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しるこ地獄  作者: gojo
第四部 しるこ地獄
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六十八、分かり易い解説

 僕はしるこババアの前に膝を付いた。


「お婆々様! 無事だったんですね」


「神の攻撃を手に受け、しるこになりそうな時もあったが、ほれ、自ら切断して逃げたのじゃ……」


 そう言うと、しるこババアは袖を捲った。彼女は、左腕の肘から先を失っていた。


 それでも一緒に戦った仲間が生きていてくれて、僕は隠すこともなく喜びを露わにした。

 そして、今までのこと、現実、夢、全てのことを彼女に伝えた。


「……つまりじゃ。しるこ町という町は、無理心中未遂をしたお主とお主の母の夢の世界じゃということか。一年ほど前に誕生したばかりで、歴史も人も全て創られたものじゃと」


「はい。しるこで服毒したから、しるこで出来たしるこだらけの町になったのかと思います……」


「ん? この町は、しるこだらけなのか?」


「え? あ、ええ、まあ、その、現実世界よりはちょっと、しるこ要素が濃いですかね……で、僕の話、信じて貰えますか?」


 いささかの不安を抱きながら僕はしるこババアに尋ねた。自分自身でさえも荒唐無稽な話だと思っているのだ。全面的に信頼して貰えるとは思い難い。


 ところが、彼女は深く納得したように頷いた。


「うむ。これで禅在の言葉の意味が分かったぞよ。あ奴とわしは創造主が違う。あ奴、否、あ奴を含む神を崇める者達は、お主の母、しるこ伝説の言葉を借りるならば『月の世界から来た女』の創ったもの。わしを含む反体勢力は、お主、『しるこ太郎』が創ったものだったのじゃな。しかし、なぜ敵対するのじゃ?」


「母は僕のことが嫌いです。僕が火傷を負わせたから」


「それが全ての原因だとでも? 話を聞くと、お主も心中を受け入れたようじゃが」


「良く覚えていないです。現実と夢を行き来し、記憶が曖昧なんです。そもそも、どうして母にしるこを浴びせるほど怒ったのかも覚えていません」


「なんじゃ。頼りないのう……」


 気不味い空気が漂う。僕は視線を落とし、軽く頭を下げた。


「すみません。とにかく、僕は母を現実世界に連れ戻すため、またここに来ました」


「どうやって連れ戻すのじゃ」


「夢と現実の通路はしるこの海です。たぶん、二人で海に飛び込めば帰れると思います」


「果たして、それで解決するのかのう」


 意外な言葉に対し、すぐに問い質す。


「と、言いますと?」


「お主が現実世界に行っている間も、この世界は存在し、お主が創ったと思われる反対勢力も存在しておった。そして、お主は現実世界で夢からの通信を聞いたのじゃろう? たとえ現実世界に戻ろうとも、夢は現実を侵食し、お主達はここに帰ってくる。夢が完結するまで逃れることは出来ないのでは?」


「確かに。こっちの世界での話ですが、白昼夢を見ることもありました。あんな感じで現実からこっちに連れ戻される可能性もあります。でも、完結って、どうすれば良いのか……」


「物語を終わらすのじゃ。考えてみれば、この夢にはあらかじめ終わり方が提示されておる。その終わり方は二つ。全てはここに記されておる」


 そう言って、しるこババアは一冊の古びた本を懐から取り出した。


 その本の表紙には、「しるこ伝説」と書かれていた。


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