三十 、不要なあらすじと進まない展開
――前回まで――
ついに本当の力を発揮したしるこの神。しるこ化の早さは想像を絶していた。
「土木―! コンドミニアムー!」
あらゆる攻撃を無効化する神を前にして、『警官』、『土木』、『飛脚』、『頭取』、『コンドミニアム』と、こるし屋の仲間達が次々倒れていく。
それを目の当たりにした『頭取』の息子は、父の無念を晴らそうと白玉団子を投げた。それは神の頬を直撃した。
怒り狂う神。
「……おまえら、なまいきだぞ!」
しるこの神はしるこの塊を投げつけてきた。『スーツ』が犠牲となり、続けて、何人もの仲間がしるこになった。
なす術のないこるし屋達。その時、五人の人影が現れた。
それは、新たな敵なのか、それとも救世主なのか……
『第三十杯目 ごっつぁんです、俺達しるこレンジャー。助っ人参上の巻』
砂利の山の上にいる五人が叫んだ。
「待てい!」
その場にいる全員が五人を見上げた。しるこの神さえも見上げていた。
そこには、目出し帽を被ったフンドシ姿の太った男四人と、遺影を持った年老いた男一人が立っていた。男達は注目を浴びていることを確認し、一人ずつ自己紹介を始めた。
「ワインレッドレンジャー!」
と、太った男が言い、ポーズを決めた。
「錆色レンジャー!」
と、太った男が言い、ポーズを決めた。
「臙脂色レンジャー!」
と、太った男が言い、ポーズを決めた。
「赤褐色レンジャー!」
と、太った男が言い、ポーズを決めた。
「息子を返して下さい!」
と、年老いた男が言い、遺影を握り締めた。
「五人合わせて、しるこ戦隊、しるこレンジャー」×四。
「息子を返して下さい!」×一。
静かな間。
「いやいやいや、憲司君のお父さん。台詞が違いますよ」
「やっぱり、お父さんにお願いするのは無理があったんじゃないか?」
「だからと言って、四人じゃ決まらないだろう」
「そうだ。偶数では中心がなくなる!」
「息子を返して下さい!」
「中心がないと、レッドの俺が目立たないなあ。憲司君さえいれば」
「お前はレッドじゃなくてワインレッドだ。リーダーって訳じゃないんだ」
「ローテーション制にしようって話し合いで決めたじゃないか……」
「そうだ。お前は今回だけ中心なんだよ!」
「息子を返して下さい!」
五人? 否、四人の男達は山の上で口論を始めた。
どこから突っ込んで良いのか分からない。とりあえず、目出し帽もフンドシも、四人とも同じ色に見えることは指摘しておこう。
「と、油断させといて、トォー!」×四。
突然、四人の男達は山を駆け下り、しるこの神に向かっていった。
※ワインレッド=#b33e5c
錆色=#6c3524
臙脂色=#b94047
赤褐色=#683f36
小豆色=#96514d




