プロローグ
初めに小豆があった。そこに水が加えられた。
やがて砂糖と少量の塩が加わり、しるこは生まれた。
しるこは溶岩のように煮えたぎり、辺りに広がった。
しるこの中から、ただ一つの存在として、しるこの神は顕われた。
上も下もない無限のしるこの中に浮かぶ神。
目を開けようと、目を閉じようと、そこにあるのは暗闇のみ。一瞬と永遠は同等の価値を持ち、思考という能力は苦しみだけを生んだ。
ある時、どこからか女が顕われた。
「私は月の世界からやって参りました。しるこの神様、お一人では寂しいでしょう? 私が新たな世界を創って差し上げましょう」
そう述べると、女は左手を振りかざした。すると、しるこから大地が生まれた。
再び手を振りかざすと、しるこから空が生まれた。
やがて、海が生まれ、森が生まれ、羊が生まれ、そして、人が生まれた。
「しるこの神様、ここはあなたの世界です。あなたのための世界です。そして私もあなたのための存在です。しるこに光あれ!」
女は人混みの中に姿を消した。
しるこの神は世界を見つめた。
人々は神を尊んだ。知恵を身に付けた。町を作った。町は次第に発展し、安定した平和な世界が築かれた。
しるこは、光に満ちたのだった……
――――しるこ伝説より