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しるこ地獄  作者: gojo
第二部 しるこ祭り
29/93

二十八、開戦ドン

 町の南、山沿いの採石場跡地にこるし屋達は集合した。

 いつもの面々、加えて『頭取』の幼い息子が来ていた。『頭取』曰く、奥さんの仇を取るところを子供に見せたいとのことだった。


 他地域から援軍も来るはずだった。しかし、一向に姿を見せない。

 苛立った『土木』が、ぼやく。


「逃げやがって。だから信用出来ねえって言ったんだ」


 僕は、全員しるこの神にやられたのだと悟ったが、そのことは誰にも言わなかった。夢のことを信じて貰えるとも思っていなかったし、ネガティブな情報で作戦が延期になったら堪ったものではない。


 しかし、いつもの面々だけでは二十人にも満たない上、問題は人数のことだけではなかった。予定では本町の同士が一人当たり二、三回攻撃出来るだけの武器を用意することになっていた。現状では一人一回分の武器さえ行き渡らない。


 計画を続行するか否かという迷いが皆に生じていた。


「今やるべきです」


 あず美や母のことを想い、そう提案したが、しるこババアを含め誰も返事をしない。その時、偵察の『飛脚』が戻ってきた。


「しるこの神はしるこヶ丘を過ぎました」


 『スーツ』が応じる。


「予定よりもずいぶん早いな」


「奴さんは住宅地でお食事中です。ここへの到着は予定通りになるかと」


 お食事中、つまり誰かがしるこにされているということだ。

 それを聞いて、『頭取』が決断を下した。


「青年の言う通り、今やるぞ。決戦の日を改めたところで万全の準備を整えられる保障はない。何より、倒すまでの時間が延びればそれだけ犠牲が増えるんだ」


 全員が覚悟を決めて頷いた。



「武器になりそうなものはこれくらいしかない」


 そう言って、『スーツ』が僕に箸を一膳差し出してきた。不安そうにそれを受け取ると、『警官』が僕の肩に肘を掛け、自慢げに拳銃を振って見せた。


「心配ねえさ。俺が奴の眉間に風穴を開けてやるからよ。こいつでな」



 正午が近付き、各自、所々に積んである砂利の影に身を隠す。


「来たようじゃ」


 しるこババアが言った時、遠くにアフロヘアが見えた。


 徐々に近付いてくる。


 まだだ。あいつがこの空き地の中央に来るまで息を殺して待て。


 中央で足を止める。


 僕達は一斉に飛び出して、しるこの神を取り囲んだ。


「挨拶は無しだ」


 そう言って『警官』が銃を撃った。

 自慢していただけのことはあって、弾丸は的確に眉間を捉えた。神の体が仰け反り、黒い液体が散る。

 しかし、神は倒れなかった。それどころか、体を起こし、僕達に向かって笑顔を見せ眉間の液体を拭った。

 そこには傷一つ付いていなかった。

 慌てて『警官』が立て続けに発砲する。全て神の体に命中するが、やはり倒れない。弾は神の体に突き刺さることなく、着弾と同時にしるこに変わっていた。


 しるこの神は体に付いたしるこを手に取り、『警官』に向かって投げた。

 『警官』の眉間にそれが当たった瞬間、彼の体は針を突き立てられた風船のように弾けた。


 神は、物をしるこにするのに一秒も必要としなかったのだった。


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