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しるこ地獄  作者: gojo
第三部 しるこパニック
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五十二、輪になって踊ろう

 夢を見た。懐かしい曲が聞こえてくる。


 そこは幼稚園だった。子供達が園庭で踊りの練習をしている。秋に行われる運動会の出し物を練習しているようだ。


 先生と思われる女性が手を叩きながら声を張る。


「はい、そこ手を離さない。足を大きく動かして。前、横、後ろ、チョンッ、前、横、後ろ、チョンッ。そうそうそう、上手に出来ていますよお。次、歌います。はい、しるこしるこしるこしるこ、しるこ、しるこ♪ ヘイッ」


「しるこしるこしるこしるこ、しるこ、しるこ♪ ヘイッ」


 子供達は手を繋いで輪になって踊っていた。

 曲に合わせてステップを踏み、輪がクルクルと回る。歌う部分では輪を小さくして、「ヘイッ」と言って右足を上げる。


 僕も子供の頃に踊ったことのある演目だ。しかし、歌詞は違っていた。



 一曲踊り終わると、配置換えが行われた。就学前の子供達にとっても誰と手を繋ぐことになるかは関心事だ。途端に騒がしくなる。子供特有の高い声があちこちからあがった。

 先生が手をパンパンと叩き、どうにか静まって配置換えは終了。


「じゃあ、次は本番だと思って踊って下さいね。先生は声を出しませんからね」


 そう言って、先生は曲を流した。


 練習にも関わらず、周りには見物客が多くいた。

 各クラスの先生、園長らしき初老の男性、お迎えの時間が近いのだろうか、父兄と思われる人達もいた。


 子供達は少し緊張しながら踊り始めた。再び輪がクルクル回る。


 その輪の中に、極端に背の高い子供が一人紛れていた。しかもアフロヘアだ。


 それは子供ではなく、しるこの神だった。神はとても楽しそうに踊っている。子供達は、そして見物客も、誰も突っ込まない。


 特に問題もなく踊りは進行する。ただし、何人かの子供達は鼻からしるこを垂らし始めていた。嫌な予感がする。もうすぐ曲の終りが近付いている。


「しるこしるこしるこしるこ、しるこ、しるこ♪ ヘイッ」


 誰も失敗することなく、踊りは終わった。何より、誰も溶けなかった。

 僕は、「ヘイッ」のタイミングで全員しるこになるのではないかと思っていた。


 先生が子供達を褒める。


「うまくいったね! よし、せっかくだから決めのポーズをしようか。せーのっ」


「ヴィクトリー!」


 子供達は繋いだ手を上にあげた。

 瞬間、子供達は全員しるこになってしまった。


 園庭の中心に、しるこの輪が描かれる。しるこの神は、その輪の中心に立ち、一人両手をあげて喜んだ。

 すると、拍手の音が聞こえた。手を叩いているのは母だった。


「神様。とても上手に踊れましたね」


 そう言って母は、神の頭を撫でた。

 神は嬉しそうに笑った。そして、再びしるこの輪の中心に立ち、両手をあげ、見物客達を睨んだ。


 見物客達は、しるこを掲げながら平伏したのだった。


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