定番の香りがしました。
この更新を持って、作者はゴールデンウィークと言う名の書き溜めに入ります。 ストック0です。
次回の更新は8日 金曜日を予定しています。
それに伴い、ストーリーの見直しも行おうと思います。
具体的に大きくは変えるつもりはありませんが、誤字・脱字の見直しを主にして、感想によせられている悪い点を少しでも見直そうかと・・。
流石に全部を直してしまうと、話そのものが変わってしまうので無理ですが、直せるところは直して1人でも多くの読者様におもしろいと言ってもらえるようにしたいです。
この作品は、作者が思いつきで始めため曖昧な設定が多々あり自分でも無理やりだなぁと思うことがあります・・。
この休みの間に少しでも修正しますので、次回の更新まで少しお待ち下さい。
朝、俺はベッドからゆっくりと体を起こす。
そして蘇るのは、昨日倒れる前に感じた唇の柔らかい感触・・。
思わず自分の唇に手をやりながら、
「キスされたんだよな・・・・エレンに」
地球にいたときを含めても初めての経験に、昨日は興奮して倒れてしまった・・。
男としては実に情けない姿を見せてしまったと後悔している。
「何だか顔合わせ辛いなぁ・・・」
俺はベッドから起き上がり着替えを済ませると、いつものように食堂へと向かう。
そこではすでに食事の用意がされていて、ジャックやクインをはじめムサイもすでに席について俺が来るのを待っていた。
もちろんエレンもだ。
「おはようみんな」
軽く挨拶を済ませ席に着く。
ちょうど俺の向かいの席がエレンで座るときにお互い目が合うと、
「おはようエース」
エレンはにっこりと笑って答える。
「お、おはようエレン・・・」
一方の俺は、ほんのりと頬を染め上げぎこちなく挨拶を返しす。
「如何したんですか二人とも?」
昨日とはまるで違う二人の反応にクインが気づいて聞いてくる。
「な、何もしてない。 俺は何もしてないからな!」
「フフ そうだね、エースは何もしてないね」
「ちょ、エレン!」
「ん? 昨日二人で何かあったのですか? まさかとは思いますが兄さん、私を差し置いてエレンと疾しいことなどしていないでしょうね?」
「や、疾しいことなんてしてない。 してないぞ! なぁエレン」
「フフ さぁどうだろうね・・・エースは直ぐに気をうしなっちゃったからね・・」
「エレンッ!!」
「兄さん、後で少しお・は・な・し・を詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょうかね フフ」
クインさん・・・目が怖いっす。
マジで何もしてないんで簡便してくださいよ・・。
いいかげんこのブラコンだけは何とかしないとなやばいかも・・・。
その後俺たちは、昨日決めたとおり迷宮に入るために街にでた。
今日入る迷宮は、まずは小手調べということでCランク・・・30層ほどの迷宮になる。 俺たちのランクを持ってすれば今日のうちに攻略可能だろう。
すでに攻略済みの迷宮ということなので迷宮内のマップも昨日ギルドで購入済みだ。その他にも、迷宮に潜る際の注意事項や必要アイテムも確認済みで、昨日のうちにすべて用意済みだ。
すべてにおいて抜かりはない。
すべては女性人がしっかりしているから俺は何もしていなくても問題ないのだよ・・・。
悲しいかな・・・・・俺役立たずみたいです・・。
「ステータスカードを」
迷宮の前でギルドの制服を着た人が言う。
迷宮に入る際は、こうしてステータスカードで挑む迷宮のランクに達しているかどうか調べられるのだ。
そもそも、迷宮のランクは俺たちのランクを参考に決められた、言わば入場制限みたいなものなのだ。 こうやって入場を厳しく検査することで、迷宮での事故死を減らす狙いがあるのだ。
迷宮の基準に達していなければ普通その迷宮には入れないのだが、パーティ単位で入る際は基準を満たす物が2人以上一緒に入るなら、基準を満たしていなくても入ることが可能になる。 俺のランクは最低のFなので1人で入ることは出来ないのだが、3人のランクは隠蔽してのCランクなので上の迷宮に入ろうと思ったら、隠蔽のステータスをそれに変更すればいい。 今のステータスランクはあくまでのものだ・・。
「・・・・・Cランク3名確認できましたのでどうぞお通り下さい」
ここでも俺のことを少し見られたが、それはFランクが一緒で大丈夫か的な心配してくれる感じの目だったので問題ない。
むしろ、あれから街を歩いていても特に酷い差別的な光景は目にしていないし、こうして危険があることには心配をしてくれる人もいるくらいだ・・・ただし、男の娘として見られるのはどうしたものかねぇ・・。
やはり、あぁいう奴が特殊なのだろうか? それとも、このリステルという街がいい街なのか? それは分からないが、今のところはFランクだからと苦労していることはない。
迷宮の中は外の世界とは違い、やはり独特の雰囲気をかもし出していた。
迷路のように入り組んだ石壁が行く手を遮り、あちらこちらから魔物の気配を感じ、気を抜けば危ない罠が作動する。
危険もあるが俺にとっては初めて迷宮・初めての冒険なので、緊張よりもむしろワクワクしているくらいだ。
ここら辺は流石元地球人と言ったところだろうか・・・・・ファンタジー世界への知識は豊富である。
それに今の俺たちならばそうそう危険な目に会うこともないだろ・・・・・何故なら、
「右の道から魔物の反応が5つこっちに向かってくるよ」
「よし、まずはエレンとクインが弓で牽制、残った敵をジャックが殲滅だ。 ジャックを超えて後ろに来る敵は俺が仕留めるから、ジャックは後ろを気にせず動いて敵を蹴散らせ」
「了解です兄さん」
「来たよ!」
前方からは四足歩行で地を駆ける黒毛の魔物の集団が。
初めて遭遇する魔物に俺は念のため鑑定をかけて相手の力を探る。
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ブラックウルフ
ランク:C
ジョブ:下級魔物
体力:105
魔力:85
腕力:90
防御:80
俊敏:120
スキル: 噛み付きLv3 爪Lv3 夜目 集団行動
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こんな感じだ。
狼というだけあって、俊敏は平均よりも少し高い。
攻撃手段も牙と爪を使ったものに、集団で狩をする狼らしく連携攻撃。
一体一体の動きをしっかりと把握していればそれほど危険な魔物でもない。
ギルドで聞いた話だと迷宮のランクは、中に出てくる魔物のランクに合わせたものらしいのでこんなものなのだろう・・。
「行きます!」
「アタイも!」
クインが弓を引き絞り弓を放つ。
その横からエレンが腰の投擲ナイフを手に持って、何本か纏めて投げつける。
「「「キャインっ!!!」」」
弓で一体のブラックウルフは喉を貫かれ、2体のブラックウルフは足にナイフが刺さり身動きがとれなくなる。
「ガウガウッ!」
その間に残りの2体はスピード上げ距離を詰めるが、
「「!!」」
それよりも早くジャックが2体の間を駆け抜け剣で首を撥ねた。
まさに電光石火の早業であった。
ジャックはそのまま後ろで倒れているブラックウルフに近づいていって剣で止めを刺した。
まさに完勝。
Aランク以上のステータスとスキルを持つ彼らに、Cランク程度の魔物は最早相手にならないのだ。
迷宮の魔物というのは変わっていて、素材アイテムを残し倒されると体は迷宮に吸収される。 吸収された体は、迷宮コアから再構成されて再び迷宮内に生み出される。 そうして、迷宮の最深部にある迷宮コアを破壊しないかぎり迷宮の魔物は永遠とリポップするのだ。
ちなみにブラックウルフの残すアイテムは爪と牙だ。 どちらも武器の素材として使われるものだそうだ。
「これくらいなら問題ないみたいだな」
俺はアイテムを拾って戻ってきたみんなに聞くと、
「Cランクですからこんなもんだと思います」
「実践を積むならもう少し強い魔物の方がいいでけど、迷宮になれるにはこれぐらいで問題ないですね」
「むしろアタイはCランクを簡単に倒せるようになったことにビックリだよ・・」
と、全員問題なしとのことだ。
「なら今日中にこの迷宮を攻略するぞ」
「「「おー!!!」」」
うん、やっぱりこのランクだとみんな問題にならないね・・・・分かってたけど。
今俺の目の前では、この迷宮のボスであるBランクの魔物キングオーガと3人が戦っている。
いい忘れていたが、迷宮の階層は5の倍数ごとに通常の魔物よりステータスの高いボスがいる階層になる。 で、これが10の倍数になると迷宮ランクの一つ上・・・ここでいうとBランクのボスが出るようになる。 これはどの迷宮でも同じだ。
10階層・・・・・アサシンウルフ(ブラックウルフの上位種)
20階層・・・・・オークキング(頭に冠を被った豚人間の王様)
そして30層、エレンの村で戦ったベローズと同じ鬼族の魔物キングオーガだ。
特徴としては、赤黒い肌に3m近い大きな体、頭には2本の大きな角があり武器は鬼らしくトゲトゲのついた棍棒だ。
「グラウッオーー!」
キングオーガは威圧を乗せた雄たけびをあげるが、3人はまったく怯む様子はない。
さらに力任せに振られる棍棒は、ことごとく避けられキングオーガの攻撃は3人にまったく通じない。
え、俺は何をしているのかって?
俺は遠く離れたところで3人の戦闘を見てるよ。
だって、俺が手を出しちゃうと3人の訓練にならないじゃないか。
それにこのくらい3人には問題にならないさ・・。
「シッ!」
クインの放った矢がキングオーガの固い肌を射抜く。
「ガァアァァァッァ!」
キングオーガがたまらず声をあげる。
「はぁーっ!」
そこへさらにエレンが短剣片手に突っ込んでいって、足の間をすり抜けるように両足の腱を切りつける。
「グギャラッツッツ!」
グラリと膝を地面について、最早叫びなのか何なのか分からない声を上げるキングオーガ。
「でりゃー!」
そこへさらに、両手に剣持ったジャックが飛び掛り×の字を描くように胸を切りつける。
胸からは赤黒い色をした魔物の血が飛び散り、キングオーガは地面に腰を落とす。
だが流石に鬼族の魔物だ、これだけ傷を負ってもまだ息がある。 やはりこの種族は相当に体が頑丈だ。
しかし今回はこちらも対策はとれている。
「「闇と火の合体魔法! 暗炎魔法ダークフレイムエクスプロージョン!」」
エレン闇、クイン火の魔法を同時に放つ。
合体魔法? そんなの何時練習したんだよ・・。
それにその魔法名・・・・・めっちゃ中二やん。
「グガガガァハァガァー!!」
着弾と同時に黒い炎の塊が柱となりキングオーガを包み込む。
黒い炎はその身を黒く染め上げる。
魔法が消え去るとキングオーガの体は跡形も無く消え去っていて、地面には素材アイテムの大鬼の角と宝箱が2つ残されていた。
ボスを倒すと、こうして素材アイテムの他に宝箱を残すのだ。
「Bランク相手でも問題なさそうだな」
「そうですね。あの時よりはステータスもスキルも変わっていますし、何より体の方が成長していますからね」
「あぁ体の成長はデカイよな。 力の掛け具合一つでも大分違ってくるしな・・」
「それに、魔法を使えるのはやっぱり大きいですね。 オーガみたいに、物理攻撃が効きにくい相手は必ずいますからね」
「俺もあの時は魔法がなくて苦労したからな・・・そう言えば、二人は何時の間に合体魔法何て練習してたんだ?」
「フフ それは秘密ですよ兄さん」
「女には男に言えない秘密が1つや2つあるもんなのさ・・。 それを男が聞くってのは、野暮ってもんだよエース」
え、何秘密にするようなことなのかこれ・・・。
別に教えてくれてもいいと思うんだけどなぁ・・・・・まぁ、聞くなっていうなら聞かないけどさ。
「んじゃ、宝箱の中身確認したら今日は終わりにするか」
そう言って俺たちは宝箱を開ける。
やっぱりこういう何が出てくるか分からない物を開けるのってワクワクするよな。
まずは一つ目。
出てきたのは二つの指輪だ。
転移の指輪 : 二つで一組の指輪。 指輪には、転移の魔法が組み込まれていて指輪を持っている者の元へ瞬間移動できる。
鑑定で見た内容はこんな感じだ。
持っているだけで、お互いの場所を行き来できるのはかなり便利で使えるアイテムだ。
ただ残念なことに数は2つしかない。
俺が一つを持ったとして、もう一つの方を二人のどちらかに渡すとなると・・・・・・流石に揉めるよな。 だって指輪だもん。 それの意味するところは、いくらヘタレな俺でも理解できるぞ・・・というわけで、
「この指輪は2人が持っていてくれ」
俺はエレンとクインに指輪を手渡す。
「いいんですか兄さん。 これかなり役に立つアイテムですよ?」
「いやだって、俺がそれ持っちゃうと二人のうちどっちかはそれを持てなくなるわけだろ・・・・・それだと貰えなかった方が不公平になるじゃないか」
「兄さん・・・そこまで私たちのこと思ってくれていたのですね・・。 ならこれはありがたく頂きますね」
「ありがとねエース」
とりあえず何事も無く終わったか・・。
こういうのは選択を間違えると後が怖いからな・・。
では2つ目だ。
出てきたのは普通の剣よりも大きい大剣に分類される剣だ。
破壊の大剣 : 装備者の腕力を大幅に上げる大剣。 ただし装備者は破壊の化身となる。
う~ん、効果的には中々のものなんだけど、装備すると破壊の化身になるって・・・・・つまり、暴走するってことだろ・・。
そんな危険な武器使えるわけ無いじゃないか。 というかこれ呪いの装備に分類されるんじゃないだろうか?
「効果は中々なんだけどなぁ・・・・・ジャックどうするいるかこれ?」
「いえ、僕は基本剣を2本持ちますので大剣は遠慮しておきます」
「なら武器やにでも売ってお金にするか。 どうせ持ってても誰も使わないだろうし」
それには特に反対の声は上がらなかったので、この武器は後で売りにいくことになった。
「さて、それじゃぁ地上に戻りますか」
ボス部屋の奥には、地上へと転送してくれる特殊な装置がある。 これを使えば、迷宮の前まで一瞬で戻れるのだ。 ボス部屋以外からとなると、別口で売っている帰還石というアイテムが必要なってくる。 この帰還石を地面に叩きつけて割ることで、予め帰還石に記憶させておいた場所に一度だけ瞬間移動することができるのだ。
今回は使わなかったが、もっと高いランクの迷宮だと必要になってくるだろう。
俺たちは転送装置起動され地上へと帰還した。
地所へと戻った俺たちは、二組分かれて行動することになった。
ギルドに素材アイテム売りに行く組と武器屋に大剣を売りに行く組だ。
で、話し合いの結果ギルドにはエレンとジャックが、武器屋には俺とクインで行くことになった。
エレンとクインが揉めるかと思ったんだけど、すんなりとクインが俺と一緒に行くことで話が纏まってしまった。
どうやら今朝というか昨日のことで、エレンはクインより先にあれをしてしまったことを気にしていたみたいで、今回はクインに譲ることにしたみたいだ。
「と言う訳でエース頼んだよ」
いや、それを俺に言われても困るんだが・・。
要するに、クインに昨日の埋め合わせをしといてくれってことみたいだ。
まったく。
とうのクインは俺と二人ということで、3割り増しで喜んでいる。
「よし、行くかクイン」
「はい兄さん♪」
俺たちは二人を見送った後、武器屋に向かうため街の中を歩き出す。
俺の左腕にはクインが抱きついている。
「フフ 兄さんと初めてのデートです」
「デートって・・・武器屋まで一緒に行くだけだろうが・・・」
「好きな人と二人で出掛ければ、それはもうデートなんですよ兄さん」
「そういうもんなのか・・・・まぁ、こっちにからゆっくりとすることなんてなかったから、こうして二人だけでいるのもいいもんだよな」
「はい♪」
こういう時に、気の利いた会話でもできればいいんだけどな・・・・・折角二人でいるのに・・。
つくづく俺ってこういうの苦手だよな。
「きゃーーー!」
「うん?」
俺が自分のヘタレに気を落としていると、路地の向こう人通りの少ない道のほうから女の子叫び声が。
「クイン」
「はぁ、仕方ないですね。 ですが、まずは様子見ですからね」
「分かってるよ」
昨日の今日だ、俺だって問題ごとは避けたいから気をつけるよ。
俺たちは声のしてきた方に走って向かう。
そして、声のした通りに辿り着いてみると・・・・
「へッ、Fランクのゴミが黙って俺たちに従ってればいいんだよ」
「いや、やめて、やめてください! 誰か、誰か助けてえぇ!」
「へへっ、叫んだって誰もお前なんか助けようとしねぇよ」
嫌がる少女に詰め寄るガラの悪い男の姿が。
何ともまぁ、これまたテンプレ的に展開に遭遇しましたよこれは・・。




