表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しるこ地獄  作者: gojo
第一部 しるこ日和
21/93

二十 、定義付けによる降臨

 もはや町議会による箝口令は完全に機能しなくなっていた。


 至る所で、今度は何処其処の誰々がしるこになった、という噂が囁かれている。

 週刊誌の調べによれば、既に二十名以上の人がしるこになったそうだ。発見されていない遺体もあるであろうことを考慮すると、実際の数はおそらくその数よりも遥かに多いことだろう。


 当然これらの話題はテレビでも頻繁に取り上げられ、特にしるこババアがコメンテーターとして出演した特別番組は、多くの人の注目を浴びたのだった。

 注目された理由は、この番組だけは他と違ってしるこ化そのものではなく、しるこ化の原因について追求していたからだろう。

 世間では、願えばしるこになれる、というのが通説となっていたが、この番組は多くの目撃証言から一人の青年が関与しているという説を主張した。


 僕は、母と一緒にその特別番組を見た。


 母は、「なるほど、そうだったのね」やら、「この青年に会ってみたいわね」やらと、問い掛けとも独り言ともとれる言葉を終始口にしていた。

 昼のワイドショーで良く見る司会者、様々な分野の学者達、しるこババアらが並んで座り、その背後には大きく引き伸ばされた青年の顔写真があった。僕はその顔をじっと見つめた。


 それは、間違いなく夢に出てくる白シャツの青年だった。


「……お嬢さん、つまり、この青年が人をしるこにしているのですか?」


 司会者からのその質問に対し、しるこババアは断定的に答えた。


「うむ。青年と接触したものがしるこになっていることは間違いない」


 番組で語られた仮説は僕の夢の内容と一致していた。


「ズバリ聞きます。では、この青年は一体何者なのでしょう?」


「この者は…………『しるこの神』じゃ」


 その発言を疑う者はいなかった。


 瞬く間に『しるこの神』という言葉は流行した。

 元々この町の住人はしるこを崇める傾向にあったが、そこに『神』という要素が加わったことにより、一層信仰的な意見が幅を利かせるようになったのだ。

 自宅に祭壇を設けてしるこを祀る者、しるこ以外の食べ物を断つ者、語尾にしるこを付ける者、もちろんしるこの神を探し出してしるこにして貰おうとする者もおり、何処かでしるこの神が現われたという話があれば、そこには人だかりが出来た。

 そういった積極的にしるこの神を受け入れようとする姿勢のためか、しるこ化現象はより発生するようになった。



 件の特別番組から数週間後、町の世論の流れに圧され、しるこ神社の現管理者である白玉総一郎は、謎の青年を正式にしるこの神として認めることを発表した。

 また、その発表を受けて、町議会によりしるこになった人を名誉町民に認定することが決定された。



 時折、街頭で鉢巻をした男が演説を行っていることがある。


「……しるこ町名誉町民こそシルコニストの中のシルコニスト、つまりシルコニスタしるこ! 知る子達よ、シルコニアへの道は開かれたしるこ。しるこに向かって敬礼を!」



 もう、意味不明だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ