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しるこ地獄  作者: gojo
第四部 しるこ地獄
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八十一、最後の作戦

 母はハハハと笑うと、「楽しみにしているわね」と言い残し、姿を消した。


 僕はジョニーの家に戻り、母が決闘の申し入れを承諾した旨を二人に話した。



 そして次の日になった。

 決闘は明日だ。心苦しいが、僕はその決闘には行かない。


 しるこヶ丘の北側は急勾配、というよりほぼ崖になっている。その下に、シルコロシアムはある。

 今回の作戦は、その崖を崩してシルコロシアムという巨大な鍋の蓋にするというものだ。


 決闘予定の明日正午に爆発する時限爆弾を仕掛け、シルコロシアムの指定の扉の鍵を開けておく。それだけで作戦終了。

 既に内側からは開かないよう細工は済んでいる。


 しかし僕は、母の千里眼で作戦の詳細に至るまで知られているのではないかと不安を抱いていた。

 放置される爆弾を止められるだけならまだしも、もし決闘の場にしるこの神が時間通り現われず崖が崩れたら、作戦のやり直しさえ出来ない。

 それに、母は全面対決を望んでいるように思えた。ひょっとしたら今この瞬間にも家に神と禅在が乗り込んでくることも有り得る。


 ただ、しるこババアは、作戦は成功すると言い張った。


「……確かにじゃ。鍵を盗みに入ったことは知られておったのじゃから、シルコロシアムへ封印しようとしていることは知られておるじゃろう。じゃが、決闘の最中に何かを仕掛けてくるのだろうくらいにしか考えていないのではないか? まさか前日のうちに仕込みを完了しているとは思わんじゃろう。お主も夢の中の夢は見たいものを見られる訳ではないと言っておったではないか? 考え過ぎるのも良くないぞよ」


 僕の気付いていない確信を得る何かがあるのだろう。


 いずれにしろ、やるしかない。



 しるこヶ丘に登って降りてくるだけなのだが、念の為、僕達は武器と無線機は装着した。そして、羊羹のようなダイナマイトがたっぷり入った鞄を僕とジョニーは背負った。かなりの重たさだ。

 ジョニーは羊羹がダイナマイトや無線機や食料になることについて疑問を抱いていたが、僕は、ジョニーが現実世界の僕の枕元に大量に羊羹を置いたから、この世界の羊羹出現率が高まっているのだと考えている。


 朝早くにジョニーの家を出る。

 目指すのは傾斜のなだらかなしるこヶ丘の南側だ。そこからしるこ神社を通り過ぎ、しるこ御殿の裏側に向かう予定だ。


「ところでお主達は足に自信はあるかの?」


 歩きながらしるこババアが聞いてきた。


「しるこ力を昂ぶらせれば、世界記録を出せると思いますよ」


 そう答えると、ジョニーが話に割り込んできた。


「いや、お前は世界記録を出せん。なぜなら俺の方が早いからだ」


 それを気にも留めず、しるこババアが重ねて質問をしてくる。


「速さだけではなく距離は? 例えば六キロくらいはどれくらいで走れるかのう」


「十分強? ですかね。やってみないと分からないです」


「まあ、そうじゃろうな」



 話をしているうちに、しるこヶ丘の入口についた。

 上り坂を見る。まだ日が昇ったばかりで、しるこヶ丘の森の中は暗さが目立つ。


 その闇の中に、人影が見えた。

 人影が僕達に近付いてくる。大きな頭のシルエットで何者なのか分かる。


 最悪だ。


「やあ、ボク、まってたよ。おまつり、はじめよー。ハハハ」



 しるこの神は楽しげに笑った。その向こうには禅在の姿もあった。


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