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世界は今停滞期に入っている。そう何かで耳にしたことがある。世界全体の発展というものはわずかなものにすぎず、革新的なと言われるような新たなものが創造されることもない。
二十三世紀を迎えた今日、かつて先進国と発展途上国という名で隔てられていた国々も、今となっては大差ない。そのおかげか戦争もほとんど起きることなく平穏な毎日が繰り返されていた。
だからこそ、この平和の日々は永遠のもののように思えてしまう。刺激のない毎日ではあるが、平和なことだけは確かなのだ。皆がこの世界をよしとし、一部の人間は今の世界がかつて思い描いた未来の完成形だと言った。だれもそのことには疑問を抱かない。だれもがそこに永遠を感じていたのだから。
だが、俺にとっての平穏はあっさりと崩れ去ることになる。
なんてことのない平坦な一日、その一延長線上が俺にとってそのときだった。
あのときからは何もかもが幻想だった。
そう、彼女に話しかけられたあのときから、いや、もしかしたらもっと以前から。
すべてがあらかじめ定められていたことだとしても、すべてが計画しつくされていたとしても。
それに気づくことができず、ひとつの意思さえ聞き届けることができなかった俺は、最期までただの傍観者に過ぎなかったんだ。
いまさら自分の不甲斐なさを呪ってもしょうがないのに。
それでも……、この世界の矛盾と崩壊は呪おう。
もちろん、意味は無いけれども。