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秘薬


短いストローで、あのドリンクをウサコと飲んでからドキドキが止まらない。


「お気に召したかね?少年。」


団長がたずねてくる。


「え、あ、は、はい。」


「少年には刺激が強かったかな?顔が真っ赤だぞ?」


「そ、そうですかね…?」


裕也は、さっきドキドキしながらドリンクを飲んだ時に頭に浮かんでいたことを、察せられたようではずかしかった。


「あの、僕トイレ行って来ますね!」


今は自分がドキドキしていることに動揺していて、一人になりたかった。


(今は客のフリしてるから客用トイレだな。)


ガチャ…!?


「要さん!」


トイレに入ったら真ん前に色彩要が立っていた。


「よう、ガキ。店には慣れたか?」


「いえ、まだ全然…」


「お前なぁ、しっかりしろよ。」


「す、すみません。」


「まぁ、変な客追い返したのは評価してやってもいいぞ。」


(要さん、実はツンデレだったりして。)


「ニヤケルな、きもちわるい。」


「は、はい」


「お前、仕事にもどらないのか?」


「えっと、常連さんに話しかけてもらっちゃったら、いつ抜けていいかわからなくなって…」


「バカかお前は。僕帰りますって言って会計するフリすればいいだろう。」


「ほら言って来い。」


(1人の時間はとれなかったけど、要さんのクチの悪さで少し冷静になれたな…はは)


客席に戻ると早速要に言われたように、帰るとつげた。


「なんだ、もう帰っちゃうのか。」


「すみません。ちょっと用事があって…」


「また会おう。」


団長はニコニコと手をふってくれた。

裕也は軽くお辞儀をしてレジに向う。


ウサコがピョコビョコとレジに入って、お会計するフリをしてくれている。…のだか


(ヤバイ…意識しちゃって顔を見れない)


一緒にジュースを飲んだ、ウサコのプルプルな唇を見て、また思い出してしまう。


(いかん。目が見れない…)


「お会計すみましたよ、また来て下さいね」


「あ、ありがとう。」


店を出るときにはもう顔が赤くなっていた。


(まさか…これは恋?)


考えながら従業員休憩室にもどる。


コンコン…「入りまーす」


部屋に入ると姫さんと要さんが爆笑中だった。


「な、なんか面白いことでもあったんですか?」


姫さんが俺の顔を見て…


「おう、変態裕…ぶぁっはっはっ!」


笑いを堪えるような顔してた要さんまでいきなり吹き出す…


「…え?」


話が見えてこない。


要が可笑しそうに話はじめる。


「この象、お前のドリンクに…っははは!」


「スマン変態裕也、さっきのドリンク、秘薬3倍だった!っだはは」


!!!


「悪いのは要さんだからな!恨むなら要さんを恨めよな!」


「俺は、ちょっと秘薬多めにしたら面白そうだって言っただけ!共犯だろう!」


「おれ、まさか遊ばれてました?」


「おう。楽しかったぞ、お前がジュース飲んでるときの顔…ぶふっ。」


「写メとってスタッフ全員に送っておいた。このエロガキが新人バイトの高岡裕也だとな!」


「ちょ!要さん!」


「時すでに遅しだ。…ぷぷぷ」


「マジですか…」


「私はもう携帯の待ち受けにしたぞ。」


姫さんがスマホを取り出し見せてくれた。


(この顔はヒデェ…鼻のした伸ばしてデレデレじゃないか…)


「こんな写真みんなに送るとかヒドイですよ!」


「まぁ、いいじゃないか。これで欠勤中の子たちにも顔と名前を覚えてもらえるだろう?」


「だからって…うう」


「私は、お前が思っているよりもマトモに写っていると思うぞ?大丈夫だ。」


「姫さん、フォローのつもりですか?それ…」


なんだかんだ、2人の下手なフォローで言いくるめられてしまう。




「で、どんな気分だったのだ?」


興味深そうに聞かれる。


「おいエロガキ、恥ずかしがっている場合ではない。お前の答え次第でお客様に秘薬3倍を提供するか決まるんだからな。」


「え?」


「お客様が暴走してストーカーにでもなったら厄介だからな。」


「それなら無難に通常通りのドリンクを提供すればいいんじゃないですか?」


「いや、今までも2倍までは提供していたぞ。」


「そうなんですか?」


「あぁ、通常量の秘薬効果は身体を火照らせ、その場にいる女の子と仲良くなりたいと思わせる程度だ。」


「つまり、また店にきたいと思わせる程度。」


「ああ。そのうち客にはお気に入りの女の子ができる。」


「その頃合いを要さんが見て、秘薬を増やすんだよ。秘薬は多くなれば性欲が増すからな。客は指名ドリンクを頼みたくなるんだ。」


「指名ドリンクって…さっき飲んだドリンクですか?」


「あぁ。指名ドリンクは何種類かあるが、お前が飲んだのは〝スペシャルフルーツジュースミニストロー指名〟だ。」


「…はい?」


「うちの店にはストロー指名というのがあってな、500円追加で指名した女の子と一緒のストローでドリンクを飲めるサービスだ。」


(ストローがプラス500円!?)


「さらに常連の中でもかなり通いつめた客限定のミニストロー指名。これはストロー指名プラス600円だ。」


(!!!高っ!…て、ことは…俺が飲んだドリンクは2400円!?)


「指名数が多ければメイドダッパーズ達の給料も上がる。」


「な、なるほど。」


「で、3倍はどんな気持ちになるか聞きたいのだが…」


「そうですね、う、う〜ん。」


(エロい妄想とか、恋に落ちたかもしれないなんて…今聞いた秘薬効果よりぶっ飛んでないか?なんか恥ずかしくて口にだせない…)


しばらく無言でかんがえたが、要が待ちきれずにきりだした。


「どうせ秘薬が回った頃にはエロいことばっか考えてていたんだろ?お前、顔に出過ぎなんだよバカ。」


「うへっ!…す、すみません。」


「…私の裸は想像するなよ?」


(…姫さんの裸は誰得にもならない気が…)


「まぁ…秘薬慣れしてない、しかも盛りのついた思春期童貞にいきなり3倍を飲ませたからな。効果が強く出たんだろ。」


「それって、俺が感じてた気持ちは全部秘薬の効果ってことですか?」


「そうなるな。」


「そうだったのか…俺、ウサコに恋したのかと思いました。」



一瞬その場が固まった。


「恋は想定外だ。リスクが高い。姫、客には3倍出すなよ。」


そう言うと要は裕也の腕をつかみ、エレベーターに乗せた。


「社長に秘薬効果を抜いてもらう。」


「え、そんなことできるんですか?」


「身体の火照りやエロ妄想してしまう気持ちくらいは抜けるだろう。」


「ウサコが好きかもしりれない気持ちは?」


「それはわからん。きっとお前次第だ。」



エレベーターを降り、社長室に通される。

ベーネ社長は椅子に座っていた。


「そろそろ来ると思っていたわ。もっと近寄りなさい。」


言われるままベーネの近くまで行く。


「あら?何かご用?」


裕也は秘薬3倍のドリンクを飲んでしまったことを話した。


「あぁ、あなただったのね。さっき下からかなり大きな欲求を感じたから吸い取っておいたわ。」


「え、じゃあもう秘薬の効果は抜けているんですか?」


「単純な性欲は、ギリギリまで吸い取ってあるけど、ドリンクを飲んだ時の記憶が消えるわけじゃないわよ?」


(記憶が残ってるって、それはどんな意味だろう…)


裕也が考えているところに、ベーネが話しかけてくる。


「ところで、今日はお客と勝負したんですってね。」


「は、はい。」


「あなたは、それは自分の力で勝てたのかしら?」


「…い、いえ。…姫さんが…」


「そう。…その時どう思ったのかしら。」


「…悔しかったです。…とても。」


「そう。ならよかったわ。昼間のバイトで疲れていたからなんて言い訳はききたくなかったから。」


ベーネは裕也の手をとって言った。


「あなたはその気持ちをバネにして強くなりなさい。悔しがったところで満足していたら、前へ進めないわよ。」


「は、はい!」


「女の子1人くらい救える男になりなさいね。…じゃ、今日はもう帰っていいわよ。」


「え?今日の仕事は17時までで、まだ時間ありますが…」


「あなた、すぐ顔に出るみたいよ?疲れてこれ以上働けないって顔してる。うちの従業員はそんな顔して働くような子はいらないの。」


「で、でも!」


「何度も言わせないで。…帰りなさい。」



裕也は要に促されて部屋を出た。


「社長、怒ってたんでしょうか…」


「さぁな。俺は別件で社長に話があるから、お前は帰れ。」


ベーネや、要に突き放された気がして、今日の楽しかったことが一気に吹き飛んだ気がした。


荷物をとりに休憩室に戻ると、姫さんはもう仕事に戻ったらしく誰もいなかった。


(ウサコには先に帰るってメール…あ。アドレス聞いてないや…。書き置きしておこう。)


書置きして荷物をもち、帰ろうとドアを開けると。エレベーターから誰か降りるところだった。


「あ!高岡裕也くん!」


「え!?」


「従業員メール見たよ!」


(あ、あぁ。なるほど)


「わたしは、みけ!ミーって呼ばれてます!よろしくねっ!」


ミーはサングラスを外してニコっと笑った。

チャーミングという言葉が似合う、可愛い笑顔だった。


「高岡、裕也です…よろしくお願いします。」


ぺこりとお辞儀する。


「ねえねえ裕也くん、カバン持ってるけど帰るの??」


「え?あ、はい。」


「じゃあさ!今からデートしよ!」


「…へ!?」


そう言うとミーさんは裕也をエレベーターに押し込んだ。






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