見知らぬ妖刀、魔女との出会い
――此処は何処だ? 俺は何故倒れている……? そうだ、確か城を抜け出て妖しい刀を拾い、声が聞こえたと思ったら気を失ったのだった。とりあえず刀に話をしてみるとするか――
「……まあ傍から見れば気が狂ったように見えるだろうがそれを気にしては始まらん。周囲を確認……よし、誰もいない。覚悟を決めろ俺……ふーっ」
――息も整えた。周囲には誰もいない!今しかない!
「……おい、貴様。何者かは知らんが聞こえていたら返事をしろ。何故俺を此処に連れてきた!」
だが返ってきたのは静寂のみ。俺の声は辺りにむなしくひびく。
「……ちっ! やはりあれは幻聴だったのか……?周りには人はいなかった筈だが」
このまま見知らぬ草原で座り込んでいても仕方がない……とりあえずは人を探すしかあるまい。しかしこれからどうしたものか、そう思い立ち上がった瞬間、女の声がした。これすらも俺の幻聴だったらどうしようもないのだが。
「……薬草園から珍しく声がすると思ったら、薬草泥棒とはな。だが今は時期が悪い。大して金にはならんぞ?」
黒い被り物をしていて見るからにあやしい……人間。確か西洋に伝わる魔女……だったか? この見た目では男か女か判断が難しい……だがそんなことはどうでもいい。今奴はなんと言った? 泥棒だと?
「誰が泥棒だ無礼者! 貴様こそ黒い被り物なんぞしおって、人を泥棒呼ばわりとは片腹痛いわ!」
「……はっ。剣を持っていながら泥棒ではないとすれば山賊か?」
「……貴様、どこまで俺を愚弄する気だ。女と言えど、それ以上たわごとをぬかすなら斬って捨てる!」
刀、いや剣というなら俺もそう呼ぶことにする――を構える。今の時点ではただの脅しだが、相手はか弱いおなご。流石に逃げ出すだろう……そう思っていた。
「!!!……お前、その剣は……!それにその髪」
女が震えながら剣を指差す。なんだ? この妖刀……いや、剣がどうかしたのか? 髪は確かに若白髪だが……まあ言われ慣れているといえば慣れている。怒ることではない
「……剣に選ばれしものとは露知らず失礼した。よければ私の家に来てはくれないか? 非礼を詫びたい」
いくあてもない俺には断るという選択肢はなかった。これを逃せばもう機会は訪れないという気もしたからだ。何より頭を下げられては怒りを納めるしかあるまいて。
「……わかった。剣を向けてすまなかったな、女」
「まだ私は女と呼ばれる年では……ごにょごにょ……いや、まあいい。こっちだ、ついてきてくれ」
何かボソッと呟いたようだがよく聞こえなかった。まあいいかと、俺は女の後をついていくことにした――