本当の目的を教えられました。
本日2話目です。
帝国の連中との戦闘から3日。
俺たちはエレンの村に今だ滞在中だ。
その理由としては、村の連中が俺たちについてくるかどうか相談しているからだ。
当初の約束通り、一度村にエレンを送り今後どうするかを尋ねたところ、エレンは即答で俺たちについていくことを宣言してきた。
まぁ、ここまでエレンを育ててきたんだから最後まで面倒を見たいと思っていたし、この1ヶ月エレンにはかなりいい生活をおくらせていたので、元の生活のことを考えれば俺たちの下を離れる選択はなかっただろうな・・。
で、エレン一人村を出るとなるといろいろと問題が出てくるそうで、具体的に言うと、この村は薬剤師のジョブで作る薬が村が主な収入源なのでエレンがいなくなると、村の薬剤師の数が減ってしまい村の収入が減ってしまうそうだ。 今でも村人はぎりぎりの生活を送っている状態なので、一人減って収入が減るのは死活問題になってしまう・・。
そこで俺はエレンと話し合い、村の連中を全員俺の眷属にして連れて行くことを提案したのだ。
俺の異空間拠点なら、衣食住には困ることはないしお金の心配もない。
さらに言えば、彼ら村の人も俺の育成師のスキルを使えば、ランクを上げてステータスを成長させることもできる。
そうなれば、新しくジョブを取ることも出来て自分達の生活にも困らなくなるだろう。
ということで、現在村の連中とエレンとで今後のことについて話し合いが持たれているところなのだ。
流石に1,2日で決められることではないだろうから、ゆっくり話しあって決めてくれとエレンには伝えてあるし、もし俺に着いてくるなら眷族になる必要があるのでそれも話すよう言ってある。
それに、俺たちは帝国所属の連中と対立したことになる。
今はまだ、俺たちの情報も伝わっていないだろうから直ぐにどうこうはならないと思うが、今後この村が巻き込まれる可能性は十分にあるし、別の監視役が帝国から派遣されてくることも考えられる。
正直、村の人を巻き込んだ形になってしまって申し訳なかったのだが、帝国とは相容れない考えなのでこの大陸にいる間はどうしても争うことになってしまうだろう。
出来るだけ早くこちらの大陸を見て周って最弱っ子達を集めて、王国側の大陸に行くことを考えないとな・・。 まぁ、それもまだ大分先にはなると思うけど・・。
なので、もうしばらくはこの村で待機することになるだろう。
それとは別に、あの後起きたことを軽く話しておこうと思う。
まずはデブについてだが、あいつはすでに村の外に放逐されている。
元々あいつは、金で地位を手に入れたらしくCランクでありながら禄に戦闘訓練もせず遊び呆けていた愚か者だそうだ。
戦ったクイン曰く、「弱すぎて話しにならない」だそうだ。
まぁ今頃は、生き残っているなら帝国に戻って俺たちのことを上に報告している可能性があるが、はたして奴の実力で魔物のいるフィールドを踏破することが出来るのやら・・・それに帝国に辿り着けたとしても奴の命があるかどうかも分からない。
帝国は完全実力主義だ、弱い人間に居場所等あるはずがないのだ。
そういう意味では、俺がぶっ飛ばしたベローズも生きていれば最早帝国にその居場所はないかもしれない・・。
次にジャックと戦っていたムサイだが、彼はジャックの強い希望で剣術指南役として俺たちと行動を共にすることになっている。
彼が帝国に従っていたのは、あくまでそこに強い人が集まるからで、帝国に対しては何ら思うところはないそうで敵対しても問題ないそうだ。
ムサイは強さを求めることに関して貪欲で、俺がジャックに教えたアーツを見て俺の眷属となり俺の指導をうけようともしている。 ジャックに負けたことで自分はまだまだ弱いということを思い知ったとも言っており、いずれジャックとは再戦するつもりでもいる。
だが、今のジャックはステータスに頼った戦い方をしていて本当の意味で剣を使いこなしているとは言えないので、そこでムサイがジャックに剣を教え、俺はムサイにアーツやそれ以外を教えることで話が纏まった。
俺としては、戦を知る頼もしい人が仲間になってくれたのはありがたいことだし、ジャックのより一層の成長にも繋がるってくる。
いずれこの二人は、俺を除いて最強の逸材になるかもしれないな・・。
他二名に関しては生死不明である。
え、デュロスはエレンが殺したんじゃないかって?
まさか、あんな奴殺す価値もない人間だ。
そんな奴を俺が育てたエレンに殺させるわけないじゃないか。
気絶させてほったらかしにしていたら、何時の間にかいなくなってたんだよあいつは。
大方真っ先に逃げだして、今頃帝国にでも向かってるんじゃないかな・・。
ベローズに関しては、さっきも言ったように何処まで飛んでいったやら分からないので知りようがない。
まぁ、確認するつもりもないのでほっとけばいいだろう。
というか、今更ながら自分の力にはビックリだよホント。
人間やめちゃったのかね俺・・。
そうそう、それで話しておかないといけないのが俺の変化したステータスのことなんだけど、半神人になったことで最高神様からのお告げが聞こえるようになった。
戦いが終わったその日の夜だったかな・・・気づいたら俺は、またあの謎の空間にいてそこで最高神様と再び言葉を交わすことになったんだけど、そこで最高神から説明された内容がこれまた予想外のものだったのだ。
まず、俺の存在は生まれたての新しい神様・・・という扱いになるらしい。
そもそも神様というのは、上位の名のある神様を除いて自分で創りだした世界を管理することが主な仕事だそうだ。
で、ここで今回俺がこのダイヤノーズという世界に何故呼ばれたかに繋がってくるのだが、このダイヤノーズという世界を創った神様は、ランクという人間の力を縛る世界の理を創り自らも神の力を持ったままその世界に転生してしまったのだ。
みんながもっとも分かりやすい表現をするなら、神をやめて邪神に落ちたと言えば判りやすいだろう。
自分に都合のいい世界を創り、自らはその世界のルールに縛られない神の力を持ったままその世界で好き放題しているらしい。
しかもそういう世界というのは、他の神様でも手が出せないよう神の理として決まっているらしく最高神様も手が出せない状態なんだとか・・。
そこで呼ばれたのが俺というわけだ。
他の神様が直接その世界に干渉することは禁じられているが、間接的に力を渡した者を送り込むのは可能ということだ。
しかも、この条件に選ばれて世界を渡る人間というのは神に昇華する可能性を持った者に限られるそうで、その世界を創った神のルールを破ることで神へと昇華するのだ。
今回の場合だと、先の戦闘で俺は自らのことを最弱だと認め、それでも最強であろうと強く願ったことで、邪心が創りだした世界の理ランクの存在を破る条件を満たし半神人になったみたいなのだ・・。
半神人に覚醒したことで、こうして真実を告げられた俺に最高神様はこう言った。
「邪神となった神を倒しその世界を元のあるべき形に戻すこと、それが貴方をその世界に送った本当の理由です」
さらに最高神様はこうも言っていた。
「そして、邪神を倒した後のその世界を管理するのは貴方の仕事です」
最後にこうも言った。
「邪神を倒し新たな神へと成長しなさい」
今の俺は半分神様だが半分は人間。
だが、ダイヤノーズという世界を創った邪神を倒すことで俺は名実共に神様になるそうだ。
そして、神になった俺は邪神に変わりこの世界を見守っていくことになるらしい。
いやはや・・・・・驚きすぎて言葉がでないとはこのことだ。
しかも拒否権はすでにないと来てる・・。
何故って?
それは今回俺が半神人になったことで、邪神に俺のことが気づかれているからだ。
邪神は俺を殺しに来る。
同じ神の力を持った俺の存在は、邪神にとって邪魔者でしかないとのこと・・。
今後、この世界で俺は邪神に命を狙われ続けるだろう・・・・それを回避するには、邪神を倒し俺がこの世界の神になるしかないそうだ。
何とも極端な話だろ・・。
とは言え、半とはいえ神になったことで俺にも世界に干渉する力が僅かばかり使えるらしい。
それが異空間拠点であり、コアの存在だ。
元々これらは、俺が神になった時のために用意されていたもので、俺が半神になったことで異空間は現実の世界と同期が可能となった。
どういうことかと言うと、異空間拠点の中そのものがダイヤノーズ世界第三の大陸として現実の世界に創り出せることが出来るようになったらしい。
それだけ聞けばなんのことだか分からなかったが、神の力の干渉で新しい大陸を作り出すことが出来るということらしい。 その元となるのが、最高神様から渡された異空間拠点でありコアだということだ。
ただ最高神様が言うには今すぐに大陸を作るというよりは、眷属化で拠点に住まわせる人を増やし、先に現実世界同期後の生活体系を整えてからにした方がいいとのことだ。
異空間拠点の状態なら、外から干渉されることも危険に襲われることもない。
それに、衣食住が整っていて生活にも困らないのでゆっくりと開拓を進めることが出来る。
ちなみに拠点の広さは二つの大陸と同じ大きさで現在はまっさらな新地状態で、森・川・山・洞窟・魔物などのオプションはコアから自由に選択可能である。
まさに、自分の王国を1から作り上げることの出来るのだ。
まぁ、そっちは世界を周って人を集めながらゆっくりとだな。
俺の本来の目的は、あくまで最弱っ子を育てることにあるのだからな。
最高神様から新たに教えられたのはそれくらいで、また何かあればこうして呼んで知らせるとのことだ。
あぁそれと、コアに関しては俺の権限ですでに自由に使えるとのことなのでアレも使えるようになってるそうだ。
頑張って魔力溜めてたのにそりゃないぜ・・・・。
そんなこんなありながらの3日間だったわけですよ。
今後のことについてだけど、村の人たちがどうするかは分からないけど、コアを自由に使えるようになった今俺は時間操作付与を使って体を成長させようと思う。
具体的には、外の時間で3ヶ月・訓練場の中の時間で12年ほど時間を進めようと思う。
俺は17、ジャックとクインは16になる計算だ。
この世界では成人の年齢は15歳だそうだから、外の世界を見て周るにもそのくらいがちょうどいいだろう。
尚、この世界では近親相姦という言葉が存在しない。
つまり、何が言いたいかといえば兄妹でも結婚できるそうだ。
それを聞いたクインは、
「兄さん、私と結婚しましょう!」
何てこと言い始めやがった。
おい、誰だよクインにそのこと吹き込んだ奴は・・・。
そのせいでクインが、「早く大人になりましょう!」って煩いんだぞ。
すっかりその気になっちゃって・・・・・。
俺一言も結婚するなんて言ってないんだけどね・・。
何か一気にアレ使うのが嫌になってきたよ・・・・・いや、クインのことは普通に好きだけど、何か結婚となると話は別っていうか・・・・・・ほら、恋愛と結婚は何とやらって言うだろ・・。
ようは、ニートだった俺にはそこら辺の自信がないんですよ。
つか、兄妹同士で結婚できる世界ってどうよね・・・・・・一体何を考えて邪神はこの世界を作ったのやら・・。
とりあえず、そこら辺のことはぼかしつつしばらくは曖昧で行こうと思います。
すいませんヘタレで・・・。
「エースちょっといいかい?」
拠点の俺の部屋にエレンが尋ねてきた。
村に滞在しているとはいえ、余程のことが無い限り俺たちは拠点で生活している。
2日前にムサイが眷属になってからだと、1日の大半を訓練場で過ごし、ジャック共々指導スキルで扱きまくるのがここのところの日課となっている。
「ん、エレンか。 いいぞ、部屋に入って座ってくれ」
エレンは部屋にあるイスに腰を下ろす。
「で、エレンが来たってことは話し合いが終わったってことでいいのか?」
「あぁ。 みんなで話し合ったんだけど、アタイを含めこの村の連中はアンタに従うことにしたよ」
「それはそれは。 ちゃんと眷属のことも説明した上でのことなんだよな・・。 一緒に来るつもりなら、俺は全員を眷属にして育てるつもりだぞ?」
「問題ないよ。 そのことも含めてちゃんとみんなで話し合ったからね。 ただ、昔のアタイと同じで眷属=奴隷みたいな扱いをされるんじゃないかってみんな怯えててね・・・」
「成る程、それで説得に時間がかかったと」
「それと、やっぱりみんな帝国の仕返しを恐れているというか・・・アンタと一緒に行くと自分達も戦わせられるんじゃないかって思ってるみたいでね・・」
「う~ん、どうなんだろうなそれは・・。 帝国の連中に関してなら問題ないんだけど、俺が半神になったことで今度は邪神からも狙われるようになったらしいからな・・・・俺としてはそっちの方が問題だよ・・」
ぶっちゃけ半神になった今なら、人間相手ならどうとでもなるだろうけど、相手が邪神となるとね・・・・仮にも元神様なのだからどれくらいの強さなのか分からない。
「けど、それでも俺たちについて来るってことは、みんな危険は覚悟の上ってことでいいのか?」
「そうだね。 アタイが自分のステータスを見せて強くなったことをみんな知ってるから、アンタの所にいれば自分も強くなれるって思ったんだろうね・・。 前にも言ったけど、アタイらみたいにランクの低い奴らは死ぬまで不当な扱いを受け続ける。 それは、性格や顔が悪いとかじゃなしに、ただランクが低いというだけでだ・・。 アタイらはもう、ランクなんていう人を縛るような物で不当に扱われるのは嫌なんだよ。 アタイ達はみんな強くなりたいそれだけさ」
「エレンも成長したもんだねぇ・・。 心配しなくても、俺のところにいる限りは眷属全員を守ってみせるし、ちゃんと全員を最強に育ててみせるさ」
「あぁ、期待してるよご主人様♡」
「ご主人様・・・いい響きだなそれ・・。 兎に角、明日の朝から村の連中全員と眷属契約をするから全員を一箇所に集めておいてくれ」
「了解だよ。 みんなにはちゃんと伝えておくよ」
そういうとエレンは部屋から出て行った。
翌日、俺は村人全員を無事眷属にすることに成功した。
一気に眷属が100人も増えることになったが問題はない。
彼らには異空間拠点に入って生活してもらうことになる。
新しく変わった異空間拠点は、中に入ると屋敷の玄関ホールに出るところは変わりない。 だが、玄関のドアを開けると一面何もない空間が広がっている。
ここに新しく眷属にした連中で第三の大陸を作り上げていくことになるのだ。
まぁ、最初は村あたりから始めることになるけどね・・。
と言うわけで、彼らにはすでに俺が用意しておいた村で生活してもらうことになる。
しばらくの彼らの仕事は、村の生活環境を整えることだろ。
最低限、衣食住は俺が用意しているので彼らにはまずこの村を中心に土地の開墾をお願いする。
コアでやってしまったほうが早いのだが、こういうのは何でもかんでも楽なものに頼るのはではなく、自分達の手で進めていくことでみんなの気持ちを一つにする必要があるのだ。
ようは、仲良くやりましょうってことで・・。
「ジャック、クイン、準備はいいか?」
「はい兄さん。 いつでもOKです」
「私も準備万端です」
俺たち3人は訓練場の前にいる。
そう、いよいよアレを使うときが来たのだ。
「それじゃぁ、エレン、ムサイ、俺たちは外の時間で3ヶ月の間訓練場に篭ることになるから、その間のことは頼むね」
「任せておくれよ。 と言っても、アタイたちも拠点の外にでるわけじゃないんだし、そんなに心配する必要はないと思うよ」
「そうだな。 ここに入れるのは眷族になった者だけだそうだし、そうそう問題は起こるまいよ」
「まぁそうなんだけど、アレを使ってる間は外に出れなくなるから心配はするよ・・」
時間操作付与は、空間の時間を無理やり捻じ曲げで時間を操作するものなので、一度その中に入ると決めた時間が経つまでは外に出ることが出来なくなるのだ。
「あ、俺がいない間にコアで大陸弄ってていいからね。 成るべくだけど開拓を進めておいてくれると助かるしね」
「アタイたちで勝手に進めちゃっていいのかい?」
「エレンたちの村の辺りならね。 あそこらへんは現実世界と同期させたら、エレンの領地にするつもりだしね」
「アタイの領地だって? アタイに貴族にでもなれってのかいアンタは・・・」
「そういう階級制度を作るかはわからないけど、管理する人間は必要だと思ってるよ。 あ、ムサイも適当な場所に好きな物作っちゃっていいからね。 土地はまだまま一杯余ってるし・・」
「うむ。 ならば我は己を鍛えるために修行場でも作るとするかな」
ハハ、ムサイはホントに強くなることしか考えてないんだね・・。
それに二人には、あの戦闘で育成師のレベルが上がり新しく手に入れた教官スキルをすでに渡してあるので、新しく眷属になった人たちの育成もお願いしてある。 教官スキルは、俺の指導・解説スキルを一つに纏めたようなスキルで、眷属になった者にこの教官スキルを与えることで俺が直接指導しなくても、教官スキル持ちが教えることでステータスを成長させることが出来るようになった。
二人には俺がいない間に、新しく眷属になった者たちの育成を頼んである。 戦闘に関してはムサイが、サポートに関してエレンが、それぞれ素養のある者を見つけて育てるのだ。 ただ、ランクを上げること自体は俺しか出来ないので、新しく眷属に加わった人はすでに全員Dランクまで上げてあるので追加でジョブも所得可能だ。
3ヶ月でどれだけみんなが強くなっているか楽しみだ。
「まぁ、兎に角後のことは頼むね二人とも。 行くよ。 ジャック、クイン」
「「はい。 兄さん」」
俺たちはエレンとムサイに後のことを頼み、訓練場に入る。
訓練場の扉が閉まると、そこは時間の流れから外れた白い部屋に・・。
「さぁ二人とも、今から12年分の訓練を始めるよ・・。 いつも以上に厳しく行くからしっかりついて来るんだぞ」
「「はい。 兄さん」」
うん、相変わらずこの二人はかわいいなぁ。
そんな二人を守るためにも、俺はもっともっと強くならないとな・・。
敵は邪神・・・・・・神様なのだから。
「さぁ、|最弱≪さいきょう≫の育成を始めようか」
この話で第1章完です。
明日は閑話のようなものをはさんで、土曜日から2章帝国編を始めます。
ただ、2章の書き溜めは進んでないので10万字を超えたら一度書き溜めの為に休もうかなと考えていますので予めご了承下さい。
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