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しるこ地獄  作者: gojo
第三部 しるこパニック
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五十五、新たな希望?

 夢を見た。そこは、シルコロシアムだった。



 松山剛拳は選手控え室でしるこを作っていた。

 剛拳は若きシルコンバットの戦士だ。以前は総合格闘技の選手として業界にその名を轟かせ、世界を狙えるとも言われていた。ところが彼にとって、そんな名声はただ虚しいだけだった。

 剛拳は死闘に餓えていたのだ。



 運命が変わったのは半年前。友人に誘われて、シルコロシアムに赴いた時のことだ。

 競技場ではシルコ・クエンティーノが戦っていた。雄叫びと肉の焼ける臭い。命懸けの戦いがそこにはあった。

 剛拳は興奮した。そしてシルコの放つ黒いオーラに、恐怖すると共に、魅了された。

 俺の生きる道はここにある。


 彼はその日のうちに戦士としての登録を済ませたのだった。



 剛拳はしるこの味見をしながら思った。

 今日の試合も勝ってやる。そしていつかは、シルコ、禅在という強敵を倒し、天下一の狂戦士となるのだ。


 道着の帯を締め直す。準備は整った。係員に呼ばれ、剛拳は鍋を持って競技場に向かった。薄暗い連絡通路から競技場を見ると、白く眩しい。

 歓声が聞こえる。既に対戦者が入場しているのだろうか。それにしても凄い歓声だ。はて、今日の相手はそんなに有名だったか? 


 入場して歓声の正体が分かった。そこにはアフロヘアの青年が立っていた。

 しるこの神だ。

 神の足元には大きなしるこの染みが出来ていた。対戦者と審判が溶かされたようだ。剛拳は一瞬戸惑ったが、すぐに覚悟を決めた。

 相手が神でもやることは同じ。天下一を目指すならば全てに勝たなくてはならないのだ。


 黒い力がみなぎる。


「神よ。あんたに恨みはないが、そこに立っている以上、俺は全力で、殺すぜ」


 剛拳の言葉を聞いて神は笑った。嬉しそうだ。剛拳も嬉しくなってきた。


 剛拳は手足を鍋の中に入れた。そのしるこは通常のものより粘り気が強い。腕に脚にしるこが絡みつく。

 そして、「ホワタッ」と甲高い声を出して、大きく拳を振ると、塊が神めがけて飛んでいった。神は体を傾け、それをかわした。

 塊が客席まで飛んでいき、爆発する。


「なかなかやるな。では、これはどうだ。アタタタタタタタタタタ……」


 剛拳が両の拳を振ると、雨のようにしるこの塊が幾つも飛んだ。神はかわす。客席が破壊されていく。

 剛拳は高揚した。これだ。俺が欲していたものは『強敵』と書いて『とも』。


 彼は片足を振り上げ、大量のしるこを放った。そのしるこは鮫のヒレのように形を変え、地面を這いながら神に向かっていった。

 神は難なく避ける。ところが剛拳が、「そいつは追うぜ」と呟いた瞬間、地面を張っていたしるこが軌道を変えて加速し、神を襲った。

 神は咄嗟に高く跳んでかわした。


 かかった。剛拳は神が跳ぶことを予測し、既に神の背後に跳んで待ち構えていたのだ。彼は両手を合わせ、それを鮫の口のように開いて勢い良く前へ突き出した。

 鮫の形をしたしるこが放たれる。鮫は空中にいた神を捉え、神は跡形もなく吹き飛んだ。


 剛拳は着地し、親指で自分の鼻の頭を弾いた。


「それ、みがわりの、しるこ人形。あたらしく、おぼえた技」


 背後から囁きが聞こえた。


 剛拳が振り返ろうとした時、彼の口から腕が生えた。神の腕が剛拳の頭を貫いたのだ。

 神が腕を引き抜くと、剛拳の体は、姿を消した。


 地面には、新しいしるこの染みが増えていた。


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