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しるこ地獄  作者: gojo
第二部 しるこ祭り
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三十五、黒い昂ぶり

 しるこババアの家での修行合宿が始まった。

 連日、ずっと庭で鉄板に向かってゆで小豆を投げている。


 シルコだけはおたまでしるこを投げることが許されているのだが、その分、指導も厳しいようだ。


「シルコ、お主はスジが良い。禅在のもとで鍛えただけのことはある。しかし、まだまだ力が分散しておるのう。もっと力を一点に絞り、研ぎ澄ますのじゃ。さすれば、より少ないしるこで強い力を生むことが出来る。例えるならば、今のお主の攻撃は拳によるもの、それを刀に変えるのじゃ。良いか、手本を見せよう。他の者も見るが良い」


 しるこババアが鉄板の向かいに立ち、鍋の中に素手を入れて構えた。そして、少量のしるこを握り素早く腕を振った。

 しるこが弧を描きながら薄い刃となって飛んでいく。しるこの刃は鉄板を音もなく透り抜け、上下に切断した。


「ここまで出来るようになれとは言わん。ただし、ゆで小豆で厚さ一センチの鉄板に穴を開ける、それくらいは出来るようになって貰わんと話にならんな」


 先日、しるこ力について更に詳しい話を聞き、自分なりに解釈をしてみた。

 しるこ力とは、心の中の黒いモヤモヤとしたもの、つまり、怒り、憎しみ、悲しみ、妬み、恐怖、後悔、といった負の感情のエネルギーである。

 しるこの爆発は、そういった負の感情が極まった状態、例えば、明確な殺意を抱くとかトラウマがフラッシュバックするような状態である。

 理屈は分かったが、簡単に感情はコントロール出来るものではない。投げても投げても、ゆで小豆は鉄板に張り付くだけだった。


 隣から、キュンッ、キュンッと風を切る音がする。しるこレンジャー達だ。彼らは、ゆで小豆を投げては誰が一番深く鉄板にめり込ませたかで口論をしていた。

 少し離れた所ではシルコが特訓をしているのだが、彼の放つしるこの塊は回を重ねる毎に獣の姿に近付いていた。先程などは「ガオーッ」という鳴き声が聞こえた気さえした。


 来てはいけない所に来てしまった、と思った。


 しばらくすると、しるこババアが困った顔をしながら僕の所へ来て嘆いた。


「……初めて会った時は、凄まじいしるこ力を感じたんじゃがのう」


 凄まじいしるこ力? どす黒い心をしているということだろうか。

 そんなことを考えながらゆで小豆を投げようとした時、しるこまみれの赤ん坊の姿が頭をよぎった。

 手元が狂い、ゆで小豆が的を大きく外れ、しるこババアの横を通り過ぎて彼女の家へ飛んでいく。


「何処を狙っておるのじゃ。コントロールの良し悪しは、しるこ力以前の……」


 その時、説教をする彼女の背後から、ピキピキと岩の軋むような音が聞こえてきた。その音は次第に大きくなり、突然、三階建ての家が爆発、倒壊した。


「なー!」

 と、声を揃えて全員。


 しるこレンジャーは、「なんというしるこ力だ」と驚愕。


 シルコも、「黒イオーラガ見エマシタ」と衝撃を受けている。


 しるこババアは膝を付き、「住む所がなくなってしまった……」と嘆いていた。



 それは、嘆きますよね。


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