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俺とルールと彼女  作者: 幽々
呪いの世界
131/173

柊木雀の課題 【1】

これは気付きの物語。 俺が一番知らない想いというものに、気付き始める物語。


さて、どうしよう。 寝癖が立った髪のまま、歯を磨きながら考える。 いやまだあれだ、夢の可能性もなきにしもあらず。 そうだ、夢だったんだ。 良かった良かった。


「……」


冷たい水で顔を洗い、口の中を濯ぐ。 真冬の冷たい水ほど、目が冴えるものはないだろう。 けど、寝起きの


コーヒーが目覚ましには良いと柊木(ひいらぎ)は言っていたっけ……。 お、それなら冷たいコーヒーで顔を洗うのが一番良いんじゃないだろうか? 今度クレアにでもやってもらおう。 へへへ、今から楽しみだ。


陽夢(ようむ)様」


「ん、ああ、おはよう」


なんて馬鹿なことを考える俺に話しかけてきたのは猫……というと少し語弊がある。 正確に言えば、猫の姿をしたエレナだ。 猫耳少女というのが人気があるらしいが、ことエレナに関して言えば完全なる猫耳である。 本来あるべき姿の猫耳少女とは、もしかするとこれなのかもしれない。


というのも、こうしてエレナが俺の家に居る理由というのも。 あれから俺はエレナを家へ連れ帰り、今では成瀬(なるせ)家のペットとなっているのだ。 意外にもここの生活は気に入っているらしく、日々笑顔が絶えないエレナさん。 元より馴染みやすい性格と言っていたが、それを聞いた俺はあのボロアパートでの生活も納得したっけか。


しっかし、喋る猫とはまた面白い。 金に困ったら然るべき場所に持って行ってみようかな。 大金が入るねやった。 そのお金で新しいパズルでも買おう。 夢ちっさいな俺。 間違いなく全人類の夢を下から数えた方が俺の夢に早く辿り着きそうだ。


「何かあったのですか? 顔色が優れないようですが」


そんな俺の考えを知らず、エレナは心配そうな声色で言う。 声色もだが、顔も少々心配しているようだ。 猫の表情が分かるとは、将来はトリマーになれるかもしれない。


「……朝はこんなもんだよ。 ま、なんかあったっていうのはそうだけど」


「そうですか……。 わたくしに何かお手伝いできることがあれば、遠慮なく仰ってくださいね」


「おう、ありがとな」


エレナは俺の言葉を受け、笑う。 正直言って猫がハッキリと笑っているその姿は不気味だ……。 絶対に、口が裂けても言えないけどな。 エレナ、その姿で笑うの不気味だからやめてくれとか、言ったら一週間くらい落ち込みそうだ。


「陽夢? なにボサッとしてんのよ。 電話よ、電話。 夢花(ゆめか)ちゃんから」


「ん」


いつから俺の母親は西園寺(さいおんじ)さんのことを名前呼びになったんだ。 それと西園寺さんはどうしてわざわざ家に電話するんだ……。 俺も携帯をついに手に入れたというのに。


そういえばそれで思い出したが、俺の携帯はあまり携帯としての役割を果たしていなかったりする。 緊急事態のときなら役に立つが、それ以外なら普通に会って話すからだ。 だって、俺が電話する相手なんて家族といつもの三人くらいのものなので。


西園寺さんは携帯を持っていないし、電話も何故か家にかけてくる。 柊木はまず電話もメールも滅多にしてこない。 休みの日だとか、何時にどこどこへ集まろうというメールも「明日午後十三時駅前集合遅刻厳禁」といった感じか「先日遅刻理由何故?」といった感じのメールしか来ない。 別に全部漢字なのは構わないが、せめて句読点くらいは付けて欲しい。 おかげさまで俺も同じ内容のメールを送り返して、そのやり取りは最早暗号だ。 少なくとも日本人のメールのやり取りではねえな……。


次にクレア。 あいつの場合は二人とは真逆である。 というかむしろ、逆にメールが送られすぎているのだ。


休みの日とか、朝の八時にメールが届いたりするしな。 内容は「今なにしてますか?」とか。 寝てるに決まってるだろ馬鹿かお前は。 休みの日にきっちり八時かその前に起きてる奴はただの馬鹿だ。 俺の持論だけどな。 で、それで昼過ぎに「ねてた」と返すと「無視されたのかと思いました……変な顔文字」と返ってくる。 当然無視はしていないので、俺の名誉のために「無視するわけないだろ」と返す。 すると「そうですよぬ! 変な顔文字」とすぐに返事がくる。 多分、そうですよねの打ち間違いかと思われる。 てっきり俺はやり取りが終わったと思い放置したのだが、次の日……クレアに何故か殴られたという。 ちなみに変な顔文字の部分は本当に変な顔文字だ。 クレア的には可愛い顔文字のつもりかもしれないが。


まぁそれで俺が学んだのは普通の女子とメールをすると、あんな苦労をしなければならないということである。 その内、数秒以内に返事をしないと殴られたりするのだろうか? 学校行くのやめようかな。 一生部屋に引き篭もっていたい、切実に。


『成瀬くん、聞いてる? さっきからずっと何も言わないけど……』


おう……なんてことだ。 頭の中でクレアの恐怖に怯えていたら、現実世界で西園寺さんのことを無視してしまうとは。 クレアの奴め……いつか不意打ちでもしてやろう。 きっとその場合は血みどろの戦いが起きるな、主に俺の血で。


「あーっと、聞いてなかった。 寝ぼけてるかも」


『もう、お寝坊さん。 それでね、実は今日の朝起きたら……』


そこまで言われて、理解した。 どうやらこの分だと、俺たち全員に降りかかったとみて間違いないだろう。


所謂あれだ、あれ。 例の『課題』というやつだ。


そして今回は、それが下手したら最悪なものかもしれない。


「呪い、だろ。 俺のところにも来てたよ」


『やっぱり……そうなんだね。 実はね、成瀬くんに電話する前に(すずめ)ちゃんに連絡したの。 そしたら、雀ちゃんにも来てるみたいで』


「……なら、一回集まった方が良いな」


今日は幸いにも土曜日で、学校は休みだ。 じっくり話し合う時間もあれば、この課題をクリアする方法も分かるかもしれない。 それに今度の課題は……文字通り、命がけとなりそうなレベルのものだしな。




「集まったか」


あれからクレアにも連絡を取った。 すると、やはりクレアのもとにも来ていたらしく、部室に集まろうとの提案にすぐさま乗ってきた。 そんなやり取りもあり、現在俺たち四人は部室へと集まっている。


「これは一体どういうことだ? 誰かのイタズラか?」


開口一番言うのは柊木だ。 俺たちにとっては何度目かの課題だが、柊木にとっては初めてのそれとなる。 しかしこれはイタズラでもなければ冗談でもなく、真実だ。


「イタズラじゃないですよ。 これに書いてあるのは事実です。 そういうものなんですよ」


「……冗談がキツイな、さすがに。 お前ら、私をからかっているのなら帰るぞ」


長い黒髪を掻きあげて、柊木は椅子から立ち上がる。 参ったな……どう説明すれば良いものか。 実際にこの異常が起きれば良いのだが……。 あ、待てよ。 そもそもこれって、俺たち全て一緒なのか? 全員が一緒なのか?


「待った。 とりあえずさ、書いてあることを照らし合わせよう」


「うん、わたしもそれが良いと思う。 だから雀ちゃん、ちょっとの間だけだから……ね?」


「……はぁ。 分かった、夢花が言うのなら、従うよ」


マジかよ。 お前どれだけ西園寺さんを崇拝しているんだ。 俺やクレアがいくら言っても聞きそうになかったのに、西園寺さんのひと言で折れるとは……嫌な奴め。 嫌われるぞ、そういう奴は。 けど俺よりこいつの方が人気あるんだよな……悪い噂が流れているのは圧倒的に俺の方だ。 この前の、あの新年際の一件があったから仕方ないっちゃ仕方ないが。


「言っておきますけど、成瀬も柊木と一緒ですからね」


そんな考えが声に出ていたか顔に出ていたか、耳元で他の二人には聞こえないようにクレアは言う。 そうだっけか? 全然身に覚えないけどな。 俺は記憶力が悪いんだ。


「あーっと、んじゃとりあえず俺からか」


にたにた笑うクレアを一瞥してから、俺はポケットからそれを取り出す。 今回、俺のもとへと届いた『手紙』だ。 朝起きたら、ご丁寧に枕元に置かれていた。 クリスマスプレゼントじゃあるまいし……もう年が明けて随分経つぞ。


その『手紙』を机の上に置き、広げる。 するとすぐに全員がその紙に視線を向けた。


『課題その肆。 呪いを解きましょう。 あなたに降りかかったのは死の呪い。 期限は今月末。 それまでに呪いを解除しましょう。 方法は気付くこと』


「……気付くこと? 気付くことって、何にだろ?」


横で、唇に指を当てる馴染みのポーズを取りながら西園寺さんは言う。 今日も絵になる西園寺さんだ。 西園寺さんバンザイ。


「さぁ。 全く分からないってのが正直なところだな。 クレアが実は馬鹿ってことに気付けば良いのかな」


いや、でもそれにはもう気付いているからな……違うか。 だとすると、なんだ? クレアの低身長も知ってるし、胸が可哀想なことも知ってるし、機嫌が良いときは鼻歌を歌っていることだって知っているし、逆に機嫌が悪いときはむすっとした顔付きになっているのも知っているし。


「私は馬鹿じゃないです。 それより、西園寺と柊木はどうなんですか?」


キッと俺を睨みつけ、クレアは言う。 その睨みつける仕草だけで人が一人くらい殺せそうだ。 ちなみに俺は泣くほどビビっている。 毎回こうしてクレアの悪口を言うが、数秒後には毎回後悔している。 俺はきっと、学習しない生き物だ。


「まだ付き合わないといけないのか? くだらない」


言いながら、柊木は紙を取り出す。 それを見た西園寺さんも紙を取り出し、机の上へと並べた。


最初に書いてある内容は二人とも同じ。 だが、そのあとの内容は……やはり違うか。 つまり、それぞれがバラバラの内容をクリアしなければ死ぬということだ。


そしてその条件。 今回、俺たちが取り組むべき『課題』だ。 西園寺さんの解除方法は、思い出すこと。 そして柊木の解除方法は、乗り越えること。


「みんな、バラバラなんだね。 思い出すって、何をだろう?」


「西園寺さんで分からなければ誰も分からないよ。 で、柊木のは乗り越えること……か。 心当たりは?」


「ない。 第一、私に乗り越えられないことなど存在しない」


すげえな、言い切りやがった。 そこまで自分を信じれるというのは、素直に感心してしまう。


「困ったなぁ……。 今月末ってことは、あと一ヶ月くらいはあるんだよね」


「あと一ヶ月しか、と言った方が正しそうですが」


今日は三月七日。 三月は三十一日まであるから……それまでに呪いを解除しなければならない。


にしても、そのヒントが全くないというのが厄介だ。 このままでは、俺たち全員死んじまうぞ……。


「あ、そうだ。 クレアは? 来てたんだろ、手紙」


「ええ、まぁ。 私のはこれです」


クレアは言うと、スカートの内側、太ももの辺りからその紙を取り出す。 どこに仕舞っているんだよこいつ。 それ、今度から取り出すときは俺の視界に入らないようにして欲しい。 若干目のやり場に困る光景だ。 やっぱこいつ変態だろ。


んで、気を取り直してクレアがテーブルの上へと置いた手紙を見る。 クレアの課題、その内容は……。


「夢を叶えましょう?」


「ですね。 つまり、成瀬にゲームか何かで勝てば良いのかもしれません」


「お前の夢、ちっさいな……」


「うるさいです! 私の黒星は絶対に忘れません……。 今でも夢で見ますし」


夢だけに、ね。 そんなくだらないギャグを言わない辺り、少しはクレアも成長したな。


「……あ! 夢だけに、夢で見ます!」


駄目だこいつ。 もう手遅れとしか思えない。 誰か教えてやれ、お前それつまらないぞって。


「おい、いい加減にしろお前ら。 こんなくだらないのを信じるのか? そんなことをしている暇があるなら、もっと学校生活を真面目に送れ」


「俺は一応真面目に送ってるぞ。 そういうのはこの問題児にだけ言ってくれ」


クレアの頭を掴み、前へ。 校内一の問題児はこいつだ。 断言できる。


「わ、私だって真面目に送ってますよ。 もう進級だって決まりましたし!」


「普通の奴は進級の心配なんてしねえんだよ……」


さて、そんな言い合いを今したって仕方がない。 問題は、この課題をどう攻略するかだ。 クレアの場合は俺にゲームで勝てば良いだけだから、どうにでもなりそうだが……難易度が高いのは、俺と西園寺さんと柊木か。


「それなら、とりあえずはそれに繋がりそうなことを話さない? ええっと、例えば成瀬くんなら……気付いたことを口に出してみるとか」


「気付いたことを? なら……西園寺さんの髪の毛が枝毛になってるのと、クレアの背が少し伸びた気がするのと、柊木は……いつも通りだな」


「え、うそ。 どこ?」


「気付きましたっ!? 実はですね、五ミリほど伸びたんです! ふふふ」


いやいや、絶対これ違うだろ……。 こんなんで呪いが解除されたら、それこそどういうことだよ。 絶対に違う気がする。 つうか、たった五ミリに気付けた俺すげえな。


「だからいい加減に……はぁああ。 くだらない、私は帰る」


「成瀬病が移りましたね」


「俺のは病気じゃないからな」


クレアにツッコミを入れている間にも、柊木は席を立って扉へと向かう。 ああくそ、どうやったら納得してくれるか……。 もっと分かりやすいのだったらすぐにでも理解してくれただろうに、こう結果があとになって出るやつだと、どうにもそれが難しい。 結果があとに……いや、待てよ。


「ストップストップ、落ち着けって。 ならさ、これはどう説明するんだよ?」


俺は言い、手のひらを見せる。 そこにあるのは、二本の線だ。 これが、俺たち全員に入っているものならば……或いは。


「……こんなの、ただの偶然だ」


柊木は言い、手をブレザーのポケットに仕舞い込む。 そう言って手を隠したということは、柊木の手にもこの印があるということだな。 そしてきっと、それはクレアも西園寺さんも同様だ。


「それか、クレアが全員に書いたんだろう。 お前らも、ふざけている暇があるなら勉強をしろ。 またな」


「え、そこで私ですか。 私ってそんなことする人間に見えてましたか……」


言い、柊木は扉を開ける。 すると、すぐそこにあいつが居た。 前触れも気配も感じなかった。 だが、居て当然のように、そこに居るのが当たり前のように、あいつはいつだって現れる。


番傘の、男だ。


「挨拶。 おはようございます。 少々諸事情によって遅れました」


「……おせえよ。 最初から居れば、柊木が俺たちを疑うことだってなかっただろ。 わざとか?」


「返答。 そのようなことはございません。 実は想定外のことがありまして……ああいや関係ないですね」


想定外? 何かあったってことだよな、それ。 こいつが把握できない事態が起きた……ってところだろうか。 それが良い方向か悪い方向なのかは分からないが。


「お、おい……なんだ、こいつは」


一歩、二歩、後退りながら柊木は言う。 恐怖を感じたのか、得体の知れない何かと遭遇したときの反応か。


「敵です、敵。 そいつがやっているんですよ、こういう遊びを」


「発言。 その解釈で構いません。 私は異常を楽しむ者です。 ですが敵というのは違いますね」


男は続ける。 割れた狐の面から見える口元には、変化がない。


「あなた方の敵は『異常』であって私ではありません。 その辺りの勘違いはそろそろ直した方が宜しいかと。 さてそれでは」


「課題その肆。 呪いを解きましょう。 皆さん現状は把握できましたか?」


相も変わらず淡々と、割れた面の隙間の表情はやはり変化なく、男は言う。 言葉を止めることなく言うその独特な言い方にも、少しは慣れてきたものだ。


「できたようでできていないって感じだ。 何をすればいいのかサッパリだしな」


「返答。 それについては問題ありません。 その手助けを今から致します」


男が言ってから、数秒。 その手助けというのが起きる。 目に見えて分かるように、番傘の男は変化をもたらした。


「なーるせっ!」


「うおっ……。 え、なんだよお前!?」


クレアが俺に、抱き着いてきた。 それも満面の笑みで。 正直死ぬほど怖い。 今すぐにでも殺されるんじゃないかと怯える俺だ。 だって、クレアが……こんなにも。 というか、というかなんだこいつ! すっげえ笑顔だぞ!?


「発言。 日常的異常です。 例えば自分の気持ちと正反対の行動を取ったりします。 他にもいろいろと」


ええっと、つまりなんだ。 クレアが今俺に抱きついたのは、気持ちとは正反対の行動ってことか。 結果的になんか嫌だなそれ……。 まぁ、満面の笑みという珍しいものを見れたから良しとするか。


「ふふふ……って何してるんですか変態っ!!」


「がはっ! お、お前……鳩尾殴るんじゃねえよ……」


しかも、わりと本気で。 尋常じゃない威力だ。 一ヶ月を待たずに死ぬかもしれない……。 もう帰りたい、帰りたい帰りたい帰りたい。


「お、お前が俺のことを嫌いなのは良く分かったよ……」


「あ、あ……えと……ごめんなさい、ちょっとやり過ぎました」


妙にあっさりと、クレアは謝る。 別に、そこまで申し訳なさそうにして欲しかったわけじゃないが……ま、良いか。


「そして提案。 このような異常を楽しむために些細な異常なら私に頼めば実現させましょう。 例えば――――――――成瀬さまの片腕を消し飛ばしてくれのような」


「……そんなこと、頼む人は居ないです。 説明が終わったらとっとと消えやがれです、狐男」


真っ先にクレアが反応し、番傘の男はそれを聞いて口を開いた。


「発言。 というわけで私は失礼します。 皆さんくれぐれも課題を忘れぬよう。 異常な日常を楽しんでください」


そう言い、男は消えた。 残された部室には、俺たち四人だけ。 会えて知れた情報と言えば、殆どないに等しい。 それどころか、余計なプレゼントまでもらってしまった気がする。


今日は三月の七日、四月に移り変わるそのときまでに、この異常を乗り越えなければならない。 そして今回は、妙な状態になるというおまけ付きで、だ。


「……は、ははは。 ははははは」


「す、雀ちゃん?」


「なぁ、夢花。 私はどうやら頭がおかしくなってしまったらしい。 今そこに、番傘を持った妙な男が見えてな? それで、私の目の前で忽然と姿を消したのだ」


「……柊木、残念ながら事実だ。 俺にもクレアにも西園寺さんにも、見えてたよ」


「ま、またまた冗談を……」


そして、その後俺たちは動揺する柊木を落ち着かせ、これまでのことを全て話した。 ループのこと、人狼ゲームのこと、異能のこと。 そこまで丁寧に説明し、柊木はようやく現状を理解したようだ。


タイムリミットは刻々と迫る。


俺たちが死ぬまで、残り二十四日と十四時間。

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