尽なものだった。
改めて言うが、ステータス値はジョブに就くことで成長する。
ランクによって成長率は変わってくるが、兎に角どのランクにおいてもジョブに就かないとステータスは変化しない。
にも関わらず、Fランクはジョブに就くことが出来ないのだ。
この世界を創った神は、何を考えてこのようにしたのだろうか・・・。
「さて、改めて見てもこれをどう成長させたものか・・・まずはランクを一つ上げるか・・」
本来ならランクを上げるのにSpが必要になってくるのだが、ラクスにはそれすらも稼ぐすべがない。
だが、眷属化しているので俺とラクスのSpは共有された状態になっている。
眷属が俺のSpを使うことは出来ないが、俺がSpを眷属に使うことは出来るのだ。
これにより、ラクスのランクを上げることはすぐにでも可能なのだがそれを簡単にしてしまっていいのだろうか・・。
いや、強くなるためにはランクを上げてジョブに就かせるのがいいこというのは分かるのだが、何も持っていないからこそ、苦しみを知っているからこそ、簡単に力を与えて強くしてしまうのはどうなのだろうかと俺は思うんだ・・。
単純な話、ラクスが力を持ったせいで変わってしまうのを俺は恐れているのだ・・。
エレンの時は、彼女がEランク彼女よりもランクが下の者がいるためあまり気にしなかったがラクスは違う。
もちろん、ラクスがそんな子じゃないのは分かっているし、そんな事は俺がさせない。 でも、人と言うのはふとしたきっかけで変わるもので、特に身に余る力や金を持つと変わってしまうことがある・・。 よく小説なんかでも、最弱だった奴が力を手に入れると、それまで自分を虐げて来た奴らに復讐しようとするだろう・・・あれと同じだよ・・。
俺は最弱だからこそ人の汚い部分や、ダメな部分を知っていると思っている。
だからこそ俺は、彼らに心は正しく強くなってほしいのだ。
そのために、力を与えるのではなく力を上げていくほうがいいのではないだろうか・・。
「ラクス、君には選択肢が2つある。 今から君にはそのどちらかを選んでもらいたいんだ」
「選択肢ですか?」
「そうだよ。 今からそれを説明するからよく聞いて考えてね」
「はい」
「まず一つ目、俺の持ってるSpを使ってラクスのランクを上げる。 これをすれば、ラクスはジョブにもつけるようになるしスキルも取れるようになる。 何よりランクが上がれば、ハーフだからと、Fランクだからと差別されなくなるだろう・・。 ランクを上げれば短期間でラクスもSランクに勝てるぐらい強くなれるはずだ・・・」
「改めて聞いてもエースさんの力は凄いですね・・・。 それでもう一つというのは?」
「あぁ、これは俺の考えなんだけど・・・・・ラクスにはランクを上げないでFランクのまま強くなってほしいと思ってるんだ・・」
そう、俺はラクスにこのままのラクスで強くなってほしいと思っている。
それは、ジョブやスキルを獲れないということになるのだが、ステータス自体は俺の指導スキルで上げてやることは出来る。 スキルにしたって、ステータス欄には乗らないがムサイのように純粋な剣の腕で強い奴もいる。
無理にFランクだからとランクをだけを上げて強くする必要はないんじゃないかと俺は思うのだ。
「ラクスはラクスのまま、そのままに君で強くなってほしい・・。 苦しいことも辛いことも知っている君だからこそ、変わらない君でいてほしいんだ俺は・・」
「エースさん・・・」
「もちろん決めるのはラクスだ、俺はラクスがどちらを選択したとしてもラクスを強くしてやる・・・それは変わらないさ。 でも、強さにも種類がある・・・ラクスにはラクスの強さを身につけてほしいと俺は思ってる・・・」
仮に俺の言うことをラクスが聞いてくれたとしても、ラクスが強くなるには相当の時間が掛かる。 ランクの恩恵を受けられないのだから当然だ。 それに、ラクスがFランクであるこも変わらないので、帝国にいる限りランク差別にあってしまうだろう・・。
だがそれでも、ラクスがこのままで強くなうことが出来たのなら、ランクに捉われない強さを身につけることが出来たのなら・・・・・・きっとこの世界は変わるだろう。
俺にこの世界の理を変えることは出来ない・・・・・例え俺が邪神を倒して神になったとしてもだ。
つまり、この世界からランクという存在はなくならない。
世界が変わったとしても、必ずどこかでランクの問題が起こるだろう・・・・それはずっと考えていたこの世界の問題点だ。
ラクスで実験をする・・・・・と言えば聞こえは悪いが、ランクの問題を解決するにはFランクが役立たずという認識を改めるしかないだろうと俺は思うんだ。
Fランクのまま強くなるそれが大切なんだと・・。
「・・・この世界の未来を変えるのは、ラクス達Fランクの存在だと俺は思ってる」
「エースさん・・・・・ずるいですよその言い方は。 そんな風に言われたら、私に選択の余地がないじゃないですか・・」
「そういう風に言ったつもりだからね。 それでも、ラクスが本当にランクを上げたいと願うなら俺はいつでもそうしてあげるよ・・」
「・・・・やっぱりずるいですよエースさんは・・。 助けてもらったときから今もずっと、かっこよ過ぎますよ・・。 私はエースさん達についていくと決めてここにいるんです・・・・・私は、私のすべてをエースさんに預けますので、どうか私をあなたの力で強くしてください」
「それで本当にいいのか? 俺が言っといてなんだけど、かなり大変だし今までのように辛い思いもするかもしれないぞ・・・・・それでもいいんだな?」
「はい、私も覚悟は出来ていますから。 それに・・・・・もう一人ではありませんから、私の事を守ってくれる人が側にいてくれますから私は何も怖くなんかありませんよ」
「ラクス・・。 あぁ、約束するよ俺がラクスの事を絶対に守って。 だから、俺についてきてくれ」
「もちろんです。 何処までも離れませんからね」
そう言って笑うラクスの顔は今までで一番の笑顔だ。
俺はこの笑顔を守り、ラクスをきっと強くして見せる。
そしてここから世界は変わっていくのだ。
Fランクは最弱ではない世界へと・・。




