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異世界に行って最弱っ子育てることにしました。

ゲームで一番楽しいことそれはレベル上げ。

弱いキャラほど強くしてあげたくなります。

そんな思いを作品にしてみました。

「よし、スキルコンプリート達成! これでお前も最強の仲間入りだ」


 俺はゲーム機を片手に大声で叫ぶ。

 部屋の中はカーテンで光を遮られ暗く、足元にはカップメンの空の山ができていて、部屋の主は今もパソコンの画面に向かってガッツポーズしている。

 学校? そんなもの小学生の頃にとうに卒業したさ。

 仕事? そんなの永久就職に決まってるじゃないですか。

 俺の職業?

 俺の職業はニート! ニートでゲーマーに決まってるじゃないですか。 暇な一日ゲームをして過ごしている社会のゴミです。

 そんな俺の特技は、育成シュミレーションゲームで最弱と呼ばれるキャラ達を育て上げ最強にすることだ。 

 俺は昔から人にものを教えたり、最弱と呼ばれる奴らを最強に育てることに生きがいを感じていた。 

 最弱だと言われ、周りからも期待されていなかったそいつが、壁を打ち破り最強へと変わるその瞬間の周りの目の変わりようと言ったら・・。実に見ていて爽快なのだ。

 こと、育成ゲームに関して言えば、進んで最弱のキャラを選んでプレーして、最弱が最強に上り詰めて行くこの様を見ることに俺は感動を覚えている。 いや、最弱と書いて最強と呼ぶ存在を作ることに命を懸けていると言っていい。

 そして今日もまた、最弱から最強へと一人のキャラを俺は育て上げてしまったのだ。


「Lvもスキルも職業もステータスもすべてカンスト。 苦節2日、プレー時間47時間と39分。 俺はまた一人の最強キャラを育て上げてしまった」


 キャラのステータス画面を見て俺は再び感動に浸る。

 すべてのステータスがMaxと表示された綺麗な画面。 劣るところの無いすべてが完璧の最強のステータス画面。

 これを見るために俺はニートをやっているといってもいいくらいだ。

 ほぼ丸2日、寝ずのプレーにも関らず俺はこの歓喜の瞬間にまた立ち会うことが出来た。 まぁ、俺がプレーしてるんだから当たり前なんだけど。

 しかし、さすがに丸2日も寝ずにいると眠気がやってこないわけではなく、


「はぁ~あ。 目的を果たしたら眠くなってきたな・・2日ぶりに眠るとしますか。 次はどの子を育てようかな・・」


 ベッドに横になりながらも俺は次のキャラ育成について考えることはやめない。 それだけ俺にとって人を育てるということは快感なのだ。

 気づけば俺は眠りに落ちていて・・・・




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ起きていただいてもよろしいでしょうか」


 鈴の音のような綺麗な声により俺の意識は起こされる。


「ん、うん? どこだここ、俺の部屋じゃないぞ」


「お目覚めになられたようですね」


 俺の正面、姿は見えないが声だけが響いてくる。

 その声はさっき俺を起こしたその声の持ち主だ。


「驚かれているかもしれませんが、私はユリウス、多次元世界を統べる最高神です。 あなたをここへ呼んだのはあるお願いがあってのことなのです」


 あぁ、成るほどそういう展開のやつですか。


「はぁ、勇者召喚とかそういう感じのやつですかね・・。 申し訳ありませんが、俺にはそういうことするよりも、やらなければいけない大切な仕事があるので戻してもらえませんかね」


 俺には未だ最弱と呼ばれ、ゲームの世界で最低の地位にいるキャラたちを最強にするという大切な仕事があるのだ。 異世界にいってなんかいられないよ。


「それは無理です。 すでにあなたの魂は元の体から切り離されていますので、元の世界に戻すのならば記憶を消して赤ん坊からやり直すしかありません」


 そんな・・そんなことって・・俺の生きる価値が失われてしまった・・・俺の帰りを待つ最弱キャラたちが・・・・ごめんよみんな最強にしてあげることが出来なくて・・・・俺はもうだめみたいだ・・。

 

「ですが、記憶を残した状態であなたの夢見る世界に転生させることは可能です」


 何ですと!

 事情が変わった。


「詳しくお願いします」


「あなたには、ある世界に行って最弱と呼ばれている人々を救ってほしいのです」


 おぉ! 最弱を救う何ていい響きなんだ。


「その世界に生きる者はみな生まれたときからランクと呼ばれるものでその人の価値が決まっていて、ランクで人生が決まってしまう世界なのです。 具体的に言いますと、ランクはF~Sの七段階に設定されていて、ランクごとに就けるジョブの数が決まっているのです。 Aランクから10職、以降ランクが下がるごとに2職ずつ減っていいって、Fランクはジョブに着くことは出来ません。 逆にSランクはジョブに制限はありません」


 最高神様によると、その世界にはステータスやスキルなどの概念もあるようなのだが、これもランクで能力も成長も大きく異なってくるとのこと。 さらにこの世界、スキルを習得するにはまずジョブに就く必要がある。 ジョブにはレベルが設定されていて、このレベルが上がるごとにスキルツリーが開放されていき、スキルポイントと呼ばれるスキルを習得するポイントを消費してスキルを得るという仕組みらしい。 スキルポイントはジョブが成長することで増えるのだが、ここでもまたランクで増えるポイントの数が違ってくる。 Sランクは常に10ポイント・・・Fランクは何処までいっても0だ。

 ここまで聞けば、いかにランクというものが重要だかが分かるだろう・・。 Fランク・・・ジョブにはつけずスキルも取れない。 おまけに、ステータスも最弱なら成長も最低。 この世界でSランクは最強の勝ち組、Fランクという存在は、間違いなく最弱の負け組みだ。 

 そんな存在を、俺のこの手で育て上げSランクを超えられるとしたら・・・・・・・


「最高の世界だな」


 俺にとっては夢のような世界だ。

 最弱が溢れ、俺に育て上げられるのを待っている。

 しかも今度は、ゲームの画面の外からではなく、ゲームの世界と同じように自らもそこに入れるとなると余計に堪らない。


「最高神様。 ぜひ、俺をその世界に送ってください」


「ありがとうございます。貴方ならきっとそう言ってくれると思っていました。 では、あちらの世界に送るにあたってまずはあなたの新しい肉体を作りましょう」


 最高神様がそう言うと、俺の体がピカッと光って力がみなぎる感じがしてくる。


「今貴方の体を向うの世界に適応できるものに作り変えましたので確認してみてください」


 不意に、頭の中に情報が流れ込んでくる。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前 『』    

 年齢:5才

 ランク:Ex

 ジョブ(∞):育成師Lv1   

 種族:人間

 体力:5

 魔力:15

 腕力:10

 防御:10

 俊敏:10


 スキル: 指導Lv1 解説Lv1 超隠蔽Lv1 眷属化 スキル成長速度2倍 ジョブ成長速度2倍 獲得SPスキルポイント2倍 鑑定 

 SP:0p

 称号:最高神の加護を受けし者  異世界を越えし者  ユニークジョブ使い  育て上手  教え上手 聞き上手  理想の先生 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これがステータスか・・。

 


「確認できましたか?」


「はい。 ですが幾つか聞きたいことがあるのですが、名前が空白になっているのですが? それと、年齢がおかしくないですかこれ?」


「名前が空白なのは、貴方の魂と体が新しく作り変わったからです。 ご自分で好きな名前を思い浮かべていただくとステータスにも反映されるはずです」


 俺はとりあえず頭の中に思いついた名前を思い浮かべてみる。


名前 エース


 おぉ、ちゃんと反映されてる。

 この名前は、俺がいつもゲームで使っていたキャラネームの名前だ。

 かっこいいだろ。


「それで、年齢のほうがかなり若返っているのは?」


「それはこちらを見ていただければ分かるかと」


 そう言うと、世界新様は俺の目の前に全身が写る大きさの鏡を出現させる。

 そこに写った自分の姿を見て俺は・・・・


「何じゃこらーー!!」


 そこに写っていたのは、身長120㎝くらいで肩に掛かる長さの銀の髪をして、白い肌に円らな瞳をして男の娘のような姿になった俺だった。

 どうしてこうなってしまったのだ・・。


「どうでしょうか? 私としてはかなりの自信作なのですが」


 この体を用意してくれたのは最高神様なのだから、この体を作ったのも最高神様ということになるのか・・。


「えぇ、何と言うかまるで自分じゃないみたいで・・・」


「かっこかわいい感じをイメージして作ったので、成長した貴方の姿を見るのが楽しみです」


 声だけしか聞こえないが最高神様はすごく満足気だ。

 つまりは、肉体の年齢に合わせて魂も変化したということらしいです。

 いや、別に気にしないからいいですけどね・・。


「それで、肝心なことを説明しておきます。 貴方のランクがExになっていると思いますが、それは貴方が私の加護を受けているからで、ExはSランクよりも上のランク扱いになります。 ジョブに就ける制限はなく、成長力も様々なジョブに就くことでSランクを超える成長を見せることができます。 そして貴方のジョブですが、これも貴方の魂を元に作り出された貴方だけのユニークジョブになります。 ジョブの特性としては、他者を育てることに重きを置いています。 また、本来生まれ持ったランクは変わることはありませんが、育成師のスキル眷属化を使うことで、眷属にした者を育成師のスキルを使ってランクを成長させることができるようになります。 また、眷属にすることによって貴方の持つ成長促進系のスキルの恩恵を受けることができます」


 育成師は育てることに趣を置いた俺にピッタリのユニークジョブだ。 しかもランクまで上げることができるとは・・。 フフ、これでまた最弱キャラを育て上げて最強にしてやるぜ。


「ですが、貴方の持つジョブもスキルも向こうの世界では問題の種になりかねないだけの能力を持っているので、ステータスを隠す超隠蔽スキルと相手のステータスを読み取ることの出来る鑑定スキルをこちらのほうで追加しておきましたので、くれぐれも向こうではその力がバレないようにしてください」


「絶対にバレないようにします」


 問題ごとは嫌ですから。


「それとこちらも渡しておきますね」


 そう言って最高神様から手渡されたのは、お城のような家の模型? と今の俺と同じくらいの年齢の男女二人。

 何ですかこれ?


「その二人は貴方の魂の欠片から作り出した、あなたの分身・・・兄妹みたいなものです。 彼らにも貴方と同じく私の加護を与えそれぞれに能力を授けていますので、共に向こうの世界に連れて行って貴方のお手伝いをさせてあげてください」


「「よろしく兄さん」」


 兄さん。 俺一人っ子だったから兄妹って憧れてたんだよなぁ・・・・兄さん、何ていい響きなんだ。


「彼らも貴方と同じで、まだ名前がありませんので貴方から名前をつけてあげてください」


「えぇ、俺がですか・・」


「はい。 当然です」


 いや、俺名前とか考えるの苦手なんだけど・・。


「じゃぁ・・・男の子の方君の名前はジャック。 で、女の子の君はクインだ」


「はい兄さん。 僕の名前はジャックですね」


「素敵な名前、ありがとうございます兄さん。 クインは兄さんのために頑張ります」


 安直な名前だったけど二人は喜んでくれてるみたいだから良かったよ。

 これでもし嫌な顔でもされていたら・・・・・・


「二人の名前も決まったようですし説明を続けますね。 そしてこちらの模型は異空間拠点と言って、その中は人が100人は同時に住めるぐらいの広さを持った家になっています。 また、拠点内にコアと呼ばれる異空間を拡張するアイテムを設置していますのでそちらも自由にお使いください。 拠点には眷属として登録したものしか入ることは出来ませんし、異空間にあるのでその中にいる間は外から誰かに見つかることもありませんので、向こうでの拠点としてお使い下さい」


 おぉ、これは凄いものをまた貰ってしまった・・。

 翌々考えたら、今の俺って5歳児の姿なんだよな。 5歳児が一人で宿にでも泊まって、うろうろとしていたらそりゃ目立ってしょうがないよな・・最高神様はそこらへんのことも考えてこれを渡したに違いない。 流石は最高神様だ。


「最高神様、ありがとうござます」


「いえ、貴方には向こうでいろいろとやって貰わなければいけませんから出来るだけのことしますよ」


 おや、何かその言い方だと他にもやってほしいことがあるような・・・まいっか。 

 何であれ、俺は最弱っ子達を育てることが出来ればそれでいんだよね。


「後は・・・必要な物は拠点の家に予め用意してると思いますので、向こうについたら確認してみてください。 それと、これは向こうの世界の情報を纏めた本になりますので情報としてお使いください」


「何から何まですみません」


「向こうに着いたらまずは拠点を作り自身のレベルアップをすることをオススメします。 何せ、向こうの世界は貴方のいた世界と違い、魔物やモンスターがいて普通に襲ってきますからね。 生き抜くための力を身につけることが一番です」


 むむ、俺としては最弱っ子を真っ先に探して育てようと思ってたんだけど、よく考えたら今は5歳時の体だし、向こうは危険がいっぱいなんだよな・・。 それに、育成師のスキルのことも分かっていないのに誰かを育てることは難しいか・・・ゲームと違ってリアルになるんだもんな・・。


「ではそろそろよろしいでしょうか。 貴方には向こうの世界に行っていただきます」


「はい。 いろいろとお世話になりました」


「いえ、勝手に連れてきて無理なお願いを聞いてもらっているのはこちらですから。 それでは、向こうに送ります。 頑張ってくださいね」


 俺の足元に魔方陣が現れ、俺はその魔方陣によって異世界へと送られていく。

 最弱っ子達との楽しい冒険が俺を待っている。


          

  


「・・・・・」


「行ったようですね」


「ええ、私たちの思ったとおりの人だったわ」


「心配ですか」


「そうね。 あれの世界に送るのですから当然です。 ですが、彼には与えられるだけの物を与えましたから」


「そうですね。 いざとなれば、新しく連れて来ることもできますしね」


「出来ればそれはしたくないわね」


「でしたら、彼にはがんばってもらうしかありませんね」


「そうね。 彼ならきっとやってくれるわ」


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