三十三、しるこ神社にて
しるこヶ丘の中腹にあるしるこ神社に、僕とシルコ、しるこレンジャーの六人で訪れていた。夏の昼下がりということもあり、蝉の声が五月蝿い。
ただ、大きな木々に囲まれ、神社周辺は冷たい清浄な空気に包まれていた。
「暑い。暑い。暑い。汗が止まらないぜ」×四。
それでもフンドシ姿のしるこレンジャー達は文句を言っている。
「その目出し帽を脱いだらどうですか?」
そう僕が提案すると、しるこレンジャーの一人が不機嫌そうに答えた。
「は? そんなことしたら正体がバレるだろ!」
彼らの頭は不自然に膨らんでいた。おそらくそこには大銀杏が隠されていることだろう。
「おい、赤褐色! 乱暴な言い方はよせ。失礼だろ。貧弱な君、悪かったな」
「それにしても、簡単にここまで来られたな」
「白玉総一郎の敷地内だから警備とかされていると思ったんだけどね」
「まさかトラックで堂々と乗り入れることが出来るなんてな」
未だに、誰が何色なのか区別が付かない。
本殿の格子状の扉には南京錠が掛けられていた。シルコが、おたまでそれを破壊し、皆で中に入る。
奥に進むと、そこには巨大な鍋が祀られていた。高さ約二百四十センチ、直径約百八十センチ。鉄製の鍋だ。
シルコが感嘆の声をあげる。
「オォ、ファンタスティック」
その迫力ある鍋を見ながら、僕はしるこババアの言葉を思い出した。
『対決して分かった。おそらく、しるこの神を殺すことは不可能じゃろう。あやつを倒すには、伝説の通り、鍋に封印するしかないのじゃろうな……』
鍋は、過去にお祭りの時などに見たことはあるが、近くで見てみると想像以上に大きい。六人でも運ぶのは困難ではないかと思えたが、確認すると、ご丁寧にキャスター付きの台に載っていた。
これならば容易に移動出来そうだ。試しに一人で押してみる。鍋はいとも簡単に横に動いた。
すると、鍋の置いてあった所に下りの階段が見つかった。
シルコとしるこレンジャーに脅され、僕が先頭になって地下に入る。
初めのうちは暗くて何も見えなかったが、目が慣れるにしたがい、階段からの明かりだけでも何があるのか分かるようになってきた。
岩と土が露出した広い空間。その中央に石で組まれた鍋型の建造物があった。
入口が壊れている。建物の中に足を一歩踏み入れると、ざらついた感触がした。良く見ると、足元に人の形をした、干からびたしるこがあった。
円形の室内。見覚えのある場所だ。部屋の中央には、やはり見覚えのある、烏帽子も落ちている。
しるこの神はここに閉じ込められていたに違いない。
僕は思ったことを皆に伝えることにした。
「今まで不確定でしたけど、しるこの神は鍋に封印出来ると確証を得ました。鍋型の建造物、造りから察するに牢獄です。では、誰が閉じ込められていたのか。しるこ化の形跡があったので、しるこの神でしょう。つまり、鍋に神は閉じ込められるのです」
「なんだ? 突然推理探偵みたいなこと言いやがって。お前は主人公か!」
「ハッハッハッ。貴方ガ主人公? アメリカンジョークデスカ?」
この人達のことは好きになれないと思った。




