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エレンの戦い。

本日2話目です。

もうすぐ1章が終わりになるんですが、2章の書き溜めが思うように進んでないです・・・・・頑張っていいるですけどね・・。

~~~~~~~~エレン視点~~~~~~~


「へっへへ、エレンようやくお前を可愛がってやれるぜ」


 下品な笑いを浮かべたデュロスが、アタイの体を下から上へ舐めまわすように見てくる。


(ホントにこいつは下品な奴だねぇ・・・)


「気持ち悪い面で見てくるんじゃないよ。 前からずっと言いたかったんだが、アンタその面に惹かれる女なんかいやしないよ・・・アンタに見つめられると吐き気がするんだよったく。 それにその服装も正直センスを疑うダサさだね」


「うるせぇ! 俺には力があるんだから面なんて関係ねぇんだよ。 人のことを散々顔で馬鹿にするお前ら女なんかに俺の気持ちが分かってたまるか! もういい、今日は生意気なお前を八つ裂きにしてやるから覚悟しろ!」


 デュロスがアタイに向かって手をかざす。


「ファイヤーボール!」


 デュロスのかざした手から炎の玉がアタイに向けて放たれる。

 あいつのジョブには、火魔法使いという魔法職の中で下位職にあたるジョブを持っている。

 魔法使い系のジョブは、火・水・風・土・氷・雷・光・闇の8種の属性から成り立っていて、魔法使い系のジョブに就くには魔術書と言われる魔法の才能を目覚めさせる本が必要になる。

 魔術書を読むことで、8属性から適正のある属性のジョブに就くことができる。

 魔法の適正がない者が使えば当然ジョブは所得できないのだが、一般的に魔法使い系のジョブに就ける者の多くは1属性しか適正を持たない。

 が、稀に複数属性の適正を持つ者がいる。


「ウィンドショット!」


 デュロスもその1人だ。


 迫り来る炎の玉をアタイは横に飛んでかわす。

 さらにそこへ、反対の手から打ち出された風の塊がアタイを襲う。


「くっ!」


 間一髪の所で体をそらし、魔法の直撃は避けたが右腕の服が浅く斬られたように破け落ちる。

 エースの訓練でステータスが上がっていたからこそ避けられたが、前のアタイだったら確実に当たってたね・・。

 改めて自分の成長を感じると、エースの持つ育成師というジョブの規格外の能力を思い知る。

 たった1ヶ月の間にランクEからCに上がり、ジョブやスキルもそれに伴って新しくたくさん覚えた。 ステータス値もCランク平均まで伸びて最早コボルト程度に遅れをとることもなくなった。

 それもこれも、エースの育成師のおかげだ。

 エースはアタイに力をくれた。

 その力でアタイは間違いなく強くなった。 でもアタイは怖かった・・・力がついたからって、それまでの自分がすべて変われるわけじゃない・・・初めて魔物を倒したときは怖くて震えていた。

 そんなアタイにエースは、「強さの形は一つじゃない」 そう言ってアタイに戦うことじゃなく守る強さを教えてくれた。

 アタイは戦闘は苦手だ。

 今だって本当は怖い。 デュロスのあの気持ち悪い笑みを見ていると、何も出来ず現実を受け入れていたアタイを嫌でも思い出してしまう・・。

 

 だけどアタイは負けないよ。

 何故なら・・・


「ほう、俺の魔法をよくかわしたな・・。 だがお前のように最弱の力しか持たない奴に、真に選ばれた力を持つ俺に勝つことは不可能だ。 大人しく俺の魔法の餌食になりな へへっ」


「フフ、そうかいアタイが最弱ねぇ・・・フフフ」


「テメェ、何笑ってやがる・・」


 デュロスの言葉に、アタイは自然と笑みが漏れていた。


「アタイが弱いって・・・フッ、アンタは一体何時の話をしてるんだい? とうとう目まで腐っちまったのかい」


「あぁ? 何ぬかしてやがんだよ、この情況で俺に勝てるとでも思ってんのかエレン。 笑えねぇ冗談だな」


「冗談なんかじゃないさ・・。 今のアタイは昔のアタイとは違う・・・守る強さを知ったアタイがアンタなんかに負けるはずがないだろ」

 

 そうさ、アタイはあのときの弱かったアタイじゃない。


「へっ、Eランクのお前が強くなったところでたかが知れてるだろうが。 それとも、あんなガキに諭されて女でも自覚しちまったか ヘヘッ」


「女をか・・・フフ、確かにそうかもね。 アタイはエースにいろんなことを教わったからね・・・けど、エースが教えてくれたのはアンタのようなくだらない力の使い方じゃない・・・それをアタイが証明してやるよ。 最弱からの最強って奴をね!」


 今こそアタイの成長を見せるときだ。

 生まれ変わったアタイを、

 どん底にいたアタイを救い出してくてたあいつに、

 理不尽に打ち勝つ強さを今こそ示すんだ!

 

 アタイは懐に忍ばせていた短剣を投擲する。


「チッ、不意打ちか・・・アースガード!」


 地面が競りあがりデュロスの前に土の壁が出現する。

 短剣はその壁に弾かれ地面に転がる。


「へへっ どうだ見たか。 俺は3属性使いの魔法使いなんだよ。 そんじょそこらの魔法使いとは違うんだよ「ファイヤボルト!」」


 今度は玉ではなく、炎の矢がアタイに向かって飛んでくる。

 アタイはまた横に飛んで魔法をかわして短剣を投げつける。

 だが、デュロスの作り出す土の壁に阻まれてこちらの攻撃も届かない。


「ほらほらどうした、そんな攻撃じゃ俺に傷一つつけられねぇぞ」


 炎・風・土の攻撃魔法次々とエレンを襲う。

 エレンは何とかその攻撃を避けつつ反撃の隙をうかがう。


(さて如何したもんかねぇ・・。 向こうは魔法の遠距離攻撃が中心なんだ、何とか接近戦に持ち込めればいいんだけどねぇ・・)


 とはいえ策はある。

 Cランクの平均ステータス値は200前後。

 デュロスが使う魔法は殆どが下位の魔法であり、必要な魔力量は1発辺り5~10程度。

 つまり、回数にすると30発~40発前後しか魔法を使えないはず。

 魔法使いとて魔力には限りがあるので、それを超えて魔法を使うことはできない。

 スキルによって魔力の回復を早めたり、回復薬によって少量の魔力を回復することはできるが、どちらにしても術者にとっては魔法の使えない状態が必ずどこかで発生する。

 接近戦に持ち込むならそこしかない。

 幸いデュロスは、アタイの事を格下と思ってバンバン魔法を撃ってきてくれている・・。

 アタイの俊敏値は300を超えているので、それを持ってすればデュロスとの間合いを即座に詰めることは可能なはず。

 もうアタイは最弱じゃない、成長したアタイをアンタに見せてあげるよ。

 エレンは魔法を避けながらデュロスの魔力が切れる瞬間を静かに待つ。


「チッ、ちょこまかちょこまか動きやがって・・・・面倒だ、範囲魔法で一気に決めてやるぜ!」


 デュロスは消費を抑えた下位魔法を放つのをやめ、それまでよりも多くの魔力を注ぎ込んだ中位魔法をエレンに向けて放つ。


「くらえッ! イグニションバースト!」


 デュロスが放ったその魔法は、周囲をすべて焼き尽くさんがごとく放たれた炎の波だ。 しかもその波はエレンの動きに合わせて動きを変える追尾式の魔法・・・。


「くっ、こいつは避けきれない・・」


 炎の波はエレンを飲み込みそして・・・


 ドゴォーーーーーーーーーーーーン!!!


 激しい爆音を伴って爆発したのだ。

 辺りには黒煙の煙が舞い上がり、魔法の威力を物語る。


「はぁ・・はぁ・・どうだ、みたか俺の魔法の威力を。 へへっ、大口叩いたくせに結局は何も出来ないじゃねぇか・・・・だからお前らは最弱なんだよ」


 勝ちを確信し高笑いを上げるデュロス。

 だがしかし、煙が徐々に晴れその姿が浮き彫りになっていくとデュロスの表情は驚きに変わる。


「な! な、何故だ・・・どうしてダメージを受けていない。 俺の魔法は直撃したはずだ・・・・チクショウ、一体何をしやがったんだ答えろエレン!」


 そこには大きな盾に身を隠してしっかりと立っているエレンの姿が。

 所々、服や皮膚は焼けて黒ずんでいるが大きなダメージは追っていない。

 それもそのはずで、


「何てことはないよ、アタイは盾使いのアーツ”障壁陣”でアンタの魔法を防いだだけなんだからね」


 そう、エレンが使ったのは盾使いLv9のスキルスロットで開放される障壁陣のアーツを使っただけなのだ。

 障壁陣は、盾装備状態で盾に注ぎ込んだ魔力によって相手の攻撃を軽減するアーツだ。 これには魔法・物理両方の攻撃が含まれる。

 エレンはこれに、自分の魔力のすべてを注ぎ込んでデュロスの魔法の威力を軽減したのだ。

 何故、盾使いのジョブを持たないエレンが盾使いのアーツを使えるかといえば、答えはエースの技能指導スキルで盾使いのアーツを教わっていたからだ。

 実は技能指導のスキルは、はじめエースが覚えているスキルを眷族に教えるものだと思っていたのだが、スキルを教えれるならアーツも教えれるんじゃないか? というエースの考えで試しにエレンにアーツを教えてみたところあっさりと出来てしまったのだ。

 さらに、技能指導はエースが覚えてさえいれば、例え教える眷属のほうに教えるアーツのジョブがなくてもアーツを覚えさせることが出来るのだ。

 これにより、遠距離型のエレンには守りを固めるため盾使いのアーツを一通りエースから仕込まれていたのだった。


「ありえない・・ありえないぞこんなこと! お前はEランクでジョブは2つしか就けないはずだ! お前はシーフと薬剤師の二つでジョブが埋まっていたはずだ・・・どうして盾使いのアーツをお前が使えるんだ!」


「う~ん、アンタの言うことは最もだけど、それを話すわけにはいかないねぇ。 ただ、一つ言えることがあるとしたらアタイはもう昔のアタイじゃない。 最弱だったアタイは、自分の強さを見つけて生まれ変わったのさ・・。 ま、アンタには一生理解できない思いだろうけどな自称最強さん・・・」


 アタイは盾を地面に置くと、腰に下げていた短剣を抜いて構えデュロスを睨む。

 それに怯えたデュロスは、惨めに地面に座り込んで後退る。

 奴にもう魔力は残されていない。

 文字通りあれが全魔力を注ぎ込んだ一撃だったのだ。

 さりとて彼もCランク、魔法使い以外の戦闘職のジョブを持っていればまだ戦うことは可能だったはず・・・しかし、彼の他のジョブはそのどれもが非戦闘系のジョブであって魔法以外に戦うすべを持っていなかった・・。

 魔法を3属性も扱えることに驕り、強さの意味を履き違えた結果が招いた当然の敗北がそこにはあったのだ。


 エレンは最早容赦をするつもりはなかった。

 一歩一歩デュロスに近づいていくエレン。


「く、来るな寄るんじゃねぇーーー!」


「無様だね。 それがアンタが招いた結果だよ。 下を見ることも上みることもせず、ただ奢っていたアンタのね・・」


「う、うるさーい! 俺の何が悪いって言うんだ、力あってランクもあるんだからそれでいいだろうがぁー!」


「はぁ、別にアンタがどう思うとそれはアンタの勝手だよ。 でもね、アタイはあんたとは違ってこの現状に不満なんだよ・・・弱い自分が嫌だったのさ・・。 そんなアタイにあいつは手を差し伸べて、アタイのことを育ててくれた。 最弱だからと捨てることもなく、最弱だからこそ最強になれるとアイツは教えてくれたんだ」


 そうアタイはもう昔のアタイじゃないんだ。

 アタイはあいつの・・・・エースの下で最弱から最強に成り代わるんだ。


「これはその第一歩・・・アタイはこれで帝国と決別する」


 エレンは剣を振りかぶり、


「やめろっーーーーー!!」


「・・・・」


 この日エレンは自分の道を進み始めることになった

 エースとの出会いが彼女を変えることになる。

 エレンは自らの戦いを終え、もう一つの戦いに目を向けるのだった。

明日、明後日は1話ずつの更新になると思います。

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