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しるこ地獄  作者: gojo
第二部 しるこ祭り
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二十六、大人の事情

 話はあず美が入院する三日前に遡る。


 僕は怪しげな宿屋に『こるし屋』の仲間達と一緒にいた。

 反しるこ町団体、『しるこ』の反対だから『こるし』、こるし屋だ。しるこババアを筆頭に、警官や学生、会社員など、様々な人がいる。皆、しるこは好きだが、しるこの神には反感を抱いていた。


 カラオケ用の台の上で、『スーツ』が説明を始めた。今回の作戦についてだ。


「……という訳で、やはり問題は触れた物を何でも一瞬にしてしるこにしてしまう能力だ。ただしこの能力、一瞬とは言っても前例を見る限りでは物を溶かすのに数秒、早くても二秒は掛かっている」


 全員が頷くのを確認し、更に話を続ける。


「そこで今回の作戦だ。まず、柄の長い武器を用意する。本来は飛び道具が理想的だが、ほとんど用意出来そうにない。そして、武器で神を殴る、もしくは刺す。攻撃を加えたら直ちに武器を破棄する。しるこ化が始まるからだ。いつまでも握り締めていると武器と一緒にしるこになってしまう。それから次の者が攻撃をする。武器を捨てる。この繰り返しだ。つまり、一人一回ずつ、しるこの神が死ぬまで攻撃を続けるリンチだ。必然的に人数が必要になり賛同者を集める手間は発生するが、その分、しるこの神を倒した後の反逆者としての責任を分配出来るというメリットもある」


 実は責任の分配が最も重要視されていた。

 しるこの神を倒しても、その後、信棒者からの復讐や町議会からの制裁の可能性がある。誰も一人で生贄にはなりたくないのだ。


 説明が終わった時、『飛脚』が外出先から戻ってきて報告を始めた。


「本町との渡りがつきました。日時と場所さえ知らせれば応援に来てくれます」


「信用できるのか? 本町に住んでる奴は役人が多いだろ?」


 そう尋ねたのは『土木』だ。


「だからこそ議会のやり方に不満を持っている輩も多いのですよ。あ、それから、シルコ・ザ・グレートさんは居場所さえ分かりませんでした……」



 その後、各自から現況報告がなされ、最後に『頭取』が話をまとめた。


「……参加者は四十人弱か。この辺が潮時だな。これ以上計画を先延ばしにしても士気が下がるだけだ。そろそろやるか。お婆々様、神の動きはどうですか?」


 しるこババアは頷き、呪文を唱えながらこの町の地図の上にしるこを一滴垂らした。すると、その滴は地図の上を転がり、西側の茂みの位置で動きを止めた。


「これは、五日後のしるこの神がいる場所じゃ」


 『土木』が愚痴を零す。


「その辺は林ばっかで大人数では戦えないっすよ」


「まだ早朝の位置じゃ。見ておれ。早送りするぞよ」


 しるこババアがそう言うと、再び滴が動きだした。東へ移動し、しるこヶ丘直前で急激に南下、そして山沿いで停止した。


「採石場跡地だ。特撮ヒーローの撮影場所で良く使われている所だ!」

 と、『学生』。


「戦闘場所に打ってつけだ。しるこの神は分かってるな。ハハ」

 と、『コンドミニアム』。


「俺が一番手だ。拳銃で頭をぶち抜いてやるぜ。二番手以降はいらねえさ」

 と、本物の警官である『警官』。

 彼は制服を着崩しており、その袖は肩の辺りで千切れていた。


 僕はなぜかこの男はすぐにやられるんじゃないかと思った。



 騒めきが収まると、しるこババアが力強く宣言した。


「五日後の正午に、採石場跡地で神と決戦じゃ」


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