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しるこ地獄  作者: gojo
第二部 しるこ祭り
30/93

二十九、最初から決まっていた

「うおぉー!」


 叫びながら『土木』がツルハシをしるこの神の頭めがけて振った。

 神は避ける素振りさえ見せない。ツルハシは神の体に触れると同時にしるこになり、思い切り空振りの形となった『土木』は体勢を崩した。その横腹を神は蹴飛ばした。『土木』の腹が瞬時に溶け、体が上下に千切れて吹き飛ぶ。

 続け様に、『コンドミニアム』がスコップを突き出したが、やはりそれもしるこになり、彼の体は地面の染みになってしまった。


 『頭取』が叫ぶ。


「土木―! コンドミニアムー!」


 計画段階でのしるこ化に掛かかるとされていた数秒という時間は、単にしるこの神が本気を出していなかっただけなのだ。

 作戦は根本から間違っていた。接触と同時にことごとく武器がしるこになってしまうのでは、ダメージを与えることは不可能だ。しかし、皆は仲間を失ったことで冷静さを失っていた。武器を構え、次々と神に向かっていく。


 『飛脚』が持ち前の脚力を活かして素早く神の背後を取った。鍬を首めがけて振る。次の瞬間、『飛脚』は青い縞のシャツだけ残して武器と同時にしるこになった。


「俺もやるぞ!」


 『モブ一』が吼える。

 しるこババアは叫んだ。


「皆、落ち着くのじゃ。行っては駄目じゃ。モブ一、お主は特に駄目じゃ」


 だが、誰も話を聞かない。『モブ一』の体は散った。

 続けて、『モブ二』、『モブ三』もしるこになった。


 その様子を見た『頭取』は、無言で息子の頭をクシャクシャと撫で、そして、日本刀を構えて神に向かって走っていった。直後に、湿った音が響く。


 しるこの神の周りはしるこまみれになった。

 特攻せずに踏み止まった仲間は、呆然とそれを眺めた。神が恍惚の表情を浮かべながら近付いてくる。しるこババアが持参したしるこの鍋の中に手を入れ、何やら構えを取った。

 神が更に一歩近付く。


「お父さんとお母さんを返せ!」


 『頭取』の子供が叫び、ポケットから取り出した何かを投げつけた。


 ペチッ。


 しるこの神の頬に白玉団子が張り付いた。

 白玉団子はジワジワと剥がれて地面に落ちた。神はそれを見下ろし、それから再び視線を上げて、僕達を強く睨みつけた。


「おまえら、おまえら、なまいきだぞ!」


 そう言うと神は元いた場所に走って引き返し、地べたに広がるしるこをつかんで僕達に投げつけてきた。

 拳骨大のしるこの塊が子供にぶつかりそうになり、『スーツ』が覆いかぶさるようにかばう。『スーツ』は、やり遂げた顔をして溶けていった。


 しるこの神は次々としるこの塊を投げてきた。武器で身を守ろうとした者もいたが、塊は武器を溶かし、そのまま仲間の体を蝕んだ。

 そして、いよいよ僕の所へ塊が飛んできた。僕は恐怖のあまり体が思うように動かず、ただ目を閉じた。


 目を開けると、箸で塊をつかんでいた。反射的にそうしたようだ。慌てて塊を箸ごと捨てる。どうにかしるこ化は免れたが、状況は一切好転していなかった。


 どうしたら良いんだ。どうしたら良いんだ。どうしたら良いんだ。


 そう思った時、砂利の山の上に五人の人影が現われた。

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