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ジャックとクインの戦い。

戦闘回です。

ぶっちゃけ前座です。 本番はあくまで主人公のバトルなので盛り上がり少なめです。

~~~~~~~~クイン視点~~~~~~~~


 兄さんにも困ったものです。

 エレンを村に送ってきたのはいいのですが、あろうことか帝国の人がいる屋敷の扉を破壊してしまいました。

 まったく何をやっているんでしょうね兄さんは。

 話し合いに来たはずが、これでは戦闘をしにきたみたいではないですか。

 どの道、話し合いになどならなかったでしょうけど・・・これはあんまりです。


 と言うわけで、私の相手はCランクのブタさんが相手です。

 体中から汗をダラダラと流しながら、ハァハァと気持ち悪い息遣いで私のことを見てきています。

 体も丸々と肥っていて、あれではまともに動けないと思うのですが何を食べたらあそこまで肥れるのでしょうか? 謎ですね・・。

 とにかく、ブタさんの私を見る目が気持ち悪すぎて嫌なので、早々にこの戦いは終わらせようと思います。

 その後はゆっくり兄さんの勇姿でも見ながら・・・・・おっと、まずは目の前のブタさんのことでしたね。


「ぶほっ、見れば見るほどボクちんの好みなんだな。 首輪を嵌めて、毎日服を着せ替えして遊ぶんだな。 ハァハァ・・興奮するぶほっ!」


「・・・・・・」


「う~ん、その人をゴミのように睨む目も来る~」


「・・・完全な変態ですね。 ロリコンだけかと思ったら、M野郎でもありましたか・・・・・救いようの無いブタさんですねこれは」


 正直こうして顔を合わせているだけでも嫌悪感を感じるのですが・・・・もういいです早く終わらせましょう。


 私は弓に矢を番えブタさんに狙いを定めます。


「ぶほっ、ボクちんと戦うつもりなのかな? やめときなよ、ボクちんこれでもCランクだから強いんだな。 おもちゃを痛めつけるのはボクちんの・・・・・・って! ぶほっ、危ないじゃないか! 人の話は最後まで聞くもんだぞ」


「チッ! 外しましたか。 一発で楽にしてあげようと思ったんですけどね・・」


 そう言いつつ、私は次の矢を番えて矢を放ちます。


「ぶぼっ、だからボクちんの話を最後まで・・・」


「あなたはバカですね、戦闘中に敵の話を悠長に聞くはずがないでしょうが。 そういうことが出来るのは、真の強者だけです。 あなたのような肩書きに頼るだけの弱者の話を私が聞くわけないでしょうが」


 私はさらに1射、2射と矢をブタに打ち込んでいきます。

 最早こんな奴にさん付けは不要です。


「ぶほっ、危ない、かっ、擦ったんだな」


「チッ、ブタの癖に中々動きはいいですね・・・ならこれです」


 私は腰に下げたポーチから、丸く固めた薬の玉を取り出してブタに投げつけます。

 玉はブタの手前の床にぶつかり、中に詰まっていた薬の粉を撒き散らします。 その瞬間私は後ろに後退して粉が届かない距離まで離れます。


「な、なんだこの粉は・・・ブヒー! 目がぁー・・・はっくしょんはっくしょん・・・うっ、くしゃみまで・・。 それに何だか体が痺れて・・・」


「それは私が特別に調合した薬です。 毒・麻痺・火傷に眠りに効果のある原料を少しづつ混ぜて作った、万能薬ならぬ万害薬です。 あまりに危険なため、兄さんからはお仕置き以外での使用を禁止されている超絶危険な薬です。 ですが安心してください、その薬で死ぬことはありませんから・・・」


「目がぁー! 体が焼ける! はっくしょん・・・くしゃみが止まらない・・・・・あぁぁ、助けて・・助けて・・・」


「・・・ですが残念なことに、解毒の薬を作るのを忘れていたので直すことができないんですよね」


「そ、そんな~・・・」


「安心してください。 今楽にしてあげますから」


 私は再び弓に矢を番えて構えます。

 ブタは怯えた表情で「助けて」「許して」と、救いを求める言葉を連呼しています。


「あなたがどんな人間だったのかは知りませんが、この情況・この世界の現状になんら思うところもないようなあなた達に生きる価値はありません」


「・・そ、そんなことは・・」


「弱いからなんだと言うんです? 強いからどうしたと言うのですか? 現にあなたは、自分を強いと勘違いして弱者だと思っていた私に手も足もでない・・。 強さに価値を求めるのなら、本当に強くなる人たちのことを知るべきでしたね。 本当の強者とは下にいるものなんですよ」


 これも兄さんがいつも言っていることだったんですが、この世界の人は自分のランクの価値に囚われすぎですね。 

 受け売りで使ってみましたが、中々に決まったみたいでブタがすっかりびびってしまっていますね。


「ブヒー、お願いだ命だけは助けて・・・ボクちんだって帝国に命令されて仕方なく・・・」


「仕方なく・・・それも都合のいい言葉ですね。 やはりアナタのような人間に生きる価値はありません。 さよならです」


「ま、待って・・・・・・あ、あぁぁぁああああ!」


「・・・・・・・」


 フゥ、終わりましたね。

 クインは弓を下ろし正面の光景に目を向ける。


 そこには、全身の穴という穴から変な液を撒き散らせて白目を向いて気絶するブタが。

 彼の頭の上にはクインの放った矢が刺さっていた。


「兄さんからはなるべく殺すなと言われていましたからね。 あなたは運がよかったですね」


 兄さんが何も言っていなかったら、間違いなく私はブタを殺していただろう。

 そういう意味では、助かったブタは運がいいのだろうが私としてはこんなのを生かしておいていいのかと思っている。

 だがすべては兄さんの決定なので従わないわけにはいかない。


(ここでもブラコンを発揮するクインさんでした。

 実際には、エースもこいつ等を生かしておいても害にはなれど益にはならないと分かっているのだが、かわいい兄妹達の手を汚すのはできるだけさせたくないという、兄心が働いたせいであったりする。 エースさんも順調にブラコンになりつつある? でした。)


「それにしても、あれで本当にCランクだったのでしょうかね? あまりに弱すぎて判断のしようがありませんでしたね・・」


 実際ブタは何もしていないのだからそうだろう。

 鑑定を使えばブタに情報をみることも出来るのだが、嫌悪感からクインはそれをしようとはしなかった。 


「まぁ、それはそれとして・・・・私は兄さんの勇姿を見ることにしま・・・・・「ドオーン!」・・ジャックの方は激戦のようですね・・・」


 音のしたほうでは、ジャックが剣での激しい打ち合いを繰り広げていた。

 彼は彼で順調に強くなりつつある。

 

「とはいえ、ジャックなら放っておいても勝つでしょうから助けは要りませんね。 それよりも私は兄さんのかっこいい姿をこの目に焼き付けねば!」


 安定のブラコンなクインであった。





~~~~~~~ジャック視点~~~~~~~


「はぁあっ!」


「ふん!」


 二人の間には激しく剣がぶつかり合う音が響く。


 ジャックのスピードを生かした斬撃を、ムサイは剣を滑らかに滑らせすべてを捌く。

 ムサイの動きには一切の無駄がない。

 それに比べジャックは、常にスピードを保とうとして余分な力使い続けている。

 そこからジャックの動きが一瞬遅くなったのを見逃さず、マサイは剣を下から弾き上げあいたジャックの腹を拳で殴りつける。


「がはっ!」


 ジャックの足が拳に押され宙に浮く。

 ムサイはそのままジャックの腕をとって放り投げる。

 地面に叩きつけられごろごろと転がるジャック。

 体格さがあるとはいえ、ステータス値上はジャックが上のはず・・。

 しかし、現実はこうだ。

 筋肉の鎧で全身を覆ったような大きな体をしていながらも、この人の動きは凄まじく洗練されていて尚且つ剣の腕も一流だ。

 ステータスで上回る僕だが、一向に攻めきれる気配がない。 むしろ劣勢だ。

 それもそのはずで、純粋に剣の腕で僕がこの人より劣っているからだ。

 僕は兄さんから我流の剣を教えられているが、兄さんのそれはあくまでゲームの中から兄さんが思いついたもので極めて実践向きなものが多い。 方やこの人のは、基本がしっかりと出来ている上に実践も数多く経験しているのだろう、足の運び一つ見てみてもまったく無駄がない。 ステータスを上回る、経験と実績と技それを可能にする力量を持った新の強者。

 今こうして打ち合えているのも、ステータスに任せたものでやっと打ち合えている感じでまったく攻め手が見当たらない。


「フゥ~」


 僕は立ち上がりながら大きく息を吐いて胸の鼓動を抑える。

 

「どうした小僧もう終わりか」


 僕の目の前の男は息一つ切らしていない。

 強い。 それが素直なこの人の感想だ。

 Cランクと聞いていたが、この人の持つ力量はあきらかにそれよりも上・・・・・単純にランクに合わない技術を身につけている。


「その年でそれだけやれれば大したものだが、如何せん基本がなっていないな小僧。 一体誰に剣を習ったのだ?」


「あえて言うなら兄さんにですが、兄さんのそれは独自に考えだしたものなので基本が出来てないのは当然ですよ。 ついでに言うなら僕たち兄妹は武術なんてやったことないです」


「成る程、我流・・実践向きの剣ということか。 お前の兄は剣術は素人なのに面白いことを考えるな」


「僕の兄さんですからね凄いのは当たり前です。 僕からも一つ聞きたいんですが、あなたはどうして帝国になどいるのですか? あなたの剣からは悪いものを感じない・・・感じるのはただ強くあろうとする気持ちだけのような気がします」


「ほぉ、剣を合わせただけで人の気持ちを読み取るか・・。 単純な話だ小僧、我はただ強き者を求めているのだ。 帝国にはランクの高い者が必然的に多く集まるからな・・・そいつらと戦うなら同じ帝国にいた方が都合がいいのだ」


「つまり貴方は強い人と戦いたいだけで、帝国に情があるわけでもないのですね?」


「如何にも。 我が求めるのは武の頂のみ。 強さこそすべてなれば、帝国や王国の国に仕えるつもりは毛頭ない」


 何処までも強さを求めるですか・・・兄さんが好みそうな言葉ですね。

 こういう人に剣を教われば僕ももっと強くなれるでしょうか・・。


「物は相談なんですが、僕たちと一緒に来て僕に剣を教えていただけませか?」


「小僧にか? それで我に何の得があるというのだ・・。 そもそも、貴様の兄はベローズと戦っているのだぞ・・・あれは人としては問題の男だが、腕のほうは確かだぞ。 小僧と同じ程度の剣術しか使えんのなら到底奴に勝つことは出来んぞ」


「兄さんなら大丈夫ですよ。 何たって兄さんは最強ですからね・・本気で戦えば僕より強いと思いますよ」


「ほぉ、小僧より強いか。 確かに、あれ程の我流剣術を編み出せる奴だ実力を隠していても不思議ではないな。 だがそれだけで我が帝国から寝返る理由にはならんぞ。 小僧を倒した後、兄のほうも仕留めればすむことだ」


「でしょうね。 ですが、僕をここまで強くしてくれたのは兄さんです。 詳しくは言えませんが、兄さんは天才ですが人を育てることに関してが更なる大天才です。 貴方が僕を武人と認めてくれるなら、僕は兄さんの下でもっと強くなってみせるそれこそ貴方が及ばないくらいに・・」


「ふむ、つまり今は我に勝てないが、将来的に我を越えるぐらい強くなるから今は見逃せと。 さらに、我からも指導を受けたい故我にも帝国を捨て小僧のところに来いと・・・そう言いたいのか」


「話が早くて助かります。 正直死ぬきでやれば相打ちまでは持っていける自身はありますが、流石に命を危険にさらしてまで貴方と遣り合うのはごめんです」


「ハッハッハ そこまでの啖呵を切れる奴初めてだ気に入ったぞ。 いいだろう、小僧が信頼する兄とやらどれだけの者か見せてもらおう。 ただし、今の小僧が我を納得されるにたる一撃を見せれたらな」


 と言い剣を構える。


「お互い最強の一撃で勝負ですか・・・望むところです」


 僕も剣を構える。


「行くぞ」


 ムサイは剣を一度鞘に戻し片手を剣と鞘に置く。


 一方のジャックは腰からもう一本短剣を取り出し、それを忍者刀のように逆手に持ち替える。


「・・・」

「・・・」


 お互いの間に一瞬の静寂が・・。

 と、同時にお互いが一歩を踏み出して渾身の一撃を放ち合う。


「三式抜刀術 瞬列閃光斬!」


「逆手二刀流奥儀 天覇風滅斬!」


 ムサイの剣からは光超える速度の斬撃が。

 ジャックの二刀流からは天をも切り裂く風の刃が。


 お互いの渾身の一撃がぶつかり合う。


 そして・・・・


 方や地面に倒れ付し、

 方や膝をついて相手を見据える。

 はたして勝ったのは・・・


「見事だ」


 バタン!


 ムサイが地面に前のめりに倒れこんだ。


「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」


 一方のジャックの体にも無数の切り傷がつけられており満身創痍・・・文字通りギリギリの戦いだったことを物語っている。

 それは一重に、ジャックの強い気持ちと何よりも兄に対する絶対的な信頼の元においての勝利だった。

 普通に戦えば負けていただろう・・。

 自分が勝てるとしたらお互いの一撃をぶつけたこの時しかないだろうと。

 そうした判断の下、ジャックはムサイをうまく誘導してこの形に持ち込んだ。

 もちろん、それまで言ったことはウソではない。

 エースが認めればだが、ジャックはムサイに剣を教わりたいと本気で考えている。

 ムサイはそれだけの武人だ。

 そんな武神からも、ジャックは学べることはすべて学び、より強くなりたいと思っているのだ。

 彼をそこまで突き動かす理由はただ一つ。

 大好きな兄を守るため、彼は誰よりも強くありたいと思うのだった。


「ハァハァ・・・痛っ、随分やられちゃったな・・。 でも、ムサイさんに勝つにはこれしかなかったんだし仕方ないよね・・」


 そういうとジャックは地面に座り込み、


「はぁ、こんなに怪我して兄さんに怒られないかな」


 どこまでも兄のことを気にするジャックであった

本日18時にもう1話更新します。

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