三十六、楽しかった修学旅行
しるこババアの家が倒壊したことにより、僕達は空き家と化しているジョニーの家で共同生活をすることになった。
日の出ている時間は海沿い公園まで出向き、そこで修行をしている。
修行の場所を海沿い公園にしたのには幾つか理由がある。まず広い、次に人がいない、そして何より、次の決戦予定地だからだ。
大まかな作戦は、鍋を地中に埋めて落とし穴を作り、そこにしるこの神を追い込むというものだ。その為には、広いスペースがあり、地面が土で、かつ蓋を隠して吊るす場所が必要だった。
海沿い公園はその条件を全てクリアしていた。また、最近の神の行動パターンも都合が良かった。町役場で行われている夏休みキャンペーンという催しにしるこの神は参加しており、夏の間は毎日、律儀に公園の近くを通るのだ。
「暑い」
そう言いながら、錆色レンジャーが水飲み場で水を浴びている。
共同生活を始めて二週間弱。しるこレンジャー達の色の違いが分かってきた。
「錆色さん。水を浴びる時くらい、目出し帽を脱いだらどうですか?」
「これはもはや皮膚なんだよ」
ワインレッドと赤褐色、しるこババアの三人が決戦に必要なものを揃えるために出掛けてしまい、一時修行を中断、各自自由行動をしていた。
「交代してくれよ」
地面から臙脂色の声が聞こえる。
彼はシルコと一緒に鍋を埋めるための穴を掘っていた。
錆色が穴を覗き込み、提案をする。
「今はみんなで休もう」
すぐにシルコから返事がくる。
「コレモ修行デース」
シルコがおたまを振り下ろし続けるので、僕が臙脂色に代わって穴に入った。
しばらくすると、赤褐色が帰ってきた。僕は穴から這い出た。
「蓋を吊るすロープを買ってきたぞ。それと、こんな槍を海で二本も拾った」
「槍というか、銛ですよね……」
率直な感想を漏らすと、赤褐色は怒鳴り声をあげた。
「どっちでも良いだろ! うるさいよ、お前。お前、うるさい」
「す、すみませんでした……でも、そんなもの何に使うんですか?」
「二本セットなら大きな箸に見えなくないか? 武器になると思ったんだよ。ゆで小豆もしるこも消耗品だからな。それ以外の武器も幾つかあった方が良いだろ」
「箸に見えますかねえ」
「は? じゃあ、柄の部分に『はし』って書いてやるよ!」
錆色が口を挟む。
「俺にも一本くれ。俺は柄の部分に『著』って漢字で書いておこう」
赤褐色と錆色が油性マジックで銛に字を書き始めた。
「皆、待たせたのう」
その時、しるこババアとワインレッドが戻ってきた。
しるこババアが手提げを一つだけ持っているのに対して、ワインレッドは大量に荷物を抱えている。汗まみれだ。
「ほれ、全員分のアイスしるこオレを買ってきたぞよ。少し涼もうではないか」
夏の午後、海を見下ろす公園で僕達はくつろいだ。
なんか、平和だなあ。




