エースの戦い。
頑張った。
自分的にいい出来だと思いますがどうでしょう?
ベローズは自身の体と同じくらいある大剣を片手で構え俺を睨む。
2mを超える体から威圧感がもれる。
「やってくれたな小僧。 お前達は生かして帝国に連れて行こうと思っていたが、俺を怒らせて生きていられると思うなよ」
「怒らせる? 俺何かしたかな・・・ちょっと屋敷の扉をぶっ壊して侵入しただけなんだけど?」
「ふん、口の減らん小僧だ・・。 まぁいい、どの道こんな村の監視など退屈していたところだ、Dランクの魔物を単独で倒せるくらいだ・・・少しは俺を楽しませてくれよ」
そう言うとベローズが大剣を大きく横に振る。
その凄まじい風圧が砲弾のように地面を抉りながら俺へと飛んでくる。
「っと、危ねぇないきなりなにすんだよ」
寸での所で横に避けて回避するが、先ほどまで俺が立っていた場所には半円状の道を作るように地面が抉れている。
(何て力してんだよ・・・ただ剣を振っただってのにこの威力か・・。 こりゃ一筋縄じゃいかないな・・・流石はBランクかな・・。)
そう、今の一撃はベローズがただ大剣を振って出来たものでアーツ等を使ったわけではない。
あれは純粋な腕力から作り出された攻撃なのだ。
「ふん、この位で驚いていては到底俺は倒せんぞ」
大剣を片手で肩に担ぎ不適に笑うベローズ。
俺も腰に下げた剣を抜いて構える。
そして俺から打って出る。
足に思いっきり力を込めて地面を蹴る。
そのままスピードとパワーを乗せ剣を振り下ろす。
ベローズは片手で大剣を振って、俺の剣とまっこうから打ち合いにくる。
ガチッーーーーン!!
剣と剣が激しくぶつかり合う音が響きわたる。
俺の渾身の力を込めた一撃は、ベローズが片手で振った剣にあっさりと止められてしまった。
それだけならまだしも、鍔迫り合いになった今体格と腕力に勝るベローズに、俺は段々と押し込まれて来ていて・・・・・
「フン!」
そのまま腕を振り切られて体が宙を舞う。
空中で体勢を立て直して何とか着地するが、体格で負けているとはいえステータス上では大きく上回るはずの相手に押し負ける形になった。
俺は即座にベローズに鑑定を掛ける。
ステータス上で言えば、腕力を除いて俺のほうが上。
ただ、腕力一点に限ればベローズの腕力は900を超えてSランクの数値に迫っている。
(完全に脳筋だろうが。 腕力900越えって・・・他の数値は300後半程度しかないのにどういう事なんだ・・)
俺は即座にベローズに鑑定を掛けて原因を探る。
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名前:ベローズ・デ・バイシュルク
年齢:29歳
種族:鬼人族
ランク:B
ジョブ(3/8):剛力無双Lv8 ビルダーLv5 バトルマスターLv7
体力:395
魔力:340
腕力:955
防御:390
俊敏:350
スキル: 大剣術Lv10 腕力強化極大 身体強化強 肉弾戦Lv8 身体硬化
称号: 強靭な体 戦闘狂
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腕力強化極大:腕力の数値に+300
身体強化強:魔力を除くすべてのステータスに+150
肉弾戦:体力・腕力・防御に+100
強靭な体:鬼人族特有の剣をも通さない強い体。 戦闘時の魔力を除く全ステータスアップ
戦闘狂:戦うことが大好き。 戦闘時魔力を除く全ステータスアップ
「・・・・・」
俺はその鑑定結果に言葉を失う。
(脳筋にも程があるだろうがぁっ! スキル全部ステータス上昇系で称号までそれって如何なんだよこれ?! )
まず、ベローズの種族は人間ではなく鬼人・・・つまりは亜人種だったことに驚く。
ベローズの容姿は、体の大きさが人より大きいことを除けば人間とほぼ変わりがなかった。
(亜人って、ゲーム何かだと角があったり肌の色が極端に違ったりするんだけどなぁ・・そう言う特徴が全然ないから普通に人間に見えるよ)
だが、鬼人族と分かればその腕力の異常さにも納得がいく。
一般的に亜人と呼ばれる種族は、魔物が進化した種族と言われていてその身体能力は種族ごとに特化したような能力を持つと言われているからだ。
ただ、亜人種というのは好戦的な奴が多く、鬼人族はその中でも戦闘に特化した種族で自らの体を武器にしている。
それはジョブにも現れているように、剛力無双は鬼人族の持つユニークジョブであり腕力を大幅に上げるスキルを持っている。
他の二つのジョブもランクアップした上位のジョブであり、そのスキルはやはりステータスを上げるものに偏っている。
さらに言うなら、称号の効果でステータスに表示はされないがさらにステータスが上がっているはずなので、戦闘時に限れば今のベローズは腕力が1000を越えているはずだ・・。
(腕力1000越えねぇ・・・・俺の防御が500ちょいだとしても倍以上の腕力があるわけか・・。 一発でも当たれば死ぬね・・)
それに、これはあくまでステータス値上の数値であり、何度も言うようだが現在の俺の体は5歳児のものだ。
はっきり言って、ステータス目一杯の力をだしてしまうと体がついてこられないかもしれない・・。
かと言って、手を抜いて勝てる相手でもないだろう。
そんな体であの一撃を食らえばどうなるかなど目に見えている・・・。
「つまり、俺はノーダメージであの怪物を倒さないといけないわけか・・。 はぁ、つくづくこの体には不便を感じるなぁ・・・早く魔力を溜めて体を成長させないとな・・・・」
こいつは予想外の大物に当たってしまったかもしれないな・・。
安易にステータスに頼りきりすぎて、こういうときの対策を練るのを忘れていたか・・。
とは言え、今はこの体であの怪物を倒さなければならないのだが・・。
「さて、どうしたものかなぁ・・」
俺が剣を構えたまま動かないでいると、
「ふん、こんのか? ならば俺から行かせて貰うぞ!」
大剣を担いだまま、ベローズは俺に突っ込んでくる。
「チッ、つくづく脳筋だな。 こっちは打ち合うわけにもいかないってのによ!」
打ち合ったところで押し負けると分かっているので無理はしない。
大剣の振り下ろしをかわし、そのままベローズの懐に潜り込んで剣を叩き込む。
ガツン!
まるで金属を素手で殴ったかのような衝撃が手に伝わってくる。
「くっ、何ちゅう硬さだ」
俺の剣は服の上で止まり、1ミリたりともベローズに傷を負わせることは出来ていない。
スキル、肉体硬化の影響のせいだ。
このスキルは、自らの体を鉄のように硬くすることが出来る。
使用時に、スキル使用者が動けなくなるというデメリットがあるのだが、ベローズの・・・いや、鬼人族の体をもってすればスキルと合わせて大抵の物理攻撃を防ぐことが出来る。 つまり、肉体硬化のデメリットはベローズにとってデメリットなどではない。 むしろ、肉体を武器として戦う鬼人族には相性がいいスキルなのだ。
俺は即座に剣を引いてベローズから距離をとった。
剣を持つ手が未だにジンジンする。
「ふん、貧弱な攻撃だな」
剣がぶつかった腹の部分を擦りながらベローズは言う。
「バグキャラにも程があるだろこれ・・・魔法が使えない俺に、物理でどうあれと戦えと・・・」
アーツならダメージを与えられる可能性はあるが、ベローズの肉体硬化を破るアーツとなるとそうそう使えるアーツは多くない。
それに、それだけのアーツを放とうと思ったらこちらも隙が大きくなる。
反撃されて一撃でも貰えばそれで俺は終わりだ・・。
なるべくならもっと確実にダメージを与える方法を取りたい。
ゲーム何かだと、こう言った脳筋の相手には魔法攻撃が有効なのだが、生憎と俺は魔法が使えないしジャックやクインも同じだ。 つまり、二人が助けに入るのを待っても意味はないということ・・・別の攻撃方法を考えなければベローズを倒すことは不可能ということだ。
「武器の攻撃は通らない、魔法も使えないとなると・・・・・やばいかな、割と摘みな感じがするぞ・・」
思いつく限りでは、クインがやったように特殊調合の薬をぶつける方法と弱いアーツでちまちまとダメージを与えていくことくらいしか思いついていない・・。
「ふん、些か期待してみたもののやはりこの程度か・・・つまらん。 弱者は弱者らしく、さっさと地面に這い蹲るがいいわ!」
大剣を横に振っただけの衝撃波。
最初と同じ攻撃が俺を襲う。
「だからその一撃も反則だっての」
衝撃波を横に飛んでかわす。
続けざまに次々と俺に向かって衝撃波が迫ってくる。
ベローズは一歩も動くことなく、どこまでも腕力に任せて大剣を振るだけだ。
俺は反撃の糸口さえも与えてもらえず、ただ逃げ回るばかりだ。
「ちょこまかと。 ならばこれでどうだ」
ベローズは自分の足元を大剣で切りつけて地面を砕くと、
「岩砕陣!」
砕いた地面の岩を、衝撃波に乗せて共に打ち出した。
「マジ、ここでアーツかよ!」
スキルツリーから開放される武器系アーツではなく、独自に作り出したオリジナルの武器系アーツ。
それを今使ってくるとは・・。
俺は衝撃波をかわすが、避けた先に今度は岩の塊が俺を襲う。
「旋空列破!」
剣を突き出すように構え、体を素早く回転させる。
飛んできた岩は、俺にぶつかる前に周囲に出来た風の壁に切り刻まれて粉々に・・。
「ほう、今の攻撃を防ぐか。 それに、小僧も自らのアーツを生み出していたか・・・成る程、その年で持っている力にしては大したものだな。 だが、その様な貧弱な技ではやはり俺の体には傷をつけることは出来んな」
ベローズは大剣片手に再び俺との距離を詰めてくる。
「くそがっ、刺突大砲!」
腕をグッと後ろに引いて一気に前へと突きだす。
それにより、圧縮された空気の弾丸が剣先から放たれベローズを襲う。
「むん!」
ベローズは大剣の面の部分を体の前に向け、俺の放ったアーツを大剣の面で受け止める。
空気の弾丸が大剣に触れ、ベローズの突進が一瞬止まる。
が、腕力に任せ大剣を振り払うことでベローズは俺のアーツを無効化して見せる。
その瞬間、大剣を振り払いできた隙をついて再び俺は懐に潜り込み、
「旋空列破!」
渾身のアーツを打ち込む。
「むぐっ?!」
脇腹の辺りを浅く切り裂きベローズの鋼の肉体から鮮血が迸る。
だがそれも掠り傷程度の傷だ。
「くっそ、完全に不意を突いたってのに剣が通らないなんて・・・」
再び距離をとろうと動いた瞬間、
「ぐっ・・・・がはっ!」
横合いから丸太のような腕が伸びてきて俺を捕らえる。
何とか剣を出して直撃は回避したが、剣を真っ二つに折られてそのまま後ろに弾き飛ばされる。
地面にまるでボールのようにバンバンと体を打ち付けられ、そのまま後方の壁に背中から激突して止まる。
「痛っつー、やっとの思いでダメージを与えたってのに一撃で引っくり返されたらたまんねぇぞこれ・・・」
唇の端からは血が滴り落ち、剣を握っていた右手首は今の一撃であらぬ方向を向いている。
他にも地面に何度も体を打ち付けられたせいで、体中の骨が軋む音がする。
ただのパンチ一発でこの有様だ・・。
戦略も技も関係ないこの理不尽なまでの一撃。
それこそまさに一撃必殺だ。
「こんなバグキャラどうしろって言うんだよ・・・」
安易に敵を見誤り過ぎてことを焦ったか・・。
勝手に強くなったと思いこんで、強さに溺れたのは俺のほうか・・。
もともと俺は、人を育てることは好きでも戦うことは苦手だったはずなのに・・。
どうしてこうなった・・。
何故こうしようと思った・・。
あれ程慎重に動くべきだと分かっていたはずなのに・・。
結局は自分も、ちょっと強い力を手に入れて強くなったと思いこんでいたのか・・。
何だ、自分もこいつらのことは言えないじゃなか・・。
調子に乗ってたのは自分も同じか・・情けないなぁホント・・。
俺はいつもこうだよ・・。
昔からそうだよ・・。
人に期待を抱かせておいて自分はダメ・・。
人には教えれても自分にそれは出来ない・・。
そのせいで結局周りからおいていかれる・・。
周りは上へ上へ、俺は下へ下へと・・。
どれだけ頑張っても俺は、俺だけは結局一番下にいる・・。
気づけば俺はいつも最弱に・・。
そこは俺の指定席・・。
他の誰かがいるのは許せない・・。
だから俺はその場所から人を追い出す・・。
最弱を育てることで最弱という場所を俺だけのものにするため・・。
俺こそ最弱であるために・・。
俺は最弱を育て上げるのだ・・。
誰のためでもない、俺の最弱を守るために・・。
俺こそ最弱のキャラなのだから・・。
そう、すべては何も変わらない。
俺こそが、最弱最強のキャラなのだから。
その瞬間俺の体が謎の光に飲み込まれ俺の意識は暗転し・・・
【世界の理の破壊に成功しました。 ユニークジョブ最弱無敗を所得しました。 ユニークジョブ最弱無敗を所得したことで、育成師を除くすべてのジョブが最弱無敗に統合されます】
【ユニークジョブ最弱無敗を所得したためステータスが変化しました】
【ユニークジョブ最弱無敗を所得したためスキルが変化しました】
突然頭の中にメッセージが響いてきて、体の奥底から力が湧き上がる感じが・・。
そして光が晴れると、体の傷や痛みはなくなり無傷の状態で立つ俺がいた。
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名前 エース
年齢:5才
ランク:F
ジョブ(∞):育成師Lv4 最弱無敗LvEx
種族:|半神人≪デミゴット≫
体力:1
魔力:1
腕力:1
防御:1
俊敏:1
スキル: 指導Lv3 解説Lv3 技能指導Lv2 最弱の極みLvEx 下克上LvEx 眷属化 スキル成長速度2倍 ジョブ成長速度2倍 獲得SP2倍 鑑定
SP:475p
称号:世界神の加護を受けし者 異世界を越えし者 ユニークジョブ使い 育て上手 教え上手 聞き上手 理想の先生 世界の理を破りし者 最弱最強
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最弱無敗:最弱であることを認め、最弱を極めた唯一無二の存在。 このジョブの前ではすべてが覆る。
ジョブ特性:ジョブ保持者のランクとステータスを最弱にする
最弱の極み:スキル保持者が視認したスキル・アーツを最弱の極みにストックして使うことが出来る。
下克上:相手よりランク・ステータス値の合計が低い場合、スキル保持者のステータスを反転させることができる。
世界の理を破りし者:神が創りし世界のルールを超えた存在になった者。 世界の理を反転させる力を持つ。
最弱最強:最弱だからこそ強い。
暗転した意識の中で頭に響いたメッセージを思い出し、ステータスを確認してみるとステータスが大幅に変化していた。
ランクが最弱のFに変わり、ジョブも育成師を除くすべて最弱無敗に消されてしまっていた。
スキルも、最弱無敗のせいですべてが失われたと思いきや、元々俺が覚えていたスキルは最弱の極みの中に保存される形に変わっていた。 しかも、保存されたスキルは自由に使うことが出来て、今までに俺が鑑定や自分の目で見たスキルもそこには保存されていて最弱の極みの中にはかなりのスキルがストックされていた。
後、ステータス値がすべて1に・・・。
なったが、最弱無敗のスキル下克上の効果により俺のステータスは常に反転扱いに・・・・・つまり、1こそ最強∞の扱いになるのだ。
まさに最弱で最強。
最弱無敗のというわけだ。
何故こんな力が突然目覚めたのかは分からない。
だが、それはジョブにも現れているように俺は決して強い人間ではない・・・・・あ、今は人間じゃなくて半神人に種族も変わってるんだった。 つか、半神人って何? 俺人間やめちゃったの・・・・・ま、いっか。
話は戻って、結局のところ俺は俺自身が最弱であることを認めている。
他の誰でもない。
最弱という存在は俺1人しかいないのだと。
だから俺は、俺以外の最弱を許さない。 故に最弱を最強に育てることは俺の使命なのだ・・。
つまるところ、今までの俺と何ら変わりはないってことだ。
「くっ、何だ今の光は・・・」
おっと、今は戦闘中だということを忘れてた。
目の前ではベローズが目を抑え首を横に振る。
「小僧一体何を・・・ムッ、何故体の傷が治っているのだ・・」
光が収まり目が見えるようになったベローズは、俺の体の傷が消えているのを見て眉を吊り上げる。
それだけ俺の傷は大きかったからだろう。
突然の力の覚醒・・・と言えばいいのだろうか?
により、体の傷は綺麗に消え逆に体の奥底から力が湧き上がってくる感じがする。
「丁度いいや、覚醒した俺の力がどんなものか試して見ようじゃないか。 最弱でありながら最強になったこの力をね・・」
「小僧が何を分けの分からないことを。 どんな魔法を使ったか知らんが、お前の力で俺を倒すことは出来ん!」
大剣を構えたベローズが一刀両断に大剣を俺に振る。
俺にはその光景が、まるでスロー再生の映像のように動きが止まって見える。
この時、最弱無敗のスキルが発動していて、世界の理を反転させた影響で俺のステータスは最強に変化している。
簡単な話、1というステータスが∞の値に変わっているということ・・。
今の状態は、時間が止まったのではなく、圧倒的なステータス差で時が止まっているように見えるということだ。
面白い。
俺はベローズの腹を殴りつける。
向こうはこの瞬間にも何をされたのか分かっていないだろう・・・・・ベローズの大剣が僅かに当たらないよう体をずらす。
すると、大剣は俺の横を通ってみごとに地面に突き刺さる。
そしてベローズの体は後方へと吹っ飛んでいった。
「ぐあっ、貴様っ!貧弱な貴様がこの俺に何をしたぁっ!」
地面に膝をついて腹を押さえるベローズ。
その口の端からは赤い血が滴り落ちる。
何をされたのかは分からない。
だが、確実に自分の体にはダメージが入っている。
それも、アーツで斬られた脇腹よりも確実に大きなダメージだ・・。
ベローズは口の血を手で拭い取ると、俺を鋭い目で睨みつけ体を起こす。
「一つだけ教えてやるよ。 アンタはもう俺には勝てない・・・・・アンタはもう死んでいるんだよ」
一度言ってみたかったんだよねこのセリフ。
「調子に乗るなよ小僧。 俺に一発喰らわせたからって、俺に勝てると思うなぁ!」
ベローズは大剣を投げ捨てると、またバカの一つ覚えのように正面から突っ込んでくる。
「ホント脳筋なんだなアンタ・・」
俺はその場から動くことなく奴の突進を待ち受ける。
「死ねやコラっ!」
大振りの右の拳が俺の頬を掠めるように真横を通る。
そこへ腰を回転させて左の蹴りが俺の鼻先を掠め目の前を通過する。
「くそがっ、何故当たらんのだ!」
「だから言っただろ、アンタは俺に勝てないってな!」
打ち出された左の拳を下から払いのけ相手の懐に入ると、手の平で相手のあごを上に打ち上げる。
衝撃で顔を天井に向けられ、一歩二歩と後ろに体が後退する。
「その程度の攻撃が俺に効くとおもう・・・・・・な、力が入らないだと・・・」
ベローズの下半身は、まるで生まれたての小鹿のようにプルプルと振るえ、目の焦点が完全に合っていない。
それはそうだろう。
今の一撃でベローズの脳はグラグラに揺れていて、神経伝達がうまくいってないのだから・・。
ボクシングとかでよくある現象で、顎っていうのは格闘技の中で一番弱点になりうる危ない場所なのだ。
そこを叩かれると、どんなに打たれ強い相手だろうが脳が揺れて、しばらくはまともに動けなくなる。
知っていれば、こういう脳筋な相手を止めるには一番いい方法なのだ。
「くっ、動け動け動かんか!」
「だから、アンタの脳はしばらく元に戻らないんだってば。 体を武器にしてるんだったら、体の構造くらい理解しとけよな・・。 ここを叩かれると脳が揺れてしばらくの間まともに体が動きにくくなるんだよ」
俺は自分の顎をトントンと叩いて説明してやる。
「な、んだと・・。 そのようなこと聞いたこともないぞ・・・何故貴様がそんなことを知っているのだ」
あぁ・・・そうか、ここには地球みたいな医学がないから人体構造なんて知らないのか・・。
知って得する何とやら・・。
成る程ね、これも知識チートの一種だなこりゃ。
知らないなら別に教えてやる必要もないかな、どうせ敵なんだし。
「それをアンタに教えてやる必要はないだろ・・・俺とアンタは元々敵同士なんだしな」
俺は少しづつこいつに歩み寄る。
「ま、待て。 話せば分かる・・・俺とて、本気でお前達を殺そうとしたわけでは・・・」
「でも俺たちのことを捕らえて帝国に連れて行くつもりだったんだろ?」
「そ、それは・・・」
「あぁ、俺たちは別に帝国と争うつもりはないぞ。 ホントだったら、ここへだってエレンを貰うために交渉にきただけだしな・・・ま、それを俺が空気を読まず、アンタたちに喧嘩吹っかけたみたいにしちゃったせいで、今こうして戦ってんだけどな・・」
よくよく考えれば戦う意味はなかったしね・・。
完全に俺が吹っかけた形になったけど、どうせ交渉なんてしてくれるはずなかったんだからこうなってただろうね・・。
「そ、そうだ。 お前が仕掛けてこなければ、俺だって戦うつもりはなかったんだぞ!」
うわっ、何か一気に小物臭くなったなこいつ。 さっきまでの威勢はどうしたよ?
あれだけ自分が優位だった時は、俺のことを殺そうとしていたくせにちょっと場が悪くなるとこれだよ。
まったく、つくづく力に溺れる奴ってのは惨めだねぇ・・。
「ま、それに関して今回は俺のミスだ・・今度からはもっと慎重に行動するさ。 だが、それとお前をどうするかは別問題だ」
俺はベローズの前まで来ると、右足と右拳を後ろに引いて構える。
「や、やめろ・・・・・・やめてくれぇ・・・・・・・・」
ベローズの顔からは恐怖の色が。
今までそんなにダメージを喰らったことがなかったんだろうね。
そのせいで、本当の痛みというものを知らないんだろう・・・明確に体の痛みを始めて感じて自分が勝てないと分かったのだろう。
「安心しろ殺しはしない。 死ぬほど痛いだけだ」
そういい残すと俺は右腕を振りぬいた。
「やめろーーーーーーーーーーーーーーぉぅっーーーーーーーーー!!!!!」
うん、姿が見えなくなるくらい飛んでいっちゃったよ・・。
予想以上のパワーで俺も驚いてるよ。
俺、覚醒しました・・・・・・みたいな。
まぁ、実際問題なんか体が変化しちゃったみたいなんだけどね・・。
というか、この後どうしようか?
帝国の連中ぶっ飛ばしてちゃったから、帝国に目をつけられる確実だよな。
「う~ん ま、どの道最弱っ子を探して世界を回るつもりだったし何とかなるだろ」
はい。
ノープランですけど何か問題でも・・。
そんなもんそん時に考えればいいですよ、そん時に。
「「「兄さ~ん!(エース!)」」」
それに俺には、|最弱≪さいきょう≫の仲間がいるんだ何も心配する必要はないさ・・。
うむ、向こうも無事に終わっていたみたいだな。
眷属3人が笑顔でこちらに駆けてくる。
一先ずこれでこの問題解決かな・・・・・・そもそも、問題発生してましたっけ・・・・・俺が問題起こしたの間違い・・・・・・ま、いいんじゃないのかな・・。
主人公覚醒!
実は一番の最弱は主人公という設定でした。
エース君にもいろいろと辛い過去があったということなのですが、そこらへんも何時か触れれたらいいかな・・。
とは言え、エース君は弱い子が大好きなので、今後も最弱っ子を集めてどんどん育成させていくつもりですのでご安心を。
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