表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

慌ただしい1日

 高岡裕也は鷹宮荘202号室の前で立っていた。


コンコン。


鷹宮荘にはチャイムというものはないので家のドアをノックする。


「は、はいー!ちょっと待ってくださいね!」


中でゴソゴソっと音がしてから勢いよくドアが開く。


「おはようございます、遅くなっちゃってごめんなさい。」


出てきたのはここの住人、前園うさこだ。


「おはよう。」



裕也は今日から、ウサコが働いているメイド喫茶でアルバイトをすることになっている。

シフトも同じ時間帯で組んでもらえたので、一緒に出勤というわけだ。


「弁当自分で作っていくのか。まかないとかないの?」


「カフェなのであまりお食事メニュー出してませんし、人間のお客様が好むお肉系って私は食べれなくて。」


「肉食べれないの?」


「ちょっとずつ慣れたいんですが、元が草食動物ですし。牛さんや豚さんを食べると思うと可哀想でたべれないんです。」


「なるほど。」


家から駅まで行くには井の頭公園を通っていくのだが。こうして歩いているとまるでカップル・・・


には見えないよな。片方は黒髪のすげー可愛い女の子なのに、一緒にいるのは冴えないガリガリのメガネチビだもんな。


通り過ぎる男たちの目線はウサコを追っているのがわかる・・・


(やっぱ見た目って重要なんだな。)




電車にのって秋葉原までつくと、ウサコから一つ注意があると言われた。


「秋葉原で降りたら、知らない人のふりしてください。この街はお客さんが多いので、男の人と歩いているところは見られちゃだめだそうです。」


(たしかに、客に嫉妬なんかされたらたまったもんじゃない。)


「了解。」


言われた通りカフェミルクミルクまで、ウサコから少し離れて歩く。


(ストーカーみたいで変な感じだ。)


ウサコは建物に着くと1階のファンショップに入っていく。


奥の「ご主人様立ち入り禁止」でエレベーターで3階までいくと従業員休憩室になっているようだ。裕也も少し遅れて入っていく。


チーン


エレベーターが開くと目の前にドアがある。


コンコン ガチャ…


「おはようございまー…!?」


目に飛び込んできたのは着替え中の下着姿の女の子たち。


「きゃー!!!」


血の毛がひく。


「あ…あ…あの…」


「早くドアしめなさいよ!」


クッションやらぬいぐるみを投げてくる女の子たち。パニックで固まる自分。


ゴッ。


誰かが投げた何かが、頭に当たって後ろに倒れこむ。


その瞬間頭に浮かんだ言葉。


(女って怖え…)


そのまま意識を失った。



(…ぅうん。イテェ…)


目をさますと、ゴツイお姉さんに覗きこまれていた。


!?


「目をさましたか?変態少年」


「は…はい?」


「さっきは椅子投げて悪かったな。当てるつもりはなかったんだが…」


(椅子が当たったのか…)


「お前、打ちどころが悪くなくてよかったな。」


ふと見れば、へこんだパイプ椅子が転がっていた。


(し、死ぬとこだった!)


「で、ですね。」


座り直して、目の前のお姉さんをマジマジとみてしまう。


(外国の人か?顔立ちはほりが深いし、背丈もある。…てか筋肉半端ないな。)


「そうそう。要さんからお前の面倒を見るように言われた。」


「あ!挨拶遅れてスミマセン。今日からバイトで入りました、高岡裕也です。よ、よろしくお願いします。」


「私はココでは姫と呼ばれている。」


!!!


(名は体を表すってのは嘘だったのか!)


「おい、変態裕也。私の名前が以外だとでも言いたそうだな?」


「い、いいえ!滅相もございません!」


「ならいい。ベーネ様がつけてくれた名前に文句は言わさん。」


(この人強そうだし、男口調だし、絶対こわい人だよ…)


「私が教育係りなのが不満か?」


(さらに読心術まで…!?)


「いえ、そういうわけじゃ…」


「まぁいい。動けるなら仕事はじめるぞ。お前はキッチンだから制服はこれだ。」


姫さんが部屋の外にタバコを吸いにいっている間、いそいそと渡された制服に着替える。


「着替えました!」


「おぅ。じゃ、はじめるぞ。」


「はい!」


(人生初バイトはキッチン仕事か!)


勢いよく部屋を出ていこうとしたとき、ガシリと首もとを掴まれ、うっとなる。


「どこへ行くつもりだ?変態裕也。」


「え?キッチンてカフェの奥にあったあの調理場じゃないんですか?」


「お前の持ち場はここだ。」


姫が休憩所奥にある謎の鉄扉を開く。


「さっさと入れ、仕事を教える」


「は…はい。」


恐る恐る入っていくと一発で怪しいものが目にとびこんできた。


「な、なんですか?これ」


「鍋だ。」


「それはわかるんですが…」


部屋の真ん中にグツグツと煮え立つ、巨大な鍋。独特な匂いがしている。


「これは、特性の秘薬だ。ドリンクに混ぜて提供している。」


「へ?…なんだか犯罪の香りがします」


「大丈夫、合法なほうだ。」


(秘薬を混ぜ込むなんて、さすが化け猫社長の経営するカフェだな…)


「で、僕は何をすれば…?」


「このシャモジでひたすら混ぜて潰すの繰り返しだ。」


(シャモジもデカっ!)


「今日は下準備はしておいたからな。2時間後に休憩いれていいぞ。」


「わかりました、頑張ります・・・」


そのまま姫さんは出て行ってしまった。


(これをまぜるのか・・・)


鍋の中に入っているものがなんなのかはさっぱりわからない。

とりあえず、しゃもじで混ぜてみる。


(お、重い!)


具が多いのか、なかなかまざらない鍋の中を混ぜるのは大変だった。


(これ2時間も混ぜるのかよ!・・・無理だ、5回混ぜたらチョットだけやすもう)


・・・1・・・2・・・3・・・4・・・・・・5・・・


「ふはぁぁぁぁっぁ!・・・はぁ・・・はぁ」


すでに息切れしている。


「姫さんがマッチョな理由がわかったきがする・・・はぁ・・・はぁ」


息切れが収まったところで気合を入れる。


1!・・・2!・・・3・・・4・・・・・・5・・・


「はぁ・・・はぁ・・・勢いはよかった!最初だけ・・・はぁ・・・はぁ」


そんなことを何十回繰り返したことだろう。

体力もほとんど使い切ってるきがする。


(時間たつのが遅く感じる!今何時だよ・・・それに、暑い!)


夏に締め切った部屋で火を扱っているのだ、当然暑い。


今まで必死に鍋をかき混ぜてきて周りのことなんて気にしなかったが、ふと見渡せば外へ出れそうな窓があるではないか。


「なんで今まで気付かなかったんだよ俺!」


急いで窓の戸を全開まであける。


ガラガラ・・・


!!!


ガラガラガラ・・・ピシャ。


(みてない。みてない。今のはなかったんだ。)


窓の外はビルとビルの間に作られたベランダがあったのだが、そこで見たのはガラスケースに入った、蛇、亀、なんだかわからない生物たちがワシャワシャと大量に・・・


(思い出したくない・・・)


だが、一瞬にして感じた外の空気の気持ちよさが余韻で残っている。


(ぅぅう・・・窓、もう一度あけたいけど・・・けど・・・)


悩んだ結果、外の恐ろしい部分が見えない程度に窓を開けることにした。


(こんな少しの隙間でも、さっきよりはマシか・・・作業にもどろう)


1・・・2・・・3・・・


再開したはいいが、数回混ぜただけで暑さにフラフラしてきた。


(や、やばい。。。一回休憩室に戻らせてもらおう。)


入ってきた鉄扉を押す。だが、開かない。

引いても開かない。扉が重すぎるのだ。


(だめだ!暑くて倒れそう!こうなったら・・・!)


涼しい風に救いを求め、勢いよくベランダの窓をあける!


ガラガラ・・・ガンッッ!


勢いよく窓を開けすぎたせいで、ケースが一つ倒れて何かがボトボト落ちてくる。


「うぁああああああああああああああ!!」


力が入らずへたり込んでいるところに、落ちてきた蛇が寄ってくる。


「シャァァァァ!」


ジリジリと後ずさりしているが、すでに足元に絡んできている蛇もいる・・・


「うわぁ・・・!シッ!シッ!」


手で払おうにも蛇は口を開けて手にかみつこうとする。

後ずさりしようにも、後ろには鍋と火があってもう下がれない。


「シャァァァァァ!!!!」


蛇が口を開けて、襲い掛かってくる。

噛まれると思って目をとじた。



・・・ガチャ!! ・・・ピシッ! パシッ! 


何か音がしたのは分かったが、何が起こっているのかわからない。


(・・・あれ?噛まれてない。)


恐る恐る目を開けてみると、そこには両手に蛇を掴んで立っている姫さんがいた。


「姫さん!!」


「よぉ、変態裕也。お前の休憩時間うっかり呼びに行くのわすれた。すまん。」


両手の蛇をガラスケースにポイッと投げ入れ、姫さんは4匹ほど蛇の尻尾を持って床に打ち付ける。


ペシッ!!


(す、すげぇ・・・)


ペシ!ペシ!ペシ!・・・っと、姫さんは軽く全ての蛇をケースに戻した。


「大丈夫だったか?」


「ええ、ギリギリ大丈夫でした・・・てか、このベランダの生物たちは何なんですか?」


「秘薬の原料になる、マムシやスッポン、その他もろもろだな。」


「・・・はい?」


「明日からお前も今みたいに蛇気絶させるところからやるから。」


「・・・。」




「さ、お前も休憩とっていいぞ。休憩室もどるか。」


休憩室にもどると、涼しくて天国のようだ。


「変態裕也は昼飯まだだろ?オムレツでいいか?」


「え?あ、はい・・・」


姫が床にむかって「ウサコー、裕也の賄オムレツよろしくー。」と言った。


「え?今ので聞こえるんですか??」


「あいつウサギだから耳いいんだ。だからさっきもウサコがお前の叫び声に気付いて私が様子見に来た。」


(なるほど・・・動物の時の特性って人間になっても引き継がれてるんだな。)


バタン!


突然扉が開いてメイドの女の子が入ってきた。


「姫さん!下にきて!それと、変態裕也も私服に着替えてお客様入口から入ってきて!今すぐ!」



それだけ言うと女の子は急いで戻っていった。


「まったく今日は騒がしいな。お前も早くこいよな。」



どうやら人生初バイトで、とんでもない店に来てしまったようだ。これから、もっと色んなトラブルに巻き込まれる予感がした。



この回は、長くなってしまい2回にわけて投稿することにしました。


次回投稿は早くできると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ